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20/21

2023年 1月 某日 正月ボケ

2023年1月某日編(1/3)

3話連続エピソードになります。

満開に咲き誇る新年の花畑に無数に光る細く長い線。

触れるものを鋭利に裂くそれは、まるで花に隠れる棘のようだった――


休日の緊急出動当番日に、怯えながら年末年始を過ごすのにも慣れてしまった。今年の正月は、そんな年だった。

年始の非番確定日に父親に付き合ってもらい、近隣地域の酒蔵の日本酒の飲み比べをする余裕までできた。

美味しい日本酒を見つけたから、また三条や先輩たちに教えよう。

正月ボケ丸出しで意気揚々と出勤した朝のことだった。


「あけおめ、宮部さん!」

52班の後輩の佐々木が軽い口調で新年のあいさつをしてきた。

「あけおめ。今年もよろしく。」

佐々木は、ギクリとして向き直り、軽くお辞儀をして今度は丁寧に言う。

「今年もよろしくお願いします。……それより見ました?宮部さん」

「っえ?何を?」

「先発班の車さっき戻って来たんですよ。」

「っえ、新年早々出動の可能性?」

「大ありです!」


そんな会話をしながら、52班のミーティング場所へ向かった。

ミーティングを行う部屋には班員が集まり出していた。

誰かが部屋に入るたび、新年のあいさつが交わされる。その繰り返しだった。

班長の村越と副班長の阿部を残し、全員ミーティングルームに集まった。この2人が遅く来るのは、大抵出動の時か、何か問題が起きた時だ。いよいよ佐々木の言っていた新年早々出動が濃厚になってきた。


ミーティング開始時間を5分過ぎたころ、村越と阿部がミーティングルームに入ってきた。

「遅くなってすまない。みんな、明けましておめでとう。今年もよろしくお願いします。」

村越のあいさつに続き阿部もあいさつして、ミーティングが開始された。


「察しが付いていると思うが、今日の夜出動がかかった。今回は現場が遠いから21時半出発となる。」

やっぱり出動か、と思いながら今日の流れを聞く。午前中は軽いトレーニング、午後は出動準備になり15時から休憩に入る。トレーニングの間に正月ボケを直さなければ……。


今日のトレーニングはサーキットと、外周・筋トレ・柔軟だ。正月ボケを直すためには、少し早めにギアを入れなければならない。そう思いながら、柔軟とサーキットを終えた所に阿部がやってきた。


「西城、宮部、今からメンテナンス室に行って、お願いしてあるもの取ってきてくれ。」

「「はい。」」

メンテナンス室は、俺たちが使う特殊な道具の管理と整備を行う部署だ。

今日使うことになるであろう道具を取りに行く途中、西城が話しかけてきた。


「2時間以上かかる場所って、ほぼ県外だよね。」

「他支部の方が近いとかあり得そうですよね。」

俺も、自分たちの支部から車で2時間かかる場所を思い浮かべ、東西北どこへ向かっても県境に近いため、行ったこともない他支部に任せたくなる。


「他支部に行ったことあったけ?」

驚いたように西城が言った。

「無いです。今年が研修初年度です。」

クリーンも昇格するための研修や講習会がある。

25歳になる今年が初めての研修・講習会の歳になる。研修会は、本部・本部に近い支部で行われるため、そこで初めて他支部の場所を知ることになるのだ。


「座学で眠たくならない様に気を付けなよ。」

「西城さんは眠たくなったんですね。」

「寝なかったから100点でしょ。」


そんな話をしていると、メンテナンス室に到着した。

2時間もある移動中に、詳しく話を聞こうと思いながら、ドアをノックする。

中から灰色の作業着を着た男が出てきた。すかさず西城が言う。


「お疲れ様です。本日道具を依頼した52班です。受け取りに伺いました。」

普段班長たちにも、崩した言葉で話している西城を見慣れてるせいで、ちゃんと敬語も話せるんだと感心してしまった。俺も敬語使ったら、同じように思われるんだろうなと思いながら、男の様子を窺う。


「あー、はい。52班ね。この箱持って行って。」

気だるそうに返答しながら、箱と用紙にハンコを打っている。

受け渡しの確認印のようだ。こういう所は誰が渡したか、確認したかのチェックがしっかりされている。ハンコの名前は高井たかいとなっていた。

高井は俺たちに箱を渡すと、何の説明もないままドアを閉めた。何を頼まれたのか、何を今持っているのか分からないまま俺たちは、おつかいを頼んだ阿部がいる訓練棟の外まで戻った。


「おかえり。」

笑顔で迎えてくれた阿部に、西城が開口一番に質問する。

「阿部さん、これなんですか?」

阿部はキョトンとしている。

「あれ、言ってなかった?ワイヤーカッターだよ。」

「「ワイヤーカッター?」」

思わず西城と声がそろった。

「詳しくは出動ミーティングで分かるよ。」

そう言って、阿部はワイヤーカッターを車へ積むよう指示を出し行ってしまった。

ワイヤーを切るハサミみたいな物だよな……。

どんなエニグマだよと思いながら、訓練に合流する。

概要知ってるなら、先に教えてくれてもいいのにと多少むくれながら訓練を続行する。


今日に限って、待ちに待ったミーティングの時間になった。ワイヤーカッターが必要なエニグマの情報を、しっかり聞いてやろうと集合場所に急いだ。


今日のメインは三条のようだ、真逆の属性の和泉と話をしている。

透過の法月が来たので、ミーティングが開始された。


「本日メインを務めます、三条です。先発班から連絡があったエニグマについて説明します。」

一呼吸おいて話を再開する。


「今回のエニグマは、金属性と思われます。木や花に無数に細くて鋭いワイヤーのような物を張り巡らせ、観光客に危害をくわえているそうです。見えにくいワイヤーを見やすくするため、和泉さんにサブをお願いしています。」


なるほど、それでワイヤーカッターが必要なわけね。妙に納得して話を聞いた。


「現場へはH市H湖周辺で、遠方となるため出発は21時半になります。」

一同返事をして解散になるかと思いきや、三条の目が泳いでいる。

三条は短いため息をつき、言葉を続けた。

「兵員長より、本日の出動から――

技の発動時には、技名を口にするよう指示が出ています。」


ヒーローたちの背中が少し小さくなった気がした。


次回は 2月 4日 21時更新です。

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少し間が空いてしまいましたが、ご覧いただきありがとうございました。

次回から、やっとヒーローらしい技名出てきます!

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