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2023年 2月某日 クリーン研修

今エピソードから、クリーン研修編に入ります。


俺は研修会場に来ていた。少し前の任務で怪我をしたため、リハビリがてら学んで来いと言われ、予定より少し早めに研修会場へ放り込まれた。


2泊3日のクリーン業務研修は、意外と少人数で行われていた。

全国各地のクリーンがズラッと勢ぞろいするのかと思いきや、定員12名で応募があった支部から1~2人参加することになっている。


俺はギリギリ枠が開いていたため、滑り込みで受講することになった。

参加している他支部の同期は、北から南まで全国各地から集まっていた。


1日目は自己紹介と、これまで請け負った任務で一番印象に残ったものの発表。余った時間で座学。

2日目は、施設見学と実技実習。

3日目は、座学とレポートの作成。

以上が今回の研修の日程。

思っていたよりも座学が多く、少し意外だった。

研修期間内にレポート作成の時間が設けられているのは、常にトレーニングか出動してデスクワークが無い若手にとって、とてもありがたい。


「話せる人がいればいいな……。」

大学時代より筋肉が付いたせいで新調したスーツを着込み、新幹線からの景色を見ながらひとりごとをつぶやいていた。


俺は、友達になるまで時間がかかるタイプだと分かっている。実は結構なコミュ障。

今の職場は2年もいて慣れたおかげで普通に話せているが、初対面だと緊張して自分のことばかり喋ってしまったり、相手の話題についていけず黙ってしまったりする。

そのせいで、1人で行かなければならない研修はとても気が重かったのだ。


新幹線を降り集合場所のバス停まで向かう。

足が徐々に重くなってきた。――怪我の名残か、それとも緊張のせいか。

絶対後者な気がするが、怪我のせいだと思っておこう。

観光客でにぎわう駅の真正面を横切り、バスターミナルの端へ歩いて行く。


「お兄さんも研修の人?」

関西弁で話しかけてきた金髪メッシュの男にギョッとした。

「……そうです。あなたも?」

何とか返事をする。


「せやねん!同じ新幹線やったんやなぁ。」

ニコニコしながら人懐っこく話しかけてくる彼に嫌悪感はなかった。

話せる人が1人でもいて良かったと、心の底から安堵した。


「俺、田中たなか 亮介りょうすけ。」

田中は握手を求める手を出してきた。


「俺は、宮部みやべ 月陽つきひです。よろしく。」

田中と軽く握手をした。

「よろしく~。珍しい名前やね。」

と軽く返す田中と一緒に集合場所の一番端のバス停へ向かう。


集合場所には、数名の参加者が迎えのバスを待っていた。

田中は物怖じせず、参加者の輪の中へ入っていく。


「こんにちは!俺、田中言います。こっちは宮部君、さっきそこで会ったん。」

大きな声でいかにも関西人らしい軽快なノリで全員に話しかけた。

名前を先に言われ、俺もつられて話しかけた。


「宮部 月陽です。よろしく。」

会釈をしながら挨拶をした。


「僕は、山下やました 大志たいしよろしく。」

黒髪をオールバックに固めた、いかにも真面目そうな山下が挨拶をした。


「私は、近藤こんどう 真理まり。3支部から来ました。よろしくね。」

長めの前髪をセンター分けにして、暗めの茶髪を後ろで束ねている近藤が、笑顔で山下に続いた。


「俺は、坂下さかした 和輝かずき。25支部に在籍してます。よろしく。」

黒い太縁の眼鏡をかけた短髪の坂下は、目を合わせずあいさつした。

同じコミュ障の匂いを確かに感じる。


「飛行機だったり東京よりも北からくる人たちは、一時間近く前に東京駅をバスで出発しているはずだから、あと20~30分でバスが来るんじゃないかな?」

時計を見ながら山下は言った。相当しっかり者みたいだ、自分以外の工程も覚えるなんて、俺はまず思いつかない。自分のことで精一杯だ。


「自分凄いなぁ、他の人の予定まで覚えてくるなんて感心してしまうわ。」

俺と同じ感想を持った田中が、山下を褒める。こういう所で陽キャと陰キャが分かれる気がする。

「そんな事ないよ、トラブルが起こった時に時間でいち早く気が付けるように、記憶したまでさ。」

山下も謙遜しながらも、しっかりしていることがまるわかりだった。


「ほなら、山下君のニックネームは“委員長”やな!」

隣で、黙って聞いてた近藤が吹き出した。

「確かに“委員長”ぽいね。」

俺も思わず同意してしまった。

近藤は、ツボに入ったのか肩を震わせている。


「学生時代にクラス委員長はやった事はあるけど、初対面で言われたのは初めてかな。」

少し恥ずかしそうに山下が答える。

「……やっぱり、やってたんだ。」

ぼそりと、坂下がつぶやく。


「よっしゃ!委員長。皆のニックネームも考えよか!」

調子に乗った田中が、山下に肩を組み、要らぬ提案をしてきた。


急に真顔になった近藤が、

「それはやめて。」

ピシャリとひとこと言った。


「なんでや、副委員長~」

既にニックネームを考えていたのか、近藤を副委員長と呼びながらへたり込む田中。

「僕は良いが、相手が快く思わないニックネームはよくないぞ、田中君。」

流石委員長といった感じで田中を諭す山下。


「どう思う?“ツッキー”。」

田中はこっちを見て言っている、まさか――

「ツッキーって俺のこと?」

「ほかに誰がおんねん。」

「小学生並みのネーミングセンス!」

「いうなや!」


急にコントに巻き込まれて、ついうっかり突っ込んでしまった。関西人恐るべし。

またも近藤のツボを突いたらしく、彼女は肩を震わせていた。


「俺は“田中のりょーちゃん”か、“りょーすけ”でええで!」

「“田中のりょーちゃん”って名前より長くなってるし!」

「ツッキー、俺ら良いコンビになれるんちゃう?」

「巻き込まないで!」

またもドッと沸く俺たちの元に、一台のマイクロバスがやってきた。


次回 2月 10日 21時更新。

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クリーン研修編始まりました!

次回からも新キャラいっぱい出てきます。

お楽しみに!

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