俺は復讐を誓い、移動手段を確保する
王都に向かうにはまず森を出て、馬車に乗らなければならない。
何故かと言うと俺達がいる森から王都までは結構な距離があり、普通に考えれば歩いて行こうとすると途中で食料が切れたり逆に持ち過ぎるともっと時間が掛かる、と言う考えが出来る。だからここを通る奴らは場所に乗って来ているし、何百人単位で来た時は後ろに食料が積んであると思われる馬車が見えた。
結局何が言いたいかというと普通の人で無ければ馬車に乗らないで王都に行くのは不自然という事になる。他に人が住んでいる所は無く、全て逆方向なのだ。
「と言う訳で途中で馬車に乗る。幸運な事に近くで乗る予定の馬車もある事だしな」
黒はモンスターに襲われている馬車を指差した。
そこには馬を守りながら奮闘している武器を持った少年少女と必死に鞭を振りましている男が見えた。
「質問なのですが奪う、と言う考えはしないのですか?正直モンスター共に加戦して殺して奪った方が早いと思うんですけど」
布を巻いた剣を手で撫でながらクツークル言った。
ニナは黒に対して口答えをするな、と言いそうな雰囲気を出したが黒に止められ睨みつけるだけで我慢した。
「確かにそうだな。だが実際に奪ってその馬車で王都に行ってみろ、何の目的の馬車なのかも分からないし、それにこの馬車は行きなのかも帰りなのかも分からない。お前だって直ぐ出発したはずの馬車が帰って来て、しかも人も変わってる。これ以上何を持って不自然じゃないと言う?」
襲われている馬車の方を見ながら黒は言う。それに対しクツークルは気に食わない様子で見上げた。
「...分かりました」
「そうか、なら作戦を言うぞ」
「う...ディディルちゃん、こっち回復お願い!」
「クソッ、何で馬ばっか狙ってくるんだよ!」
肩に矢を受けた少年が盾で正面のモンスター_____ハイゴブリン____を弾き、淡い光りに包まれる。
「ありがとう!」
「ごめんなさい遅れてしまって...」
「大丈夫、ナイスタイミングだよディディルちゃん」
「ありがとうございます...シュールさん」
弾き飛ばされたハイゴブリンの首を狙い、一閃。狙った場所には届かなかったが右腕を斬りつけることに成功した。
「お前ら2人!何こんな所までイチャイチャしてんだよ!ゴブリンにも自慢か!?」
攻撃を食らって少し後ろに下がるが直ぐに奇怪な声を発し、後ろで矢を構えている仲間に命令を下した。
その合図を待ってました、と言わんばかりに手に持った弓を地面に叩きつけ腰にある剣に手を伸ばした。
「ちょ、マノン魔法はまだなのかよ!?」
剣を手に持った少年が後ろで杖を構え詠唱している少女に怒鳴りつけるように言った。
「うるさいわね!もう少しでそんな雑魚一掃出来るとっておきな魔法出来るから待ってなさいよ!」
「お前そんな事言って下級の魔法しか使えないだろ!」
少年は剣の腹で向かって来たゴブリンの頭を思いっ切りぶっ叩いた。
「そ、そんなの想像力が大切なんだから関係無いわよね!今は目の前の敵に集中しなさいよね!馬鹿ガンガ」
「馬鹿は余計だろ!馬鹿は」
「まぁまぁ2人共。今は戦闘に集中しないと...って、マノンさん逃げて!」
「え?」
盾で見を守りながらシュールが叫んだ。その隙を狙ってゴブリンが降り下ろした剣が盾を弾く。
シュールの声に反応したガンガは目の前の敵を蹴り飛ばし、マノンの元へ全力で走った...だが間に合わなかった。
何時の間にか背後に忍び寄っていたハイゴブリンがマノンの細い体を掴み、喉元に剣を突き付ける。これ以上動いたら殺す。言葉が通じなくてもそれだけは通じた。
3人は手に持った武器、装備をゴブリン達に剥ぎ取られどこから取り出したのか縄で縛り付けた。
「マノンを離せ!そのキモイ腕を...ぐふっ」
「ガンガ君!」
「ガンガさん!」
縛られても反抗してくるガンガに近くにいたゴブリンが殴って黙らせる。それを見ていた2人は助けようと体を盾にしようと動いたが意外と強く縛られている縄は言うことを聞いてくれなかった。
「マノンさん...ガンガ君...誰か...」
シュールの言葉が届いたのかマノンを掴んでいたハイゴブリンの腕が斬り飛ばされ、次見た時は首から上がなく血が吹き出していた。
言葉も発する事無くどんどん周りのハイゴブリン、ゴブリン達が血を吹き出し倒れていった。
呆気にとられるシュールを尻目にマノンを救った男はフードを強くかぶり直し、シュール達に言った。
「危なそうなので倒したが問題は無かったか?」
ガンガ。16歳。男。
剣を使う。
シュール。16歳。男。
盾を使って守る。
ディディル。15歳。女。
回復魔法が得意。神官。
マノン。16歳。女。
気が強い魔法使い。