2022年9月上旬 親友と
2022年9月上旬編 (1/2)
連続エピソードです。
ドスン――夜中に僅かな揺れと共に響く音。
車が落下したようなそんな鈍い音が、深夜の街に響きわたっていた。
2人1組で20キロウエイトを悪路の中運ぶ訓練の最中に、俺たち清掃隊52班に召集がかかった。夕方の召集だと夜の出動は確実だ。少し気が重たくなりながら召集場所へ小走りで向かった。
召集場所にはヒーローたちが既に揃っている。同期ヒーローの三条の姿もあった。つい数か月前に初めてメインヒーローになった同期だが、その時も紫の木属性エニグマを木っ端みじんにしてくれた。今回は、面倒なクリーン作業にならないことを心から祈る。
「全員揃いましたので、ミーティングを開始します。」
三条が話し始めたので今回のメインヒーローは三条のようだ。
次いで、古賀・法月・52班が挨拶をする。
「本日の出動は深夜0時に現着となるため、ミーティング後の17時から夕食・仮眠休憩となります。出発予定時刻は11時半です。変更がありましたら随時連絡します。本日の出動場所はS市A区市街地中央にあるS公園です。」
ミーティングが一瞬、騒めいた。市街地ど真ん中でのエニグマ圧政は、ごく稀だからだ。
「2週間程前より、深夜にドスンという異音と振動があり、公園内の工事現場を一般職員が確認しても異常は発見できず、昨日先発班が調査したところ、エニグマによる異音が判明、異音に金属音が混ざる事から、金属性のエニグマと推測されます。」
三条がひとしきり説明を終えると横から古賀が口を出した。
「もし、金属性でなく土属性だった場合も考慮し、俺がサブになっています。」
先発班でも属性が確実に分かるわけでは無い。なので数少ないヒーローだがメインとサブに分けている。
ミーティングが解散となった。今から休憩に入るところに三条が駆け寄ってきた。
「月陽、先に飯食べるなら一緒に食べない?」
出動を控えたヒーローとは思えないほどの笑顔で言う。
「メニュー多いうちに飯にするつもりだったから、一緒に食べようぜ!」
こっちだって6歳の頃からの友人だ、誘われて断る必要も無い。俺たちは食堂に向かい三条は焼肉定食、俺は唐揚げ定食を持って席に着いた。
「そういえばさ、ずっと疑問だったんだけどヒーローって力使ってない時の透視化ってどうしてんの?」
素朴な疑問を三条にしてみた。三条は笑って
「俺はずっと手の中で、炎練ってるよ。」
「そうなんだ!分からなかった!」
俺が驚いたのが嬉しかったのか、三条は続けた。
「古賀さんは肩とかに蔓とか木の苗生やしてるし、和泉さんは手に手袋みたい水を吸いつけてるって言ってたな。」
「へぇ~、ヒーローってつくづく大変な仕事だな……。」
三条が首を振って答える。
「クリーンだって大変じゃないか。」
俺はにやりと笑って
「特にお前の時はな。」
三条は顔を少し俯かせしょげた顔をした。
「面目ない……。」
「まぁ、その内大きな塊にしてくれよ期待のルーキー君。」
俯かせていた顔をバッと上げた三条は
「何その期待のルーキーって!」
「知らねえの?お前そう呼ばれてるらしいぜ。」
俺の声に三条は目を輝かせた。そういう素直なところが期待される要因なんだろと思った。
早めの夕飯を食べ終わると、軽食のおにぎりを作ってもらい、それぞれの仮眠室へと向かった。仮眠室は、ヒーローは1人一部屋。クリーンは班長・副班長で1部屋、その後は男女別の6人部屋が二つある。俺たちは男5人で1部屋を使っている。部屋に入ると、いつも元気で人好きな七尾 和希が、既に高いびきをかいて寝ていた。どんな状況でもすぐに寝れるのは素晴らしいことなのだろうが、迷惑はかけないでほしいと思いながら、自分の寝台へ入った。
22時部屋全員のアラームが鳴り始める。意外と深い眠りに入ったおかげでスッキリ起きることができた。班員は30分間で身支度を済ませなければならない。夕食・軽食を食べたり、ストレッチ、準備運動をしたりする。さっき作ってもらった昆布のおにぎりを齧りながらスマホのブルーライトで頭を叩き起こす。クリーンも命がけの仕事だから、眠気眼では出動できない。ストレッチをしてから、少し早いが積み込み作業に向かう。
「うっし、やるか。」
自然と声が出ていた。少し恥ずかしい……誰もいなくてよかった。
定刻より少し早く作業は終了し、少し早く出発した。今日の現場は支部から20分程度で着いてしまう、県庁所在地のど真ん中にある広い公園だ。東京ドームで言うと1.5個分くらいあるのかな?
現在はその3割が整備のため工事中。その工事現場こそ今日向かう場所だ。夜の出動とあって車内も静かだった。
「いやに静かだね……。」
現場に着いた古賀が言葉をこぼす。
繁華街の喧騒が遠くに聞こえるほど、現場は静まり返っていた。
虫の声が響き渡り、気温よりも空気が冷たく感じるほどに……
次回は 1月 10日 21時更新です。
よろしくお願いします。




