2022年 12月某日 地獄のネーミング会議
2022年12月某日編(2/2)
前回からの連続エピソードです。
案はある。それを叫んで格好いいとは言わない。
とにかく、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる。数を出していく……
これが地獄のネーミング会議だ――
三条の部屋で、酒とつまみを囲みながら、彼の技名を決めるネーミング会議を始めた。
「で、どんな感じの技名考えればいいの?」
俺は三条の、具体的な技の仕様を知らない。何か手を出してから爆発させていた気がする。
「手の中で練った炎を前へ押し出して爆発させる感じかな……。」
三条が手を前で軽くジェスチャーして教えてくれた。
「なるほど。で、何か案は無いの?」
「絶対に笑わない?」
「笑わない……。」
笑わないと言ったが、あまりにもだったらどうしようと身構える。
「ファイヤーパンチ……。」
笑わない。笑えない。引くほどダサい。
「お前、アニメとか漫画見ないの?」
思わず問いかけてしまう。今時、子供だってもう少しマシな技名言ってくるだろう。
「あんまり見ないかな……。」
「だろうな……ゲームもレーシングゲームだけだしな……。」
なんとなく俺に相談してきた理由が分かった。
恥ずかしいもあるだろうけど、単純に思いつかないんだろう。
「古賀さんが、オリジナルの名前って言ってたし、アニメやゲームの技そのままはダメみたい。」
「そこは、縛るのかよ!」
俺は頭を掻きむしった。何せ俺にはネーミングセンスが存在しない。
たぶん胎児時代に母親の腹の中に忘れてきたんだと思う。
「月陽は何かないの?」
「……バーニングパンチ。」
「俺のと変わらなくない?」
「だ――!俺はネーミングセンス無いの!亀に餅太郎って名前つけるくらいの人なの!」
俺は相談相手のミスを指摘する。
「……俺、ザリガニの名前ピー助。」
三条の言葉に、俺たちは固い握手をした。
俺を相談相手に選んだのは最大のミスだ。だが、そのおかげで俺たちに新たな絆が生まれた。
とは言え、このセンス皆無コンビから生まれる技名なんてレベルが知れている。
「偉紀、“バーニングストレート”とかは?」
三条は首を横に振る。
「“パンチ・オブ・ファイア”とかどう?月陽。」
「それ、言ってて力入るか?」
「ごめん、入らない。」
「“マグマ拳”とかは力入らない?」
「うん。力入らないよ、月陽。」
「ダメかー……。」
「“火属性パンチ”は?ゴロは良いから力は入るよ!」
「偉紀、それ言ってて恥ずかしくなるヤツだろ?」
「っう……。」
ダメだ。埒が明かない。誰かこの地獄に召喚するか?
いや、リスクがデカすぎる。だけど俺たちのセンスではここまでが限界だ。
他に頼れるもの……
「……AIに聞こう。」
俺は閃いたまま口にした。
俺たちでは限界。そして誰も呼ぶことができない……
なら最近話題の文明の力を、味方につけてしまえばいいんだ。
「月陽、頭良すぎない?」
「だろ?」
だいぶアルコールが効き始めている。
冷静な判断ができる内に決めて、早く日本酒を開けたい。
その一心でパソコンを開いた。
「何て打てばいい? 月陽」
「炎のパンチみたいな技名考えてとかは?」
俺たちはノートパソコンの前に頭を寄せて結果を待った。
すぐに出てくる出てくる。
「“紅蓮衝”(ぐれんしょう)とかカッコよくない?偉紀!」
「まって、この“焔撃”(えんげき)も言いやすくていいね!」
横文字ばかり考えていたけど、漢字も悪くない。てか、カッコいい。
「“インフェルノ・ブロウ”とか“ブレイズ・ストライク”も言いやすくてかっこいいね!」
横文字もなかなか良いのを出してくれる。
科学の力ってスゲえ。
素直に感嘆しつつ、候補を絞ることになった。
「うーん。溜めが短いパンチ技の時は“焔撃”で、溜めが長い時は……。」
言葉を出さずに、技を出すジェスチャーをする。
「うん。長さ的に“インフェルノ・ブロウ”にしようかな!」
「偉紀が納得してんなら、いいんじゃねえ?」
こうして、科学の力によって俺たちは地獄から解放された。
「なあ、偉紀。日本酒開けない?」
「いいね、俺冷凍の焼き鳥チンしてくる。」
後日、みんなの前で披露させられることも知らずに、呑気にお酒を飲み進めた。
次回は 2月 2日 21時に更新します。
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偶数日更新なので、次回は少し間が空きます。
次回20エピソードから2023年の話に突入します!
いつ時代に追いつくのやら……




