表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/11

Broken Front

 落ちて真っ先にやる事は、


 足場になる事だった。


「跳べ!」


「っ!」


 両手を合わせて足場を作り、エリーナをその手の上に着地させ、そして思いっきり彼女自身の跳躍と合わせ、端まで、壁までその姿を飛ばす。その蹴り飛ぶ反動を利用して此方も後ろへと流れる様に吹き飛び、お互いに反対側の壁へと接近し、そこから武器を、向こうは斧、此方は先程入手したばかりの双頭の槍のアーティファクトを壁に全力で突き刺す。翡翠の刃が鈍色の壁をまるで粘土の様にあっさりと切り裂き、そしてその刃を埋めながら落下する姿を少しずつ減速させて行く。軽く体を回転させて槍の上へと着地し、そのままゆっくりと減速しながら動きを止めて行く槍の上から反対側へと視線を向ける。


「生きてるー?」


「無傷ー」


 まぁ、死んでいないのは当たり前だろう。流石にこの程度で死んだら冒険者として名折れである。息を吐きながら上を確認すれば、かなり距離があるのが見える。床は消えたままだから明るいが、それでもかなりの距離がある。目測、五十メートル近くは落ちている。このまま上へと上がるよりも、下がってから安全なコースを探したほうがいいのかもしれない。あの幼い神様が入ったポッドも多分、移動させられたような、そんな気がするし。とりあえず下の方へと視線を向ければ、底が見える。下へと移動した方がやはり早いだろう。エリーナへと視線を向け、


「行ける? たぶん”出る”と思うけど」


「問題ない。それよりもそっちが気を付けて―――強くなっている訳じゃないから」


 そう言って大斧を壁から抜いたエリーナが下へと落ちて行きながら再び壁に斧を突き刺し、減速と落下を繰り返しながら安全に下へと向かって行く。その姿を追い掛けながら呟く。


「……知ってるさ」


 双頭の槍を抜きながら呟き、同じように落下と減速を繰り返す。アーティファクトという反則級の道具を手に入れても、体が強くなったわけではない。今、こんな芸当ができるのは自分が”体の限界”を理解し、それを運用しているからだ。どうやって体を動かせば性能の100%を発揮できるか、大量に体力を消耗するが、そうやって要所要所で肉体駆動率を100%にする事で、何とか、騙して追いついているのだ。これが戦闘となると数秒で終わる戦闘はともかく、数分と続くクラスなら間違いなく足手まといになる。


 それを一番良く理解しているのは自分だ。


 床の上に着地しながら素早く周りを確認し、出口が一つしか存在しないのを確認するが、その巨大なゲートの向こう側からは気配を感じさせるものがあった。大物が存在する。それは間違いがないし、トラップの構造としても当たり前の構造だ。落ちた先でゴミを処理する怪物が待っているのは、ダンジョンではよく見るしかけだ。だから互いに武器を手に、ゲートの向こう側から出てくる存在に対して構える。数秒間、エリーナと横に並ぶように視線を正面のゲートへと向けていると、ゆっくりとそれが開き、その向こう側の姿が見えてくる。


 出現するのは鋼鉄の姿だった。三つの首を持ち、巨大な鋼の体を保有し、腕を六本保有する、変則的な竜の様な怪物だった。半人半竜の機械の怪物だった。大きさは大よそ二十メートル程、胴体から下半身は完全に竜の様なもので、首から頭も長い竜のものだ。だがその胴体には翼の代わりに六本の巨大な腕を生やしている―――アレだ、京王線のホームで見たあの腕に非常に似ている。ただし、此方の方は指先が爪の様に尖っており、より大きいという点が違うのだが。


 六本の腕で地面を掴み体を引きずって投げる様に出現する姿はまさに変態的。


 絶対日本人のデザインだこれ。こんな変態的なデザイン日本人じゃないと絶対にやらない。


 ともあれ、一目見て化け物だと解る強敵の出現だった。もっと小型のはエリーナ一人で対処できるレベルだったのだが、これだけの巨体、そして変態的な姿をしているとなると、流石に戦力計算がしづらい。相手がゆっくり、その機械の瞳を此方へと向け、威嚇して来るのを確認しつつ、その間にエリーナへと言葉を届ける。


「行けそうか?」


「粉砕できる自信はあるけど、一発一発が大振りだから隙が欲しい……行ける?」


「じゃあ任せろ。手足の一本がちぎれても仕事は果たす」


「うん……任せた」


 エリーナの一歩前へと踏みだし、正面、真っ直ぐに右手で槍を握って立つ。得物は入手したばかりの翡翠の双頭槍だ、というもこれ以外まともな武装がない。先程拾った銃のアーティファクトは流石に試射をしない限りは使う気にもなれない。だからこの槍一本をメインウェポンとして扱う。重要なのは相手を倒す事ではなく、仲間を通す隙を作る事だ。


 ―――大丈夫、俺は、やれる。


 息を吐きながら呼吸法で力を練り、全身に筋肉、神経を掌握する様に感覚を尖らせる。完全肉体制御、ラカンから教わった無能者の為の戦闘技術、それをスイッチを入れる様に起動させ―――そして前へと跳び出す。ラ=ルウガの加護のおかげで体は一般の人間よりも強化されているが、それでも限界はある。その為、身体能力で引きだせるスペックを限界まで、最大限に弾きだすように筋肉を軋ませながら体を一気に前へと叩き込み、十メートルを一瞬で踏破する。そのまま更に前へと突き出す姿を、


 メカヒュドラとでも言うべき異形の機械が認識する。


 認識するのと同時に三本の腕を使って大地を殴る様に跳ね、此方へと向かって跳びかかってくる。三つの首はそれぞれ開き、食い殺そうとその咢を此方へと向けて振るって来る。息を吐き、力を練り続けながらその姿へと向かって素早く跳躍する。正面から噛みついてこようとするその口の中へと手榴弾を二つ放り込み、鼻を蹴る様に上へと体を投げ、足場にして首を滑る様に走る。背後で爆発する音を耳にしながら首の裏を滑る此方の姿を首と腕が追いかけてくる。その姿から逃れる様に首裏を蹴って跳躍し、横へと跳ね飛ぶ。六本の腕、その全てが殺す為に四方八方から檻を作る様に襲い掛かってくる。このままなら潰されるだろうが、


 独りじゃない。


「だぁぁぁ、らっしゃぁぁぁ―――!」


 咆哮を轟かせながら高速で接近した姿がその大斧を振るい、一薙ぎで腕をその中間部分から三つ纏めて薙ぎ払った。右腕で巨大な大斧を持ちつつ、左腕で大剣を握り、それを此方へと向けてそっと差し出してくる。


 それを足場に、更に高く跳躍する。そうやって腕の包囲網から逃れ、届かない高さまで上がったところで、槍を回転させながら握り直す。そのまま頭の一つを狙い、


 一気に槍を投擲する。


 そして投擲した瞬間、槍の姿が消失される。


「んな!?」


 流石に予想外の現象に一瞬、何があったのかを理解できなかったが、次の瞬間には槍の姿が消失した、そのトリックが解明させる。槍の消失と同時に発生するのは風であり、吹雪であり、そして氷結であった。槍を投げようとすると、突如としてメカヒュドラの頭を中心に局地的な猛吹雪が発生し、そこを中心に一気に機械の体が氷結し始め、その上半身が一瞬で氷に寄って覆われる。そうやって吹雪が終わった次の瞬間には槍は本来の形を取り戻し、右手の横に出現していた。それを握りしめ、受け身を取りながら衝撃を殺すように転がって着地する。成程、とメカヒュドラの様子を確認しながら納得する。


「チャンス」


 凍り付いたメカヒュドラはそれから逃れようと身を揺らすが、それよりも粉砕に入るエリーナの動きの方が早い。着地した状態からフルスイングを叩き込んで体を一気に三割ほど破壊し、そこから戻す様な全力のスイングで体を両断する。そのまま動きを止める事無く両手持ちでもう一度振るう事で頭を三本まとめて全部斬り飛ばし、そこから解体と虐殺作業に入る。そのまま数秒かけてバラバラにメカヒュドラを砕くと、大きくバックステップを取りながらエリーナが下がり、助走を付けてスイングする。打撃として放ったそれを受けた巨体はまるでゴルフボールの様に弾かれ、壁に激突し、


 そして大爆発を起こしながら吹き飛ぶ。その光景を反対側の壁近くから眺め、たーまやー、と軽く言いながら息を整える。短い戦闘だったが、それでもフルスペックで体を動かすのは大量に体力を消耗する。息を吐きながら薬を取り出し、それを軽く飲んで空っぽになった瓶を投げ捨てる。


「これでボス戦もクリアかぁ? 動きが妙に悪いお蔭で助かったけど」


「性能的には上位竜種並かと思ったけど、動きが下位竜種並だった。残念」


 何故残念だかは絶対に聞きたくはない。ただ、一つの事実としてこのダンジョンが、異界が、この場所が何か非常にアンバランスさを感じさせる場所である事を非常に違和感を覚える。なんというべきか、隠されているのに”招かれている”という感覚があって、何処か”攻略済み”という感じもさせられるのだ。機器はそのままで放置されているし、やっぱり何かあって人がいなくなって、防衛機構とかも大半が無力化されている様な、そんな気がするのだ。まぁ、あくまでも予感だ。真実は調べない限りは見えてこない。


「ふぅ、とりあえず生き残れたな……そろそろ帰りたくなってきた」


「そういえば……出口まだ見つけてない」


 そうなんだよなぁ、未だに出口を見つけていなかったのだ。ここからどうやって脱出するのか、それを考えなく手はならないのだ。上位の空間魔術師がいれば一瞬で脱出できる魔法や、テレポートで移動が非常に楽になるのだろうが、そんな事が出来る人間はここにはいない。どちらかというと脳筋型が二人という状況だ。ゲーデルがいれば魔導探知は出来たのだろうが、生憎とはぐれてしまっている。となると神の奇跡にでも期待した方がいいのかもしれない。そう思いながら唯一見える出口、ゲートの方角へと向かって先導する様に歩きだす。


 結局ダンジョンの中で出来るのは前へと進む事のみなのだ、スカウトである自分が前に進まなきゃ誰が一体前へと進むというのだろうか。そう思いながら前へと、ゲートの向こう側へと進んで行く。

 (´・ω・`)ボスが強いとは限らない


 書いている自分自身でもプロローグちょっと長くなってきたかな? とは思うけど物語の下地を作る上でちょっと長い方が意味が出てくるんじゃないかなぁ、とは思うので。もうちょっと物語の本題が出てくるまでお待ちください。そこらへんから一気に面白くなってくると思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ