43. 正気に戻った牛頭尊
ノード神話 「神々にとって代わり者」の章より
125番の活動に気が付いたのは神使族である海淵王と神出鬼没王であった。
この二人の神使族は超族・125番との戦いを開始し、その決着が付くまでに600年もの長き時間がかかった。
俺たちは牛頭尊作戦の成功を喜び合うために、自然に牛頭尊の近くに集まった。
と、その時、気絶している牛頭尊の体から異様な音が聞こえたのだ。
「ガチャ、リブート。コールドスタート、BIOSから起動。システムスキャン開始、システム再構成開始」
おっ牛頭尊の体から無機質な男とも女ともつかぬそんな声が聞こえる。
もちろん、牛頭尊自身の声ではない。
でもこれって、前にもあったよね。そう、阿形卿吽形卿が機能停止した時。
「どうやら、牛頭尊はシステムの初期化が行われているようでござる。精神によっぽど深いダメージがあったのでござるな」
馬頭尊がさらりと言ってのけた。
「えっ、やっぱりお前たちってロボットだったの? って言うか、何で地球のコンピューター用語使ってんのよ」
「コンピューター用語? それは何でござるかな?」
馬頭尊はコンピューターという言葉を知らないようだった。でもシステムの初期化などの言葉は知っている。
「そもそも、お前たちを作ったのは神か神使なんだろう?」
「左様でござる」
「じゃあ、その神使が地球のコンピューターに精通しているということか。あーもう、訳分かんねぇ。この世界には日本の文化の痕跡もだいぶ残っているし」
俺の言葉に馬頭尊が反応した。
「おお、その日本というのは聞き覚えがあるでござる」
「ほんとか?」
「左様、確か神出鬼没王陛下が昔おっしゃっていたのでござるが、第二の神々は日本という太古に失われた土地の出自だとか」
「ほえっ、神々が日本の出?」
驚きのあまり、鼻水が出ちまったい。
これはどういうことだろうか。
この世界が地球と歴史的に繋がっているとでもいうのだろうか、その場合はここは未来の地球ということになる。
いや、もう一つ可能性があった。
ここは幾多もある平行世界の一つで、俺の居た地球に似た別の生物的・文化的発展をしてきた世界という解釈だ。
うーん、分からん。
「おお、牛頭尊のリブートが終了したようでござる」
馬頭尊の声にそっちを見ると、牛頭尊が驚いたようにきょろきょろと目を動かしている。
「そこに居るのは馬頭か、分からん、拙者は何故にここに縛られておるのか」
「覚えておらんのか、牛頭兄」
「確か、拙者は昨日、陛下とともに憎き125番の手に落ち申した。無念であった。それから妙なる機械にかけられたことまでは覚えて居るが、気が付いたらここにこうしている。むっ、時が飛んでおる。なんと、あれから500年もの時が経ったというのか」
牛頭尊は体内時計を持っているのか、今の時を正確に分かるようだった。
「牛頭兄、いいか、よく聞け。兄いは500年前に陛下とともに超族の手に落ちたのでござる。陛下の命運がその後どのようになったのかは皆目分からぬが、このような事態が起こることを予感してか、城譲り国譲りの儀を用意されてござった。つい先日、流砂城の主、瑠璃姫様がここにいるキャサール殿の助力もあり国を譲り受けた次第でござる」
「おお、あの流砂城の蛇姫様がか」
ん? 蛇姫?
瑠璃姫は童女姿であり蛇じゃあないだろう。
だが、馬頭尊は言葉をつづける。
「だが、主なき500年はなごうござった。陛下亡き後、城と国を維持する力が枯渇し始め、国土の大部分が失われてしもうた。そして国譲りが成就したその僅かな上位アカウント権限の切り替え時を狙い、125番は瑠璃姫様を事もあろうにかどわかしおったのだ」
「なな、なんと、新たな主を又しても。馬頭、こうしておれんわい。ぐずぐすしていると瑠璃姫様も超族が悪食の王の腐肉に取り込まれてしまうぞ」
「それは無論、承知しておるわい。そのために我ら瑠璃姫様をお救いせんとここまでやってきたのだ。しかしながら、道中幾多もの刺客が現れてな、生き物を食い尽くす蟻の大群、125番教に組織された狂信者の軍団、そして極めつけは牛頭兄、お主じゃ」
「せ、拙者であるか」
「左様、牛頭兄はすっかり125番に心を支配されておってな、我らが仲間の金龍ケイティの龍化身を神器・魔封じで奪い取り、更には我らを殺めんと虎視眈々と狙っていたわい」
「な、なんと拙者がそのようなことを」
「覚えておらぬのも無理ござらん。そこにおわすキャサール殿が巧妙なる策を用いて牛頭兄を捕縛し、その過程で兄いはシステム構成がリブートしたのじゃ。そのおかげでシステムに食い込んだ異物、恐らくは不正規なパッチは削除されたのであろう
「成程、あい分かった。済まぬ。拙者がふがいないばかりに迷惑をかけ申した。どうか拙者も瑠璃姫様ご救出の一同に加えていただけぬであろうか」
「いいんじゃない」
俺は軽く答えた。
要するに牛頭尊の洗脳支配みたいのは解けたっちゅー訳ね。
でも、なんか古めかしい言葉づかいばかりで聞いているのに疲れたわ。
しかし、これで牛頭尊が敵ではなく味方になった訳だ。
神器・魔封じも持っているし、ケイティも無事復活したし、一気に戦力3倍増ぐらいいったんじゃねぇ?
現在の瑠璃姫救出隊の戦力
キャサール皇子(中身は日下歩日人) もと神聖ガル二ラン大帝国の第3皇子、二つ名は「冷血」だが、最近では「吸血鬼をトイレに流した男」とも呼ばれる。
装備 「神器・コングーナー・・・2親等までの肉親が失ったものを呼び戻すことができる」
トドムラ隊長・・もと神聖ガル二ラン大帝国の帝城守備隊長、二つ名は「活人剣」
装備 「神器・グロッディ ・・・手にしたものを複製できる。ただしあまりにも複雑なものや神器などは複製できない」
ステローペ・・神聖ガル二ラン大帝国の抜け穴を管理していた下級貴族の孫娘、二つ名は「鷹の目」
装備 「神器・アルゴス・・ひとたび目が開くとどのような物体も透視し、数万ゲール先のものまで見通すことができる」
エリス・・もと大ニザール魔王国第5騎士団の団長、今は瑠璃姫の侍女長、二つ名は「黄金龍」 龍の血がいくらか入っている。
装備 「神器・アイギス・・強力な防御力を持ったバリヤーを周囲に展開できる」
ローラ・・マヨヒ城宰相マリクの孫娘。攻撃魔法を使える魔法使いでもある。
装備 「神器・虫の知らせ・・どんな長距離でも任意の相手と目の前にいるかのように会話ができる」
ネリン・・マヨヒ城に住むハーフバンパネラのニューハーフ
装備 特にないが、バンパネラ菌のおかげでほとんど死ぬことがない。
ケイティ・・龍族の中でも最高位にして最強の金龍、人間の姿と龍の姿の両方に変身できる。
装備 特にないが、龍に変身した時の強さは恐らく世界最強。ソニックブームや高熱のブレスを使う。他にも攻撃手段を持っているらしい。
神器・馬頭尊・・かつてのマヨヒ城城主にして神使族の神出鬼没王の部下。100人力
装備 「自縄自縛およそ100本 襲ってきた125番教軍より奪ったもの」
神器・牛頭尊・・馬頭尊の兄貴分だったが500年前に超族に捕獲され、その手下になっていたが、キャサールの活躍により正気に戻る。馬頭尊と同様100人力。
装備 「神器・魔物封じ」魔物に巻き付き、変身能力を奪ってしまう。
気が付けば全部で9人かあ。
戦力はいいんだが、なにぶん超族の本拠地の情報ほとんどないよな。
敵の戦力や戦法が分かればいいんだけど。
牛頭尊のいましめを解いた後、俺たちは牛頭尊に覚えていることはないか尋ねてみた。
「うーむ、残念ながら、その情報は・・・・んっ? ちょっとお待ちを。廃棄情報の中に映像の断片がござる、おお、これはもしかして・・・」
「何だ、超族についての記憶が残っているのか?」
「ふうむ、記憶というほど連続したものではござらん。ただ、映像の断片がところどころ破壊されずに残っているようでござる」
牛頭尊は遠くを見るような目で頭の中の失われた500年間の記憶を探しているようだった。
だが、暫くしてから首を左右に振った。
「やはり、連続した記憶は完全に消去されもうした。残っているのは僅かな画像の記憶のみ」
「しかたがないな。それでいいや。で、どんな記憶なんだ?」
「一つは神出鬼没王陛下が超族に飲み込まれる場面、そしてもう一つは広い洞窟のような空間いっぱいに広がる125番と思われる超族の姿でござる。ああ、もう一つより詳細の記憶があり申した。」
牛頭尊は一度話を止めた。
そしておもむろにこう話し始める。
「それは125番による全世界貪食計画でござる。」




