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2023年 4月某日 現場の心得

連続エピソードになります。(3/6)

現場に到着すると、雲一つない青空が広がり、散り始めた桜がより一層映えていた。

ここからはエニグマ捜索になる。捜索はヒーロー主体で行うが、クリーンも捜索を手伝っている。俺は何度もこの捜索で危ない思いをしてきたので、新人教育中という事を一番に考えて行動しようと、移動中に心に決めていた。


「高木、緊張しすぎてない?」

「……ちょっと緊張してますけど、大丈夫です。」

「ちょっとならいいよ。今から透過ヒーローの三上さんに、一般人から見えないよう透過の力を掛けてもらってから、エニグマの捜索を始めよう。」

「はい。」


また少しだけ緊張した高木を連れて三上の元へ向かった。


「あなたたちで最後ね。」

俺たちを見て優しく微笑む三上に高木も少し緊張が緩んだようだった。


「三上さんよろしくお願いします。」

「はい。かしこまりました。」

そう言って三上はお茶目にウィンクした。そして俺の両手を持って唱える。


「ステルス。」


高木にも同じようにステルスを掛ける。技名を言うのも、すっかり板についていた。


「そういえば『ステルス』って法月さんと同じですね。」

俺が何気なく三上に言うと、三上は顔を明るくして話し始めた。

「そうなの!同じ透過を使うんだから原理は違っても同じ言い方にしようって、法月くんと2人で考えたのよ!恥ずかしくなく、みんなが覚えやすい名前って!」

みんな何となく察して言わずにいたのだろうが、あえて聞いてもらえて嬉しいのだろう。

キョトンとする高木を見て、俺は笑いながら説明をした。


「少し前までは、ヒーローは技出すときに黙っててもよかったんだけど、力が入りやすいとか、周りがどんな技を出すか分かりやすいからってことで、急遽技名言いながら技出すことになって、ヒーローの人たちは大慌てで技名考えたんだよ。」

「なるほど、そんなことがあったんですね。」

「無言時代を知らない人が入ったのね~。」

三上は頬に手を当て、少しため息交じりに言った。

「『無言時代』っていいですね。俺もこれから使おう!」

「宮部くん、いいわよ。いっぱい使って!」


雑談を終わらせ、捜索任務へと入る。今回は捜索する時に注意することや、どんな場所を捜索するか、異変発生時の知らせ方などを教えながら、軽く捜索するだけにしようと思っている。


「さっき付けたインカムとマイクで異変を感じたら一斉に知らせるようになってる。あと、進捗状況とかの報告にも使うかな。マイクの横のボタンを押しながら話すと全員のインカムに届くようになってるよ。」

「はい。」

スマホを出してメモしようとする高木を見て慌てて止めた。

「現場は何があるか分からないから、メモは支部でしよう。支部で振り返りがてらもう一回説明するから。」

「すいません。つい癖で……」

「メモ取る癖は良いことだけど、特殊な状況だから。足元や周り見てないと、いつ何が飛んで来るか分からないから。」

「はい……。」

少しへこんでしまった高木を見て、この話題を終わらせることにした。


「エニグマの探し方だけど、周囲の景色で少しでも変だと思う所を探すんだ。今回は、土属性。足元を見て何かを引きずった跡があるとか、真新しい土が落ちてるとか、異音がするとかそんな感じかな。」


そう話した途端、足元が動いた。凄まじい地響きが辺りを支配する。地震かもしれない。でもここはエニグマの現場、一番に疑うのは、エニグマが動き出したことだ。

この場所は、川に面した崖の上。揺れが起きた場合足元が崩れることもあるので、車を停めた山側を見た。他の班員たちが急いで山側へ避難しているのが見えた。


「高木!動ける?車の方まで走るぞ!」

高木は川側を見たまま動かない。


「高木!早く!」

「み、宮部さん!あれ!!」


視線の先にあったのは

――巨大な2つの目玉。


「高木!車まで走れ!逃げるぞ!!」

ハッと我に返った高木の手を引き、車のある場所まで走り出した。


「古賀エニグマ討伐に向かいます。」


インカムから古賀の声が聞こえた。

いつもと変わらない軽い感じの声が、心強い。


何とか車まで走り切り後ろを振り返る。

先ほどの崖だった場所にそれよりも大きい影が立っていた。

体長20メートル近い。

土でできた巨体とサイのような1本の大きな角がある。

不自然なほど大きく鋭い2つの目がこちらを見ていた。


ただそこにいて、俺たちを睨んでいる。


次回は 3月 22日(日) 21時更新です。

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次回は久々の戦闘が始まります!

お楽しみに!!

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