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2023年 2月某日 クリーン研修5

クリーン研修編 自己紹介後半です

前半6人の自己紹介が終わり、いよいよ自分の番が迫ってくる。しかもトリだ。

何とも言えない緊張の中で次の発表者の自己紹介を聞いた。


「坂下 和輝と言います。25支部に所属してます。任務についてですが、同行するヒーローの傾向を見ながら、積み込む道具を決めるようになりました。例えば、いつも大きめにエニグマを残すヒーローの時は、裁断する道具を積み込むようにし、逆の場合は集塵機を積むようにしてなるべく荷物を減らせるように最近は努力しています。」


確かにヒーローによって、討伐した後のエニグマのサイズ感は違う。毎回最大火力で爆破してた頃の三条は集塵機が欠かせなかったし、土属性の森田の時は必ず土を運ぶ一輪車が必要になる。そこは班長たちが考えてくれていたが、自分も考えて動けたなと、坂下の話は目から鱗だった。


「中村 美月です。12支部に所属してます。印象に残った任務は、巨大木属性のエニグマを火属性のヒーローが討伐したのですが、3メートルの巨大な炭が立っている状態になってしまいました。下から梯子を繋げて登り、上からチェーンソーで切断した部分を縄で下に降ろす作業を延々とやったことがあります。炭になった木という不安定な足場で作業する危険な任務をやり切り自分の成長を感じました。」


中村の話を聞きゾッとした。ただの木では無く元々エニグマだった炭になった木に登るのも相当勇気がいることだと思った。もしかしたら動き出すかもしれないエニグマに登りチェーンソーを使う、しかも高所で……。俺だとしたら行けるかな?行けと言われたら行くけど、成長のために自らは志願しないだろう。


少しスキップしているような場違いなほど軽い歩き方で、次の発表者が前に出た。


「工藤 葵です。5支部からきました。」

ぶりっこのような甘いしゃべり方が、田中とはまた違った研修とは不釣り合いさを醸し出している。

「印象に残った任務はですね。先発班が出動できずにいきなり出動になった任務があって、しかもヒーローの増員も望めない状況だったんで、クリーンにも対エニグマ用のライフルが配られることになったんです。エニグマ捜索中に私たちの班がエニグマに遭遇して、ライフルを撃って応戦する事態になったんですけど、ヒーローがライフルの音で駆けつけてくれて何とかなった任務がありました。ライフルの撃ち方覚えた方がいいなって思った任務でした。」


工藤の話を聞き、講堂は静まり返った。あまりにも衝撃的な内容だった。

少なくとも、俺は対エニグマ用のライフルを渡されたことは無い。先発班不在の時もヒーロー増援してもらえたし、俺たちクリーンは安全な場所にいることができていた。その場にいたら冷静に対処できていただろうかと疑問に思ってしまう。

それを、こうもあっさりと話してのける工藤は相当な死線を潜り抜けてきたんであろうかと考えさせられた。


何とも言えない空気の中、次の発表者が前に出た。


「佐藤 宗。4支部所属です。印象に残った任務は、金属性のエニグマの回収作業です。その時は予定よりも大きな塊で討伐が終了してしまい、解体して運搬しなければならなかったのですが、持って行ったどの道具も歯が立たないくらい固く、細かくして運搬することができず、山の中でしたがクレーンの出動依頼をし、エニグマを大型トラックに乗せ運搬するしかできなかったことがありました。道具の最高出力等の見直しのきっかけになった任務でした。」


佐藤の発表が終わってしまった。次は鍜治口その次は自分の発表だ。

話す任務の内容は決めたが、皆のようにスラスラ話せるか心配になってきた。

申し訳ないとは思うが、佐藤の話は、正直気もそぞろで聞いていた。隣の鍜治口が席を立つ。緊張でどうにかなりそうだが、鍜治口の話はしっかり聞きたい。うるさい心臓の音に邪魔されながらも鍜治口の話に耳を傾けた。


「鍜治口 蓮です。45支部所属です。印象に残った任務ですが、45支部は地震や噴火に関係する大規模出動が多いため、44支部や46支部と連携出動が多い支部だと思っています。初めて他支部連携した時は、互いに得意とする分野が違い、避難誘導が得意な支部やクリーン活動を始めるのが戦闘中からという班まで様々あり、良いと思ったところは取り入れ、自分たちの班の課題を洗い出すことができるきっかけとなりました。今日集まった方々は、遠くの支部の方ばかりなので、連携する機会があったら是非とも連携させていただき、新たな発見ができたらと思っています。」


他支部との連携。今まで支部でも一度も上がったことの無い話なだけに、自分の発表のことも忘れ聞き入ってしまった。

みんな色んなことをやってきているんだなと、思いつつギクシャクしながらマイクの前に立った。

心臓の音がうるさい。軽く深呼吸をして落ち着いてから、話始める。


「宮部 月陽です。23支部に所属しています。印象に残った任務は、小さく分裂する火属性のエニグマをホタルと勘違いしてしまい子供が捕まえてしまったんです。それを発見し、毒があると言い渡してもらい、それをヒーローに渡した後、その子に蛇の噛み跡を付けて病院へ救急搬送して個人情報等を上司が確認しました。あの時もっといい方法があったのではないかと今でも考える任務でした。」


何とか言い終えて席に戻ろうとすると、田中がキョトンとした顔で俺に質問してきた。


「そのエニグマ触ったから怪我したん?」

「怪我したのはまた別の任務だけど?」

「そっち話さんかい!こちとら何で怪我したんか気になって夜しか寝られへんやん!」

「夜寝れるんだからいいだろ!」


ツッコミを入れた後周りを見渡したら、みんな納得いってなさそうな顔をしている。

印象に残ったのは怪我した任務よりこっちなんだけど……


「みんな気になってるようだし、宮部で最後だからこの際怪我した任務の話もしてくれ!」

楽しそうに笑いながら宝田が言った。

鬼かよ……


「……わかりました。俺が怪我した任務は、庭園が売りの観光公園内で怪我をする事案が発生したので出動しました。エニグマ捜索中にエニグマが蜘蛛の巣のように刃になっているワイヤーを張り巡らせたエリアに後輩とヒーロー2人と入り閉じ込められてしまい、エニグマが体を支えていたワイヤーを一斉に切断する作戦になりました。ヒーローは2人、切るワイヤーは3本。次の攻撃に備える必要があり、ヒーローは1人1本ずつしか切れない。なのでワイヤーカッターを持っていた自分が3本目を切ると名乗り出て、切断。討伐は成功したのですが、切ったワイヤーが暴れて右腕と右太ももを怪我しました。」


「……自分めっちゃ巻き込まれ体質やん。」

「それは自分でも分かってる……。」


少し間があったが、宝田が立ち上がり再度前に出る。


「まあ、そんなわけで宮部はまだ怪我が治りきっていないから実技でも無理はさせないから、無理してそうなところ見かけたら全力で止めてくれ!」


ガハハハッと豪快に笑う宝田を横目に、座学担当の相葉がマイク越しに話し出す。


「今日は長旅だった人もいるので、これで終わります。夕食は19時から、大浴場は17時から21時まで使用できます。3階の階段上がってすぐ右の部屋は談話室になっているので、好きに使ってください。消灯時間というか外出禁止時間は22時近くのコンビニまでは2キロほどあります。最終レポートに今日聞いた任務の話の中で最低1つについて感想を書いてもらうので、それもまとめておくように。以上、解散。」


教官たちが講堂から出た後、俺たちはそれぞれ次の行動に移った。

張りつめていた空気が一気に緩んだ気がした。


次回は 2月 18日 21時更新です。

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次回はまったり仲良しな話になります。

お楽しみに!

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