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2023年 2月某日 クリーン研修8

クリーン研修編 施設見学(1/2)

「全員そろっているな!」

「「「はい。」」」

宝田の勢いのある声に負けじと、こちらも切れのある返事で返す。


「午前は相葉教官と施設見学に行ってもらう。帰還後、昼食を取り午後の実技実習となる。」

「「「はい。」」」


今日の日程が伝えられ、俺たちは教官の相葉に続いて昨日乗ってきたマイクロバスに乗車した。席順は乗車した順に一人ずつ座った。荷物が無いと、昨日狭いと思ったマイクロバスが広く感じる。


無言のまま、バスは山の中へどんどん進んで行く。既に隣の県に入ったのではないかと思うほどバスは1時間以上山道を走り続けた。


山の景色にも飽き飽きしたころ、仰々しいコンクリートの壁とその上に備え付けられた有刺鉄線が急に姿を現した。

中が見えない鉄の門の前にバスは停車した。


「全員門の前に降りて下さい。」


助手席から振り返る形で俺たちを見渡し相葉が指示を出した。


長時間のバス移動で何か言いたそうな田中の視線を感じたが、目の前の門のオーラに気圧され俺は何も言えずにいた。


門の横に小さいインターフォンが付いていた。相葉はそれを鳴らし相手の応答を待つ。

ガチャっと受話器が上がったような音がしたが、相手が話すことは無い。


「清掃統括本部の相葉です。清掃班研修12名引率してまいりました。」

相葉が話し終わり1~2分間があり、ガチャッと鍵の開く音だけが響いた。


インターフォンの近くには、鉄の門に開いた人が通れるサイズのドアも設置されていた。

相葉はその窪みに手を入れ、ドアを開けた。

俺たちは無言で促されるまま、ドアの中に素早く入り、最後に相葉が中に入ると再度ガチャッと音を立てて鍵がしまった。


門の中にはさらに門があり、そこには守衛がおりドアを開けてくれた。最後に俺がドアを通り抜けると、守衛は軽く会釈してドアに鍵を掛けた。


凄いセキュリティの先に何があるんだろうと、期待と不安が入り混じり、あの田中でさえ言葉を発せずにいた。


俺たちの前には大きなシャッターの付いた体育館2つ分の大きさの建物が5棟並んでいる。その建物が何か俺たちには想像がつかない。ただただ目の前に広がる異様な光景に飲み込まれていた。


「これから建物内に入ります。逸れないようにしてください。」

相葉が静かに言った。そして彼女の社員証を機械にかざしてドアロックを解除した。


建物内はシーンと静まり返っていた。ただただ建物いっぱいに広がるプールのような場所に何かが堆積しているのが見える。灰色のような茶色のような、何とも言い難い色をしたそれを溜めておく場所だと、本能的に理解した。


「ここは貯塵庫ちょじんこ灰や塵を集めておく場所。」

「教官。これ全部エニグマですか?」

相葉が説明を始めた途端、坂下の質問が飛んだ。


「なんでそう思うの?坂下さん。」

質問を質問で返した相葉。優しい口調とは裏腹に目は笑っていなかった。


「人里離れた山の中、厳重な警備体制、研修で来る意味のある施設。そこにあるのはエニグマに関わる物だと考えました。そして貯塵庫。そこに保管してある塵はエニグマだったものではないですか?」

坂下は、真っ直ぐに相葉を見て言った。相葉は短くため息をつき坂下を見た。


「ご明察。私が用意してきた説明半分必要なくなったわ。でも、できれば順序通りに説明したいので、合図があるまでは質問はしないでくれると助かります。」

「申し訳ございませんでした。」

少しショボンとしながら坂下が謝った。


「はい。さっき坂下さんが言ったように、ここにある灰や塵は討伐したエニグマやエニグマ戦闘において発生した残留物になります。もともと大きな塊だった物を、処理専門兵員たちによって、塵や灰にしてもらっています。」

相葉は全員を見ながら話を続ける。


「皆さんの支部にもエニグマ戦闘残留物保管庫がありますが、そこが許容量を超える前に、各地区に作られている貯塵庫へ輸送し保管することになっています。」

相葉は俺たち全員を見てからこう続けた。


「質問のありそうな方々がいるようなので、一旦質問を受け付けます。」

その声を聞いて、山下と近藤の手が上がった。

近藤が名指しされ質問を始めた。


「なぜ、この研修に来るまで貯塵庫の存在を隠しておく必要があるのですか?」

質問を受けた相葉は、山下を見た。

「山下さんも質問の内容は同じでいいかしら?」

山下が頷くと、彼女は再度説明を始めた。


「次につながる良い質問をありがとう。貯塵庫の存在を秘匿にしているかについて、いくつか理由があります。」

「まず、貯塵庫は支部とは完全に違う指揮系統の中にあり、本部の清掃統括本部の集塵課に所属していて、全ての管理を本部で行っています。支部にいる以上関わることが極端に少ないという点があります。」


「もう一つは……。」

相葉が、一呼吸置いた。


「もう一つは――

討伐後エニグマの再利用に関わる施設だからです。」


次回は 2月 24日 21時更新です。

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不穏な感じになってきましたね……。

次回もお楽しみに!

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