俺は復讐を誓い、次起こることを想像する
王都へ向かおうと...あ、面白い。
アンが奥の方へ消えていき、それと入れ替わるようにしてリナが戻ってきた。
「ただ今戻ってきまいりました。黒様の寛大な心に感謝を」
黒の腰ほどの高さしかない少女が膝を折り、頭を下げる。
「もう良い、リナも必要な物を取って来るといい。もう直ここから離れるからな」
「大丈夫です。私には黒様がいれば充分ですので。それに私物は殆ど無く...」
少し視線を下にやり、落ち込んだ表情を見せる。だが直ぐに何時もの表情に戻り、急いで弁解した。
「け、決して黒様のせいではありません!と言うか私のせいなので!私だけのせいなので!わーーー」
顔を真っ赤に染め少し躓きながら洞窟の中に入っていく。何がしたかったのだろう...。
正直疑問だらけだが気にする必要はないと感じ、正面に立つ男に目をやった。
「う、くっ...く、黒様。勝手な判断で動いてしまいすみませんでした。次からは、いや、次こそはこの命を差し出してまで貴方様の役に立ちます!」
目が少し赤く、腫れている男は自分の胸の前で拳を強く握り謝罪した。その表情は反省の意志とはとは全く関係の無い、寧ろその逆の感情が見て取れた。
「次頑張ればいい。反省してるみたいだしな」
黒の一言に緊張の糸が取れたのか、ハァと少し息を漏らした。
「お前も必要な物取ってきたらどうだ?集まったらすぐに出発するぞ?」
分かりました。
妙に力が篭った声で返事をした男はゆっくりと奥に消えるように入っていった。
「ジーク...センギス...お前らの敵は必ず...」
洞窟内も関わらず、木々のざわめきのおかげで誰にも聞かれていなかった。
《●○●○●○●○●○●○●○●》
「よし、なら火をつけろ」
黒の一言でリナが火がついた松明を奥の方に向け投げ入れる。その奥には前々から準備していた藁があるので直ぐに燃え移って何もかも燃えて消えるだろう。
「えーと、未だに何故燃やすのか分かってないのですが...」
恥ずかしいのか頭を掻きながら質問をしてくる。オーバーオールは血塗れになったので着れないと判断したのか藁と一緒に奥で燃えている。今着ているのは先日馬車から拝借した服だ。
アンの発言にちょっとイラッとしたのか食い気味にリナが応える。
「黒様のやる事に一々口出しするつもりですか?それすらも分からないようじゃ復讐以前の問題ですよ?」
「...毒舌チビ」
「あ゛?脳内お花畑」
流石に火力が足り無いと判断したせいで火力が異常なまでにすごい事になっている。それを背景に口喧嘩を始めようとしている2人も2人だ。
「はぁ...俺達がいなくなった時に何者かが侵入したら嫌だろ?短い間だけだけど一緒に過ごしてきた家だろうし、思い出もある。どちらかと言えば証拠隠滅と言ったほうが早いな。あとリナの発言ほどでは無いがアンの頭の中が心配になってきたぞ...」
黒の呆れた声にビクッとしたのか一瞬跳ねてこっちを見た。
「ご、ごめ...あれ?もしかしてバカにされてます?」
少し怒った表情を見せるアンは置いといて、アンが持っていた剣を取る。
「今から剣を配る。この剣は俺達には必要な剣であり、目標を達成する鍵でもある。雑魚には使うな自分と同等かそれ以上の敵にだけ使え」
そう言って7本あった剣をアン、リナ、黒で2本ずつ。クツークルに1本という配分で分けた。
クツークルは貰えると思ってなかったらしく少し驚いた表情を見せた。
「これを使って黒様に敬意を見せろ、と言う事ですよ?」
「ああ、ま、そうだ」
黒の方を見て面白そうに笑う。それにつられて黒も少しだけ頬を上げる。
なんで2人は笑っているのか気になってるアンとは違い、クツークルはこの剣がどの様な効果を発揮するのか分かってるのか誰にも見られないようにニヤッと笑った。
「では、王都へ向かおうとするか」
アン。18歳。少しお馬鹿な所もあるが能力的にはリナにも遅れを取らないほど。
魔獣化能力『弱者の観察眼』
目を変化させ、対象の弱点を探る。そこを攻撃する以外は致命傷にならない。
復讐理由。
生まれた時は王都にいて、牢屋の中で過ごしていた。ある時、その美貌に惹かれ、とある貴族が引き取りにきた際に暴れたのがきっかけで目の前で両親を殺される。少しずつ、少しずつ体を削られていく様子を見た彼女は自分の殻に隠れてしまう。ついでにとその貴族が牢屋から出し、両親と同じ様に殺してやろうとすると彼女は全力で逃げ出し、黒のいる森まで逃げた。丁度近くにいた黒の言葉に支えられ、貴族を瀕死まで追い込むが後一歩の所で逃げられる。
この出来事があった為か拷問を率先して行うようになった。この事実を知っている為、黒に対する軽い言葉も許されている。
アン「黒に変わってお仕置きよっ」