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2022年7月某日 クリーンの仕事

蔓を伸ばしヒーローに襲い掛かる、蔓の塊のようなエニグマ。

左腕と一体化した金属製のハンマーを振りかざし、金属性のヒーロー・渡部茂わたべ しげるが応戦する。左で払い右腕と一体化した斧で蔓を薙ぎ払う。エニグマ優勢に見える防戦一方の戦いとなっていた。


ここは山奥にある県立公園の一角だ、沢にはカワセミも来る自然豊かな場所だが、この夏、短期間で異様なまでに木に蔓が巻き付いた状態で繁殖していると県に通報があり、依頼を受けて出動している。


異常繁殖はやはりエニグマによる被害であった。葛の植物蔓が主な被害であったため、金属性の渡部がメインヒーローとして現場指揮を執っているが、土属性サブヒーローの森田もりた 美里みさとの姿が見当たらない。

じりじり渡部が後退している。見ていることしかできないクリーンの辛いところだ。

エニグマの勢いがさらに増していく。木の少ないエリアまで押されてしまった。

相手が木陰から出た次の瞬間、地面から土がせり上がりエニグマの動きを封じた。


「ここなら大丈夫ですか?渡部さん」

陰から出てきた森田が渡部に問いかける。

「十分だ、森下くん!少し下がっていてくれ!」

そう言うと渡部は前にあった重心を後ろにずらし、体を思いっきり左にひねると勢いをつけ左のハンマーをエニグマに振り落とす。

カーンという高い音を何度も響かせながら、森田の出した土の拘束ごとエニグマを潰していく。


粉々になったエニグマ、土、そして無数に巻き付いた蔓。クリーンにとっては悪夢のようだ……


咳ばらいをしてから班長の村越が指示を出す。

「言いたいことも色々あるだろうが、クリーン作業に入る。まずは、戦闘処理の主に、エニグマの破片ごと土を運び出すチームと、蔓を含む草刈りチームに分かれて作業する。」

今回の出動は、公園の異常繁殖した雑草の駆除と在来植物の保護調査という名目で現場入りしているため、異常繁殖した蔓や普通の草刈りも撤去作業もお仕事に含まれる。


「土撤去チームリーダーは、俺村越。草刈りチームリーダーは阿部。」

呼ばれた、阿部あべ 太一たいちが返事をした。阿部は52班の副班長で、班のオカン的な面倒見の良さがある人だ。

「草刈りは女性陣が担当してくれ、男どもは土運ぶぞ!」

「「「はい!」」」

絶望が入り混じる返事をし、それぞれの作業に入った。


俺たち土撤去チームは、土を運ぶ一輪車とスコップを持つ若手と、小型ショベルカーを運転し土を集めたり、トラックに積む作業をする先輩達とで分かれた。怪物的なパワーがある班長は若手の手伝いをしてくれるようだ。

周りに飛び散った土をスコップですくっては一輪車に乗せていく。地味できつい作業の幕開けだ。土の色を見て色の濃い方が、森下の出した土だと経験で分かるようになった。

深く掘り過ぎないように、先が一直線になったスコップでひたすら土を集めていく。


今回の出動のため、自然公園は閉園になっていた。環境整備の仕事も含まれるため、今回はトラックと重機を持ち込むことができた。

「成岡!早く免許取りに行かないと、一生スコップだぞ!」

免許を唯一持っていない成岡に、村越が気合を入れる。

「それは勘弁なので、来月行かせてください!」

クリーンは、ショベルカーなどの特殊車両を運転する特殊大型免許の取得がクリーン配属2年目に義務付けられている。


「きっつ……。」

思わず漏れた独り言が、作業の過酷さを物語っていた。ずっと中腰の力作業。重い土をスコップでひたすら一輪車に積み込む。

「分かります……宮部さん……。」

近くで蔓を刈っていた佐々木に聞かれていた。

「そっちも大変そうだね……。」

返事をすると、佐々木は弱弱しい声で

「私背が低いから上ばっかり見て首痛いんです。」

「お互い頑張ろう、無理しすぎない程度に。」

そう言って作業に戻る。早く終わらせて、草刈りの手伝いにも行かないといけないみたいだ。

そう思いながら土を運んでいくとヒーローの渡部も土を運んできた。

「お疲れ様です。渡部さん手伝ってくださってるんですか?」

慌ててあいさつした。

「おう。お疲れ!俺が粉々にしちまったからな……。なんにせよ人手の多い方がいいだろ。」

少し、はにかんだ笑顔で渡部が言った。粉々にしても先輩ヒーローと雑談してるどこかのヤツとは大違いだと大先輩のヒーロー相手に失礼ながらも感心してしまった。

「ありがとうございます。とても助かります!」

「さぁ、さっさと終わらせて草刈り手伝うぞ。」

「はい!」

ありがたい応援があり少しやる気が戻った。腰の痛みに耐えながら作業の手を速めた。


「土撤去チーム。あとはトラックへの積み込みだけだから草刈り手伝ってくれ!」

村越の声に返事をし、草刈りへと合流する。

森田と透過のヒーローとして来た三上も草刈りを手伝っていた。

「……すみません。私の拘束の土、多すぎましたよね……」

森田が申し訳なさそうに頭を下げた。

「全然大丈夫ですよ、エニグマ退治は早い方が良いですから。」

神崎が代表して返事をした。早く終わってくれたから、これでも草刈りが短くなったと思った。


よく見ると蔓が木の上まで伸びており木に登って作業をしていた。

阿部が合流した俺たちに気付き声をかけてきた。

「上の方をやってもらってるから、下の方を草刈り機でお願いしちゃってもいい?」

「了解です。在来種とかの確認は……。」

阿部が首を振り、答える。

「蔓の葉で日陰になってて全滅してた。蔓の所は草刈り機入れて大丈夫だよ。」

残念そうに言う阿部に返す言葉もなく、返事だけして草刈り機を取りに行く。

上から下から草刈りをして数時間が経ち、日が傾いてきたころようやく終わりが見えてきた。


今日は長い作業だった。結局、昼休憩を除いて6時間動きっぱなしだった。体のあちこちが悲鳴を上げている。

今日の夕飯は牛丼テイクアウトしようと心に決め、刈り取った草をトラックに積んだ。


「クリーン作業終了。ヒーローの皆さんもありがとうございました。」

「「「ありがとうございました。」」」

村越の声に続きヒーローに向かいお礼を言う。

渡部がヒーローを代表して

「お疲れ様。さぁ、遅くなる前に帰ろうか。」

「「「お疲れ様でした。」」」

こうして、帰宅ラッシュの中2時間以上かけて支部に戻り、道具の整備をしてから牛丼屋に向かった。これ以上ないくらい特大の腹の虫の声を聴きながら。


5話目まで毎日21時に更新します。

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