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2022年9月下旬 恐怖と成長

2022年9月下旬編 (4/4)

4話連続エピソードの完結エピソードになります。

2mはある巨大なスライムのような透明なエニグマ。その姿に背筋が凍る。

透明な体の真ん中部分に青い何かが見えている。ここがエニグマのコアなのだろうか?

4人のヒーローと巨大なエニグマとの戦いの火蓋が切られた――


水を滴らせながらズズズっと触手を伸ばすエニグマ。古賀の出した木の枝がまだ気になっている様子だ。

エニグマから滴る水に触れた植物は、ジュワッと音を立てて枯れていく。あの水……普通の水じゃないのか?


「偉紀!エニグマに最大火力ぶつけて!」

古賀の指示が飛ぶ。

「はいっ!」

後方支援をしていた三条が前に走り出しエニグマへ向けて炎を放つ。

炎をエニグマに向けたまま、徐々に距離を詰めていく。

エニグマの周りに蒸気が立ち込める。喉の奥が焼けるように痛んだ。ただ蒸気にあたった木の葉は先の方が茶色く変色していた。温度のせいか、エニグマの特性なのか……


「偉紀一旦引いて、森田土で囲めるか?」

古賀が状況を見て、三条から森田へと攻撃の手を変えた。

「やってみます!」

三条の後ろから、森田が出ていく。彼女は地面に両手を着き、エニグマの周りを土で囲った。

その土に古賀は木を生やし、水分を抜く作戦に出た。


だが、水分を吸収した木はすぐに枯れ倒れていくのだ。

古賀の口から珍しく舌打ちが漏れた。

「森田!そのまま、握り潰してくれ!」

古賀の指示通り森田はエニグマを圧縮していく。


「なんで!!」

森田の悲鳴に似た声が聞こえた。

見ると、土の隙間から漏れ出したエニグマの水が周りの草をどんどん枯らしていくではないか。上からニュルリと出てきたエニグマに俺は恐怖で足がすくんだ。

水のエニグマに相性の良い土属性・木属性ヒーローがまるで歯が立たないなんて……


「水で動きを止めて見ます。」

森田の横に和泉が歩み出て川の水を縄状にしてエニグマを拘束した。


「ナイス和泉!」

古賀は先端を尖らせた木の枝を伸ばしエニグマのコアを突こうとした。

だがコアに到達する前に枯れ、エニグマの体の中で粉々になっていった。


「森田、さっきの俺と同じ様にできるか?」

古賀は、そっと森田に言った。

「私、囲って握り潰すしかやった事なくて……」

明らかに森田の目は泳いでいた。


「大丈夫、できるよ。」

優しく、でもしっかり森田の目を見て古賀は言った。

おずおずと森田も頷いた。


「自分の手から出た力の槍の柄がどんどんエニグマに向かって伸びてくイメージで。」

エニグマを拘束している時間は限られているが、古賀は慌てず確実に、技のイメージを森田へ伝えていく。


すると、先ほど崩壊した土の塊から直径15cmほどの土の槍が出現した。

それはゆっくりだが確実にコアに向かって伸びていく。


エニグマも焦りだし、拘束から逃れようと自分の体液をまき散らしながら暴れる。

コアのすぐ傍まで土の槍は進んできた。


コアが脈打つ


「今だ!突け!!」

「はい!!」

古賀の声に後押しされ、急に速度を上げた土の槍はコアを貫通した。


ビシャン


スライムを形作っていた水は、ただの水へと戻り土の槍の先にはコアだけが残っていた。


さあ、ここからが俺たちクリーンの仕事だ。今回は土の回収と草木の原状回復、足元の水たまりを元に戻すことだ。

「この土を使って、水たまりを回復しよう。阿部・神崎・宮部・成岡、土木班を頼む。」

「はい!」

村越の言葉でクリーン作業が開始された。

スコップを使い手作業で土を水たまりに入れていく。それだけで、土の後処理にも影響が無くなる。一石二鳥というわけだ。いつもみたいに機械には頼れない地味な作業。

でも命の心配が無くなっただけで心は軽かった。


1時間も作業をすると、水たまりはぬかるみに変わっていた。これ以上は入れる土が無い。

「宮部、三条君に水の蒸発頼んでもらっても良いかな?」

水たまりの現場指揮を執っていた阿部が、俺に言う。

「はい。依頼してきます。」

阿部にそう言い残し、俺は三条を探しに行った。


三条は格子の土をどかし終えたところだった。足の裏に炎を集め飛ぶことができる、三条にしか依頼することのできない作業。

「作業終わってすぐに悪い。こっちのぬかるみの水分蒸発してもらってもいい?」

スコップをまだ手に持ったままの三条に声を掛けた。

「大丈夫だよ。今回俺あんまり役に立ててなかったし……」

視線を下げて三条は言った。

「いや、そもそも水属性じゃなかった時の要因だろ?それでここまでできれば良くない?」

「ありがとう。」

あまり慰めになっては無いだろうが、変に持ち上げるのもおかしな話だ。俺たちは無言のまま、水たまりがあった場所へと戻った。


三条の炎でぬかるみが消え、古賀の力で雑草を生やす。透過を担当していた法月の影を吸い取る方法で植物を可視化できるようにし、今日のクリーン作業は終わりを迎えた。


断水の元になったエニグマは倒せたが、エニグマのせいで詰まった流木や土砂を俺たちが片付ける事は許されない。エニグマを無かった事にするのが俺たちの仕事。それ以上はやってはいけない。少しやりきれない思いと共に、今朝出会ったおじいさんの顔が横切った。


気持ちを切り替えるように、車内の会話に加わる。帰りも古賀の話題で持ちきりの52班の車内の居心地の良さに安堵し、気持ちの良い眠気が押し寄せてきた。


次回は 1月 24日 21時 更新。

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次回も特殊な状況のお話になります。

よろしくお願いします。

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