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神に見放されし天秤  作者: 春海
第 1 章 辺境揺籃編:運命の始まり

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幕間 「夢」

 なぜか知らないが、私は一本の大通りをずっと歩いていた。


 周りの景色はとても奇妙だ。 すべてが白い。 まるで色を塗っていない絵本のように、何もかもが白い……


 不思議だとは思わない。 ただゆっくりと歩き続け、時々立ち止まっては道端の風景を眺める。


 白い雲、白い木々、白い建物……


 分かれ道に差し掛かり、左へ行くべきだと気づく。 大通りから、ごく普通の小道へと入っていく。


 大きな建物が見えた。 その前で立ち止まる。


 「おーい、早く上がってこいよ!」


 どこかの窓から、私を呼ぶ声がする。 私はその建物の中へ足を踏み入れた。


 扉の内側はとても広々としていて、目に入るのは建物を支える白い柱だけだ。


 (上に行かなきゃ。)


 心の中でそう思い、すぐに長い階段が目に入る。 普通、建物の中の階段は途中で折り返しがあるものだが、その階段はただまっすぐ上へ、果てしなく伸びていた。


 あれで上ろうとする。 だが一段目に足をかけた瞬間、見上げると階段は途中で途切れている——どうやっても上の階には辿り着けない。


 (別の道を探さなきゃ。)


 建物の奥へと進み、他に上へ行ける場所を探す。


 しばらくして、半開きの扉を見つけた。


 扉を押し開けると、中には螺旋階段があり、その隣には木製の昇降機が備え付けられている。


 「お兄ちゃんも上がるの?」


 近くにいた小さな女の子が、その昇降機を指さしながら、根気強く説明してくれた。


 「でもその昇降機には乗っちゃダメだよ。 ちょっと壊れてるみたいなんだ」


 「教えてくれてありがとう。 でも俺はこれに乗りたいんだ」


 「じゃあ私は階段で行くね。 バイバイ!」


 私は昇降機の中に立つ。 それはひとりでに動き出し、ゆっくりと上がっていく。


 けれども間もなく、昇降機はギシギシと音を立て始め、脇の板が一枚また一枚と剥がれ落ちていく。 まだゆっくりと上昇はしているが、そう長くは持たずに落ちてしまうだろう。


 止まったその瞬間、私はすぐに上方へ手を伸ばし、まだ届かない階の床を掴んだ——昇降機が落下する前に、どうにか這い上がった。


 危なかった。 汗がどっと出た。 もう少し遅ければ、足が挟まれてちぎれていたかもしれない。


 「お兄ちゃん、また会ったね」


 顔を上げると、さっきの小さな女の子が瞬きしながら私を見下ろしている。 私はまだ這いつくばったまま息を切らしていた。


 「もう着いたの?」


 彼女が尋ねる。


 「まだみたいだ」


 私は立ち上がった。


 「昇降機が途中で壊れてね」


 「私もなんだよ。 ほら、階段もここで途切れてるんだ」


 彼女が指さす先を見る。 石造りの階段がこの階で突然途切れ、上には壁から突き出た数段の残骸があるだけだ。 それぞれの段の間には距離がある。


 「他に道はないの? ここからじゃ先に進めそうにないね」


 まるで旧知のように、私はまた彼女に質問する。


 「ないこともないよ。 付いてきて」


 彼女について行くと、また下の階から見えたあの階段に戻ってきた——案の定、途切れている。


 「ああ、ここもダメか」


 元の場所に戻り、どうやって上るか考える。


 「こうしよう。 俺にしっかり掴まっててくれ。 あの石の破片を掴みながら、少しずつ渡っていく」


 なぜこんな大胆な考えが浮かんだのか分からないが、どうしても上らなければならないと強く思う。


 小さな女の子は躊躇せず、私の首にしがみつき、背中に覆いかぶさった。


 力を込めて跳び、近くの張り出した最初の石の破片を掴んだ。 息を整え、もう一度力を込めて次の残骸へと振り渡る。


 順調だ。 下を見るとやはり怖いが、それでも前に進み、上へ上へと這い続ける。


 「もうすぐ上の階みたいだ」


 少し休んでから、背中の小さな女の子に注意を促す。


 「しっかり掴まっててくれ。 この距離は少し力を入れないと届かない」


 背中からは、彼女の確かな返事が聞こえる。 信頼に満ちている。


 準備を整え、思い切り前方へ振り出し、上の階へ通じる最後の石の破片を掴もうとする。


 時間がゆっくりになった気がする。


 まだ宙にいる。 まだ前にいる。 だが下の状況が見える。


 下の景色は白い深淵と化し、絶えず私の心を蝕み、恐怖を植え付ける。


 (上らなければならない。 自分のためだけじゃない。 それに……)


 後ろを振り返る。


 ——何もいない。


 (え? 何のためだったっけ?)


 その一瞬の迷いで、時間は通常の流れに戻った。 石の破片を掴み損ね、私は落下し始める。


 ずっと、ずっと落ちていく。


 本能的に必死に両手を振り回し、何かを掴んで落下を止めようとする。


 ……


 え?


 両方の手のひらから、温かい感覚が伝わってくる。 何かを掴んだのか?


 分からない。


 けれども、もう落ち続けてはいないようだ。

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