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21.魔物戦 最終日 対ドラゴン作戦立案

いよいよ最強の対戦相手登場です

ノード神話  「神々の繁栄の章」より

人種から誕生した魔物に神々が与えた力は多岐に渡った。

不老不死の力、炎を操る力、空間をゆがませる力、取りよりも素早く飛ぶ力、その力は神々の持つ空想上の生物の物語からも示唆を受け、作り出された。

最後にはとても人種から作られたとは思えない姿かたちをした魔物たちも誕生した。

 今日、この地に居る魔物たちはこうして勢力を得、本来の人種よりも繁栄することとなった。




 「キャサール、いよいよ明日が最終戦じゃな。ここまではわらわの計算通りじゃ」


 瑠璃姫は久しぶりにマヨヒ城の居間に居て俺に言った。

 最近夜は何やらやっているらしく、エリスともども居間にいたこともない。

 瑠璃姫の脇にはエリスがシークレットサービスよろしくあたりを警戒している。

 だが、こんな場所で警戒もくそもないもので、少し経つとエリスも俺たちの会話に加わってくる。


 「明日の相手はドラゴンらしいですぞ、選手控室にとても入りきらない大きさらしく、係員がああでもないこうでもないと頭を抱えていました。」


 あっちゃー、来たよ。やっぱり来ちゃったよドラゴン。

 そう思っていると、トドムラの報告に、エリスが反応する。


 「ドラゴン?ドラゴンは種類が色々いるが、何ドラゴンだ」

 「いや、そこまではちょっと」


 トドムラが言いよどむ。

 そういやあ、エリスって竜種の血を引いているんだっけ。興味があるのも当然だ。


 「でもドラゴンって、そんなに色々な種類あるんですか?私、飛龍や土龍など2~3種しか知らないんですけど」

 

 ステローベの質問にエリスが答える。


 「うむ。飛龍や海竜はそのドラゴンがどこに住み着いているかで人間が分類しているだけだ。ドラゴンは生まれでいくつかの階級に分かれている。最上位は金龍、その下に銀龍、その下に青龍というようにな。一般的に知られているのは青龍か褐龍だ」


 エリスの二つ名って確か「黄金竜のエリス」だっけ。

 まさか、エリスって最上位の金龍の血を引いているって言いたいのか。


 「そうなんですか。金龍や銀龍って居るって知らなかったです」

 「金龍銀龍は世界に数体しか居ない。多くは地底や絶海の孤島で数百年も眠り続けるため、めったなことでは人の目に触れぬし、龍のほうも人や他の魔物とは関わり合いになりたがらないと聞く。まさに孤高の存在なのだ」


 何だかエリスが自慢げだぞ。


 「まあ、今回の対戦相手に金龍銀龍クラスが出てくることなどあり得んだろう。恐らく青龍か褐龍、もしかするとそれより位の上の白龍か黒龍かもしれぬが、いずれにせよとんでもなく強い。とても人間が倒せる相手ではない。黒龍一体に一夜のうちにラワン王国が滅亡したのは皆も知っているだろう。有名な話だ」


 エリス、戦いの前からテンション下げるなよ。

 ラワン王国なんてベニヤ板みたいな国知らんし。

 それにそんなやつ相手にして勝てる気がまったくしない。

 俺としたら対戦で出てくるのはコモドドラゴンあたりにしてもらいたいものだ。

 しかし、そんな俺の不安に気が付いたのか、珍しくエリスが助言をしてきた。


 「そんなに落ち込むなキャサール、人間が龍に勝つとしたらたった一つだけ方法があるぞ」

 「へっ、そーなの?」

 「そうだ。人間が歳降ったドラゴンに勝つのは難しいが、相手が比較的若いドラゴンであれば勝つ方法がなくもない」


 エリスの言葉に全員が耳をそばだてた。


 「ドラゴンを相手に勝つ方法など聞いたこともないな。エリス、それはどこ情報だ」


 うーん、トドムラのその言い回し、突っ込みたいけど我慢する。

 

 「これは龍の血脈を受け継いだ一族のみに伝えられるものだ。みな、約束してくれ。私が今から話す龍の弱点は決して口外しないことを」


 エリスの真剣な口調に全員がコクコクと頷く。


 「いいか、歳降った龍は首回りに剛毛が生えるからこの手は使えないが、若い龍であれば首回りに剛毛はない。実は龍のこの近くに唯一の弱点があるのだ。うん?どうした、キャサール」


 全員が俺のほうを見た。

 それは俺がずっこけたからだ。


 「あーはいはい、分かっている。分かっている。龍の喉のところに一枚だけ逆向きの鱗があるんだろう?そこが弱点で、下手に触ろうものなら、龍が大激怒するってやつだろ?」

 「ええっ、キャサール、何故それを、何故知っている。どこから聞いた。誰から聞いたのだ」


 ああ、エリスがうろたえている。これはこれでちょっと楽しい。

 もうちょっといじっちゃおっかな♪♪


 「そのくらい、常識だぜ。俺の国では子供でも知っている。龍の逆鱗のことはな」

 「ああ、何ということか、一族の秘密がそこまで広まってしまっているとは」


 エリスが頭を抱えている。

 うふふ、うふふふふふ。ダメージ受けてるエリス楽しい。おれを素っ裸にしたこと、これであいこにしゃおうかな。


 「でも、殿下。龍の逆鱗なんて、あたし初めて聞きました」

 「そうですな、私もこれまで一度も聞いたことがないですぞ」


 お前らなぁ、空気読め、空気。そんな時は赤ん坊でも知っているって言うもんだぞ。

 だが、ここの龍は俺の知っているファンタジー物の龍のスペックとそっくりだ。

 これはこの世界の情報が地球にも流れているということなのだろうか。

 地球の、日本の技術や情報がこっちにも流れているみたいだし、ひょっとして両方の世界の交流は俺が思っているのより深いのかもしれない。


 「しかし、それにしても龍の喉にある鱗、逆鱗でしたっけ、そこを攻撃する前に龍のブレス攻撃をどうやって防ぐかですな」


 あーれーっ、やっぱこっちの龍も火炎放射するのね。

 火炎放射、やばいな。ロースト人間にはなりたくない。


 「おい、コングーナー、消防用の耐火服持ってないか?・・・って俺の一家がそんなの持っているわけないよな」

 「うーん、残念ながら耐火服はないっしょ。でも、ああ、お前のばあさまが若いころ使っていた防空頭巾なら出せるっしょ」

 

 B29から逃げるやつね。はいはい。それは絶対に役に立たないアイテムだ。

 その時、ステローペが素っ頓狂な声を上げた。


 「あれっ、そういえばあたし、コングーナーの声が聞こえる。防空頭巾がなんとかって」

 「むっ、私も聞こえた」

 「わたしもだ、防空頭巾を出せるとか、それがどのようなものなのかとんと見当もつかんが」

 「へっ、そーなの?」

 

 確認すると全員がコングーナーの声が聞こえたという。


 「当然じゃ。神器は成長する器じゃ。みなの連帯が強まればその声が全員に聞こえるのは道理じゃ」


 こともなげに説明する瑠璃姫だった。

 試しにグロッディやアイギス、アルゴスの声が聞こえないかと試してみたが、それぞれに普通に会話することができた。

 ちなみにアルゴスの声はきれいな女の子の声。アイギスは宝塚の男役のような凛とした声、グロッディは渋めのおじさん声だった。

 みんな声優のような声だ。

 何だかそれぞれの神器の所有者の精神に合った性格と声になるらしい。

 ちなみに方言を話すのは俺のコングーナーだけかぁ。

 ちょっと落ち込んだが、でもこれはこれで仲間が急に増えたようで心強い。

 戦闘や防御方法で強力な軍師がついたようなものだ。ゲームの「信成の野望」にもそんな軍師が居て、おおいに助かったっけ。

 知らない?「信成の野望」、スケート界の下剋上物で、権謀術策を駆使し、隣町のスケートリンクに攻め込んだり、町を発展させてスケート人口を増やしたりするやつ。

 まあいいや。

そんなんで、改めてアルゴスやアイギス、グロッディも入れて作戦会議が開催された。

ちなみにアルゴスは「アルちゃん」、アイギスは「アギ」、グロッディは「グディ」、コングーナーは「コグ」と呼ぶことにする。

長い名前を呼ぶのはめんどくさい。



 「(アル)ドラゴンですかぁ、あたしの透視の力では戦えないですね。」

 「(アギ)私の障壁ならばドラゴンの攻撃など軽く躱せるが、キャサールには私の力を引き出せるとは思えない。残念ながら力にはなれそうもないな」

 「(グディ)私もだ。ドラゴンを倒す武器を増殖してくれというならいくらでも増殖できるが、その肝心の武器をコグが出せないんじゃ力になれそうもない。」


 ・・・・作戦会議にならなかった。


 「みんな、ちゃんと考えてください。じゃないと殿下は、殿下は・・・」


 ステローベが俺のために必死で食い下がってくれる。

 ああ、なんていい娘なんだ、ステローぺは。


 「わーん、助けてぇ、瑠璃姫衛門」


 瑠璃姫に訴えてみた。

 アイテムは出してくれなかった。


 「大丈夫じゃよ、我が婿殿。このように生身の人間形態になってもらわらの因果律計算は婿殿の勝利を告げておるわ。どのように戦うかまでは分からぬがな」


 分かんないのかい。

 なんか気休めの言葉を言われている気がする。

 するとエリスのアイギスが言葉を発した。


 「(アギ)我々のほうからは何も出来ないのは変わらない。キャサールとコグの戦術でなんとかするしかない。ドラゴンに対抗できそうな武器、本当に思いつかないのか」

 「うーん、ドラゴンの鱗ってすっごく固いんだろう?破壊するのにどのくらいの破壊力必要なんだ?」

 

 俺の質問にトドムラとエリスが答えて言った。


 「人間の持つ石剣や石槍でその鱗を貫けた例など聞いたこともありませんぞ」

 「そうだ。ドラゴンの鱗を食い破れるのは同じドラゴンのみだ」


 あんまり参考になりそうもない。

 やはりじっちゃの38式で逆鱗を撃ち抜くしかないのか。

 手持ちの地雷もある程度の威力はあるが、全て対人用なのでそれこそ蟷螂の斧でしかないだろう。


 「まったくだ、せめて人の形態になってくれれば石剣も通用するのだがな」


 エリスが何気なくとんでもないことを言った。


 「ま、ま、待て、今何と言った。エリス。今何と言ったのだ」


 ま、まさか、ドラゴンが人間の形に形態変化するというのか。


 「何だ急に。ドラゴンも魔物ゆえ人の形態になれるのは当たり前だろう」


 全員が何でそんなことも知らないのといった顔でこっちを見ている。

 だが、今はそんなことを気にしている場合じゃない。

 人間の形に変身してくれるのならばじっちゃの38式が使えるのではないのか。

 

 「どーゆうことだ。トドムラ説明してくれ」

 「殿下、殿下の知識のなさにびっくりですぞ。いいですか、もともと魔物は第二の神々が人間を元型に作ったもの。ですから、たとえば魔狼なども選ぼうと思えば人間の形に変身することができるのですぞ。それはヒトトリ草もビッグホーンラビットもドラゴンも同じこと。しかし、人間形態では魔物本来の力を発揮できず、人間並みに弱体化してしまうため、めったに人間形態になる魔物はおりません。例外は、人間との間に子をなす場合や、ゆえあって人間社会で暮らす場合などでしょうな」


 そうか、そうなのか。あのヒトトリ草や魔狼は人間の血が混じっていたのか。

 それを殺したということは、殺人になるのか?


 「しかし、殿下、そんなことを聞いてどうするのだ。戦いにおいてに人間形態になるほど馬鹿なドラゴンは、いやどんな魔物でも人間形態になるような馬鹿はいないぞ」


 エリスの言葉を聞きながら、俺はある作戦を思いついた。

 なんとか、そのドラゴンを人間形態にできれば勝利する可能性はぐっと高まるのだ。


 もしかしてだけど、もしかしてだけど、俺のこの作戦でいけてるんじゃないのか。

 


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