表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/40

2023年 4月某日 緊張のほぐし方 

連続エピソードになります。(2/6)

春のスッキリ晴れた空に、土を擦る音が響きこだまする。

その音は散り始めた桜の舞う速度を速めるかのように、辺り一帯を震わせた。


「今回の出動、自分の振り返りも兼ねて、高木の教育係頼むよ、宮部。」

出動準備に入るため動き出した俺の肩を、班長の村越が叩き何事かと振り返ると、間髪入れずに教育係の話が持ち上がった。


「自分で大丈夫ですか?」

「高木も話しやすそうだし、久しぶりの本格出動だろ?さっき言ったように振り返りも兼ねて、よろしく頼む。」

「はい。了解しました。できる限り頑張ります。」

「とりあえず、高木、ガチガチに固まってたから、ほぐすところからよろしく。」

「それが一番大変なんじゃないですか。」

「そうともいう。」


2月の研修を経て、少しのことでは動揺しなくなったと思う。突然の教育係も何とかこなそうと高木を見た。指先までガチガチに力が入っていて、見ていられないほど緊張してる。少し可愛く見えた。俺にもあんな頃あったな……。


「高木、大丈夫?俺今回高木の教育係になったから、一緒に作業するよ。」

「はい。お願いします。宮部さん。」

声が裏返って、ガチガチまる分かりの返事が返ってきた。

これは緊張を解く方が苦労しそうだ。


「車に荷物積むから一緒に行こう。初めて見る道具あったら言って、説明するから。」

「ありがとうございます。」

「緊張感は大事だけど、緊張しすぎは動きが鈍くなるから、現着までに何とかしような。」

「……はい。」


口で言うのは簡単だけど、どう緊張をほぐしてやろう。俺も悩みながら、積み込みの場所へと向かった。


クリーンの倉庫前に停めた車へ向かうと、積み込みの作業は始まっていた。


「出動の時は2台の車で俺たちは向かうんだけど、この場所で出動する車2台に荷物を積み込むんだ。」

「訓練機材置き場だと思ってたんですけど、訓練も出動の時に使う道具を使ってやってたんですね。」

「そう。班長の信念で『出動で使う物を使ってないと、道具の癖が分からなくて作業効率が落ちる』だから、訓練と出動で道具分けないようにしてるんだよ。」


「さっき、ミーティングでエニグマの属性聞いたよね?」

「……土属性でした。」

「正解!その情報をもとに俺たちは積み込む荷物を決めたり、戦闘後に現地に入れるようにトラックとか重機の手配もする。重機とかを運んでくるのはメンテナンス室の人たちだ。作業は入れ替わりで俺たちが行う。」

「なるほど。」

「土属性のエニグマ相手だと、何を積み込めばいいと思う?」

「……スコップとかですか?」

「それも正解。スコップですくった土を運ぶための一輪車も必要だし、砂みたいに細かいエニグマもいるから、集塵機やほうきとちりとりも必要になってくるんだ。」

「だから、土運ぶ訓練があったんですね。」

「そう。あれ実はめちゃめちゃ実践的訓練なんだよね……。」


「じゃあ、集塵機の積み込みしようか。」

「はい!」

よかった。少し緊張が取れたみたいだ。高木の緊張の源は、初めての出動で何も分からないことでパニックになっていたようだ。車の中で、現場の流れや今回のヒーローたちの話をしてあげれば、案外落ち着くかもしれない。


今回積み込んだ道具は、一般的な物とか、訓練で使ったものばかりだったので、説明の必要はなかった。

出動に備えていろいろ話をしようと思った矢先に、肩にポンポンと優しい衝撃があった。振り向くと待ち構えていた人差し指が頬に食い込んだ。誰だよこんな古典的な遊びを、と思って顔に視線を向けるとそこにあったのは、古賀の顔だった。


「古賀さん!!!?」

「やあ、宮部君今回教育係なんだって!なんだか歳を感じるよ。」

「な、なんでですか?」

「俺の初メインで助けた子供が教育係だよ!年取るわけだよね……。」

「あぁ、そういうことですか。」

「何ですかその話!」

高木が古賀の話に食い付いた。たぶんこれが古賀の狙いだ。


「いや、俺の初メインの時にね、エニグマ討伐してたら、少し離れたところから『がんばれヒーロー』って叫ぶ男の子が2人いてね~、焦った焦った!それの1人が君の教育係でもう1人が僕の弟子ね。」

「えー!めっちゃエモい話じゃないですか!」

「えも?は、よくわかんないけど、初めての時にイレギュラーがあっても何とかなるし、周りが何とかしてくれるから、ゆるーくね。」

そう言い残して古賀は去っていった。

さすがだ。高木の余計な緊張を、きれいさっぱり取り除いてくれた。俺を犠牲にしてね……。


「車の中で話すから、今は勘弁して。昼飯もらいに行こう。」

「はい!」

さっきより一段といい返事を聞きながら、俺は道中でどこまで話すか考えていた。

結局全部話をさせられるが、緊張が取り払えたことをまずは喜ぼう。

現場では緊張を取ってやれる余裕があるか分からないから。

嫌な予感が、胸の奥をかすめた。


次回は 3月 18日(水) 21時更新です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

エモいという言葉を知らない古賀さんw

40代でもエモいくらいわかるだろうツッコミ入れながら書きました。

次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ