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召喚術師はじめました  作者: 鈴野あや(鈴野葉桜)


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プロローグ

 二○七○年。時代の流れに合わせて、子供から大人まで遊ぶゲーム機も進化し、ついには夢のまた夢とまで言われていたVRMMOまでもが実現した。もちろんVRMMOだけではない。オンラインゲームが苦手な人用向けにもVRSLGというオフラインであり、一人プレイ専用のゲームも開発された。


 VRMMOとVRSLG。大勢で一つの物語をプレイするか、一人で一つの物語をプレイするか、それだけの違いではあるものの、その意味合いは大きく違ってくる。


「あー、早く帰って『召喚術師はじめました』やりたいなあ」


 大学からの帰り道、一人小さく呟く。


 フルダイブ機能が搭載されたVRMMOとVRSLGはもう一つの現実世界と言っても過言ではない。そのため現実とゲームの区別がつく年齢、そして脳の情報処理能力や身体への負担を考え、フルダイブは二十歳からという制限が全世界で設けられた。


 去年二十歳になった鈴は、ようやく念願のフルダイブ専用機器を手に入れたのである。そして初めてフルダイブしたのが『召喚術師はじめました』という女性に人気のゲームだ。

 このゲームを簡単に説明すると、まず契約獣にしたい獣の悩み等を解決し、好感度をあげるところからスタートする。

 相手の好感度がある一定の高さまで上がったところで契約獣として契約してもらうことができ、晴れて契約術師となることができるのだ。

 契約術師となってからは、様々な事件を解決していき、最終的には契約獣との強大な絆の力により、主人公は輝人という特別な存在になって、召喚術師という新たな力を手にし、契約獣から召喚獣になった相棒と色んな事件を解決したりするタイトルそのまんまのゲームだ。


 もちろん女性に人気というだけあって、ただのRPGゲームではない。


 召喚獣は人化することができ、乙女ゲーム要素、つまりは恋愛もすることができる。そしてここで活躍してくるのがAIだ。

 このAIによって、召喚獣はプレイヤーの態度や周囲の環境などから見た目や性格も変わってくる。だから同じゲームをプレイしても、全く同じ召喚獣と恋愛をすることは不可能となる。

プレイヤー一人一人が違う相手と恋をできる、を売りにしたゲームなのである。そしてもう一つ人気を押し上げている理由が、その召喚獣と十八禁なこともできてしまう、というものだった。


 鈴は攻略法もほぼない中、ひとすら一年間ゲームをプレイしてきて、ようやく契約術師の最高峰である輝人、そして召喚術師になることができた。色々な苦労はあったものの召喚獣という名の恋人もできたし、毎日ゲームをするのが楽しくて仕方なかった。


 そんな今日この頃。


 まさか鈴はこんな事態に陥るなんて思いもしなかった。


 大学の講義が終わったのは十九時過ぎで、仕事終わりの会社員や、鈴と同じく講義を受け終えた学生がちらほらと駅のホームに集まっていた。


 電車を待つ列に並びながらスマートフォンを触っていると、誰かが勢いよくぶつかってきた。もちろんそんなふいうちに鈴が耐えられるはずもなく。そして運の悪い事に鈴は列の一番前にいて。


(あ、これだめだ。死ぬやつだ)


 目の前にはさらに運の悪いことに電車が迫ってきていた。

 電車の耳が痛くなるような音と、人々の悲鳴を聞きながら鈴は電車にはねられた。



 そんな鈴が最後に発した一言と言えば。




 ゲーム、やりたかったのにな――だった。

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