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2022年10月某日 不一致

2022年10月某日編(2/2)

前回から続きになります。

視界に現れた一点の眩い光と共に、一瞬で緊張が走る。

今目の前で、エニグマ被害が起ころうとしている。

人目ばかり気にしていられない。俺は袖口に付いた無線に叫んでいた。

――民家に光が照射されています。ヒーロー至急対応を――



すぐに俺の応答に気付いた和泉。川の水で壁を作り光の照射を鈍らせた。そのスピードの速さと勢いは凄まじく、水を一気に引き上げ、家を覆えるほどの高さの壁にして見せた。

森田とクリーンが、あわてて光の元を探す。対岸側の山の木々の隙間からだったが正確な位置までは俺も分からなかった。今は水の壁で遮られ、俺から対岸は見えない。

家に当たる光を見つめながら、イヤホンから発見の知らせが届くのを待った。


「なかなか定まらないから、私も川の方へ降りて捜索手伝います。」

聞こえてきたのは、三上の声だった。可視で動く俺たちには、今は水の壁しか見えていない。しかし、いつも光を操る能力を駆使している三上なら、原因を突き止められるのではと、思ったに違いない。

光が照射された部分は、水の壁のお陰で光が弱まり、すぐさま火事につながることはなさそうだ。


「あった。」

静まり返っていたその時、耳元で阿部の声が鳴り響いた。


「前回の火事現場から、真っ直ぐ見た対岸側、中腹辺りにある枯れ始めた木の斜め上だ。」

皆に伝わるように丁寧に説明された。俺の位置からは確認することはできない。


「了解しました。壁を保ったまま確認に向かいます。」

和泉は冷静に答えるが、少し呼吸が荒い。

やはり壁の維持に、相当な力を使っているのだろう。

しかし、水の壁が無くなれば、向田の家の火事のリスクが跳ね上がってしまう。

水の壁が先ほどよりも揺れている……。

俺は祈るようにエニグマ発見の知らせを待った。


イヤホンからガサガサ音を立てた後から和泉の声が続く。


「エニグマ発見……」


「……水属性だ。」


出動した全員が息を呑んだ。相性が悪い……。

エニグマが火属性と言われ編成されたチームだったからだ。

緊張と驚きで、手のひらにジットリした汗が出てきた。

それもそうだ、同属性の和泉では、あまり戦闘の有利は期待できない。森田にメインをチェンジすることになる。だが、すぐにメインチェンジの声は流れてこない。森田も戸惑っているのだろうか。


「森田さん大丈夫?」

イヤホンから三上の声がする。すると大きく息を吐く音が聞こえ、いつもより少し低い森田の声が聞こえた。


「大丈夫です。お騒がせしました。メインチェンジで森田が対応します。」

俺は阿部たちがいる田んぼへと戻っていた。ここからならエニグマを目視することができる。

水をレンズ状にしたのか、一点の光を執拗に家に向けている。だが、水の壁で家に当たっていないことに気付いたのか、水を操っている和泉の体に光が集中し始めた。


「私に当てて切れていれば対応は楽になるので、森田さん思いっきりお願いします。」

和泉は森田に言った。


「ありがとう、和泉さん。ちょっと試したいことがあって、少しだけ待っててね。」


森田は深呼吸をし、両手を使っておでこの前で軽く輪を作った。

その輪の中心にエニグマを捉えると、目を閉じる。

そして、思い切り力を込めた。

顔が赤く染まる頃、エニグマを覆うように、土の立方体が宙に浮かび、形を成した。

彼女は目をカッと開き、エニグマを閉じ込めた立方体を見た。


「……さあ、お仕置きの時間です。」


勢いよく両手の指を指の間に入れ、まるで教会で祈るように手を握った。

すると宙に浮いていた土の塊は、ブルブル震えてから落下した。


「……終わったの?」

恐る恐る、和泉が森田に話しかけた。


「はい。たぶん大丈夫です。あの土の箱の中でトゲを無数に出してエニグマを突いたので……。」


森田以外の全員が固まる。

なに、その土で作った中世ヨーロッパの拷問器具みたいな攻撃方法……。


「えっぐ……。」

みんなの心の声を和泉が代弁する。よくぞ言ってくれた。

「この間の、戦闘の時に古賀さんから教えていただいたものを、自分なりにアレンジしてみました!」


いや、アレンジ怖いよ!!?

口に出ないように慌てて手で覆った。


うん。森田は一番怒らせてはいけない気がする。当の本人は褒めてもらってると思いニコニコしている。俺たち全員置いてきぼりだ。


「……さ、クリーン作業をするか。透過組はエニグマと土の箱の回収をしてくれ。」

何とか村越が会話を進めてくれ、恐怖の時間は過ぎ去った。

可視組が嫌だとは言ったが、あの極悪箱の回収に行かなくていい。それだけで、素直に嬉しかった。


「俺たちも後始末の為にあの山登るぞ。」

阿部が言った。前言撤回。登山道の無い山登りは嫌だ。でもここは“はい”としか言えない。

お仕事だからな……。


川を渡り、山を登る。獣道を探しながら、さっきエニグマがいた中腹辺りを目指す。


「はい、宮部はこれ腰につけてね。」

七尾に言われ受け取ったのは、紐の付いた虫眼鏡。頭の上に?を浮かべていると。

「それに傷を付けて、カラスが木に掛けてた。これが火事の原因ってことにすればいいだろ?」

「七尾さん頭いいですね。」

「まあね!……ま、神崎さんが言ってたことなんだけどね。」

「じゃあ頭いいのは神崎さんで!」


上の方から“早く行くぞ”と声を掛けられる。

俺は虫眼鏡付の紐を腰につけ山を登った。

特にやることもなく登ったり下りたりしたから、疲労がたまってきていた。

川に降りる前に虫眼鏡の紐を解き、ポケットにしまう。


川を渡り切って、公民館に戻る道に向田が立っていた。


「おう、兄ちゃん。原因わかったか?」

向田は俺に話しかけてきた。

「わかりました!……これでした。」

ポケットから虫眼鏡をだした。

「なんだい、これ?」

「向田さんがチカチカするって言っていたのでそれも含めて捜索したら、対岸の山にこれが引っかかっていて……位置的にもこれが犯人ですね。」


向田は、俺と虫眼鏡を交互に見てから笑った。

「人が火を付けたじゃなくて、よかったよかった!」

「兄ちゃんたちありがとうな!」

俺たちが見えなくなるまで見送ってくれる向田の優しさに心が癒された。


公民館の職員にも同じ説明をし、俺たちは帰路に着くため、俺は運転席に乗り込んだ。

ヘトヘトに疲れているのに、俺は週末のドライブに思いを馳せながら、支部へ帰る運転を楽しんでいた。

疲れた体に鞭打って、自転車で自宅まで帰らなければならないことも忘れて……


次回 1月 28日 21時更新

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次回は少し息抜きエピソード。

お楽しみに!

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