2023年 4月某日 熟練ヒーロー
連続エピソードになります
2023年 4月某日編 (5/6)
轟く咆哮。破られた束縛の巨大蔓。
俺たちクリーンはただ立ち尽くして見ているしかなかった。
先ほどと同様の地響きが体を揺らした。
「やべぇぞ、古賀。足まで自由になりやがった。」
インカムから渡部の声が聞こえた。
エニグマは崖から完全に分離し、自由に動けるようになっていた。
「OK!渡部さん崖の一番上のエニグマ側に来れる?囮になって!」
「囮を簡単に言ってくれるなよ!」
「渡部さんなら簡単でしょ。」
「ああ!やってやるよ!!」
ピンチな時ほど楽しそうに会話をするよなと、震える足を押さえながら思った。
自由に動けるようになったエニグマは、地響きを立てながら一歩川の方へ後退した。
何をしてくるのか予想もつかない。
「言われた場所に着いたぞ。」
渡部の声がインカムから聞こえた瞬間、エニグマが何かを掴んで腕を振った。
「金剛打!!!」
ドンッという音と共に、渡部の声が崖の方から聞こえてくる。
少し高い場所まで移動してエニグマの方を見ると、エニグマは自分の体をえぐり取りながら、それを渡部に投げつけている。
投げられた岩を金剛打で渡部が打ち砕く。それが続いていた。
ふと目を横にずらすと、先ほどまで俺たちがいた場所に、古賀がいた。
俺が古賀に気付いたことを感じ取ったのかこちらに手を振る余裕まであった。
そしてインカムから古賀の声が響く。
「渡部さん、ちょっと後退してくれる?」
「了解!ちょっと休むぜ!」
「巨樹。」
古賀の声がインカムから絶えず聞こえるようになった。
本格戦闘になるとマイクを入れっぱなしにすることになっていた。
言わば本格的な戦闘開始の合図だ。
古賀の乗った木は大きくなりエニグマと同じ目線になった。
「蔓生樹――バオバブ。」
エニグマの周りで無数の蔓の先が太くなりバオバブの木へと変化していく。
エニグマも何かを感じ取ったのか蔓を毟っている。毟った先から水が流れていく。
何層にもなって蔓はエニグマを取り囲んでいった。
「翠爆雨!」
古賀が叫ぶと、蔓とバオバブの木が破裂し大量の水がエニグマを飲み込んだ。
水が止んだ瞬間、泥を含んだ岩が古賀へ飛んできた。
エニグマは健在だった。
「おっと、そいつを受け止めるのは俺の役目だ!」
そう言いながら前線へ渡部が走って戻って来た。
「鉄槌!!!」
岩をハンマーで打ち返した。それに気づき、エニグマは攻撃対象を渡部に変えた。
古賀は蔓を足場にして物凄い速さでエニグマの足元へと降りていく。
他の蔓で隠れているためエニグマは古賀が足元にいることに気付いていない。
ゴゴゴゴゴ……っとまた地響きがした。エニグマが自身の中にある直径5メートルありそうな岩を自分から切り離した音だった。
「さぁこい!!全部俺が砕いてやるよ!!!」
勢いよく渡部が叫んだ。
エニグマが岩を持って振りかぶる。
「――鉄木・千棘牢」
古賀の声と共に、足元からエニグマを囲うように樹木が隙間なく生えてきた。
木が育ちきった瞬間、物凄い打撃音が響き渡った。
「アイアンウッドで出来た棘は岩をも砕くんだよ。」
音が止み、樹木が朽ちると、そこにはただ大量の土砂だけが残っていた。
「エニグマ討伐完了。」
古賀の声がインカムから響いた。そして間髪入れずに村越が言った。
「只今よりクリーン作業開始する。」
次回は 3月 29日 日曜日 更新です
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次回はいつもとは違う清掃作業。
お楽しみに!




