2022年 12月某日 ヒーローとして
2022年12月某日編(1/2)
連続エピソードになります。
今日は宅呑みしない?その誘いは仕事の話をしたいということだ。
俺たちの仕事は、人に知られてはいけない仕事。外で話すわけにはいかないのだ。
ただ、今日の宅呑みは、地獄の相談会になる。そんな気がする――
今日の訓練が終わり訓練棟を出ると、そこに三条が待っていた。
「お疲れ。今日家で飲まない?」
彼から宅呑みに誘うのは珍しい。初任務の興奮冷めやらぬ週末に誘われて以来じゃないか?
「いいけど、どうした?」
気になった俺は探りを入れる。
「ちょっとね……。」
三条は話を濁すばかりだった。これは、いい話じゃなさそうだな。
「OK!じゃあ、飲み物俺が買ってくから、つまみはよろしく!」
ここでは話しづらい事もあるだろうし、深く聞くのは飲み始めてからでいいや。
それ以上は聞かずに、それだけで会話を打ち切り、一旦自宅へと帰る。
訓練で汗臭い体をシャワーできれいにしてから、最寄りのスーパーへビールとチューハイを買いに行く。今日は話がちゃんと聞けるように度数弱めのチューハイだ。
実家からもらった日本酒の四合瓶も持っていく。
しっかり話せたら注いでやろう。なんて思いつつ、これは俺が飲みたいだけ。
リュックにアルコールをしこたま詰め込み、歩いて三条の自宅へと向かう。
三条の自宅まで、徒歩20分くらいの距離だ。訓練の外周を荷物持って走っている俺らにとっては、軽い散歩程度の距離だ。
訓練の荷物より好きな物が入ってる方が心なしか軽く感じる。
いったいどんな話だろう。そんなことを考えながら、三条の家へと歩いた。
家に着くころには、日も沈んでいて街灯が点いていた。
一階にある部屋のチャイムを鳴らす。
「はーい。上がってー。」
部屋着の三条が現れた。まあ俺も、上着を脱げばほぼ部屋着みたいなものだけど。
「お邪魔します。てか、いい匂いだけど何作ってんの?」
鼻をくすぐる香ばしい香りに誘われて、居間へと入っていった。
「燻製の鴨が売ってたから、皮の方だけ火を入れてみた。」
「めっちゃオシャレなことしてるじゃん。」
「残りはレンジが頑張るよ。なんなら月陽が作ってくれてもいいけどね。」
確かに、宅呑みのほとんどは愚痴を聞いてもらうため、俺の家で飲んでいる。なので、つまみを作る腕前だけは上がってきていた。
「……考えとく。」
日本酒飲んで、気分良くなったら作り出しそうだなと、自分でも思った。
居間の座卓に鴨の他にイカを炒めた物とピザが乗っていた。
俺はリュックの中身を取り出し、どれにするか三条に聞いた。
「今日はチューハイにしようかな。」
やはり、話をしっかりしたいんだろう。俺も同じチューハイを手に取り、残りを冷蔵庫へ入れた。
「月陽が日本酒なんて珍しいね。」
四合瓶を見て三条が言った。
「今年の正月に、うまいうまいって飲んでたら、親父が買ってきてくれた。たぶん偉紀も好きだと思うよ。」
「やった!楽しみ。」
「「お疲れ様~」」
座卓の料理が冷める前に乾杯をし、飲み始めた。
「で、今日はどうした?」
俺が単刀直入に話しを振った。
「今日、兵員会議にオンラインで参加したんだけどさ。」
「古賀さんが、全国のヒーローに向けて“必殺技名を付けて叫べ”って言い始めて……。」
「はい?」
俺の頭の上には?が乱立している。
「“発動中は、声も一般人には聞こえないし、叫んだ方が力出るでしょ。”って。」
思いつめた顔で、三条は話している。
スポーツ選手も声を出して力を出すこともあるし、一理あるのではと思う。
「それの何がダメなのさ?」
三条は押し黙った。しばらく沈黙が続く。
「……恥ずかしい。」
「はい?」
「だから、恥ずかしいじゃん!自分で決めた技名叫ぶのって!」
冷静に考えると、やらせようとしていることが中二病チックだとも思う。
「……確かに。でも、それで力入れやすくなるんだろう?」
「じゃあ月陽は“バキュームなんちゃら”って言いながら走れる?」
「うわ、はずい。」
「でしょ!」
考えただけで背筋が凍った。大の大人が寒すぎる……。
「しかも、今週中に技名の案考えて、来週支部内で発表なんだぜ!」
「ドンマイしか出てこない……。」
少し落ち着いた三条が、テーブルの一点だけ見つめたまま俺に言う。
「月陽、考えるの手伝って。」
「はあ?」
今度は真っ直ぐ俺を見て
「月陽が考えたやつなら、滑っても月陽が考えたやつだしって、恥ずかしくなくなるから。」
「なお悪いは!」
と、いいつつ一緒に考えるのが幼馴染の性ですけどね。
さあ、ここから地獄のネーミング会議が始まった。
次回は 1月 30日 21時更新です。
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今回&次回はギャグ?ほのぼの?回なので、ごゆるりと読んでください。




