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4話 Rewrite Protoco

ご覧いただきありがとうございます。作者です。


第4話では、物語の空気に少しずつ変化が訪れはじめます。これまでどこか無邪気だったましろと陽菜の旅路に、静かに影が差し込むような…そんな幕開けです。

この世界がただの冒険舞台ではなく、「何か」を抱えていることを、読者の方にも少し感じ取っていただければ幸いです。


ましろの見る景色、陽菜の感じ取る違和感――どれも断片的ではありますが、今後の展開の伏線として、意識的に配置してみました。


どうぞ、二人と一緒に、この世界の奥深くへ。

光の渦の中を抜けたその先は、戦場でもロビーでもない、不思議な空間だった。


床はガラスのように透き通り、上も下も、星空のような光が漂っている。まるで、ゲームの世界じゃなく“宇宙そのもの”に浮かんでいるかのようだった。


 


「うわ……どこ、ここ……?」


ましろがキョロキョロと辺りを見渡す。


隣には、しっかりと陽菜の姿。強制転送なのにふたり一緒なのは、どうやら《ペア申請中》の状態だったかららしい。


「……管理局の、特別インスタンス。説明読んだことある。規約違反者とか、異常行動したプレイヤーをここに呼ぶらしい」


「うわ、聞くだけで胃が痛い……」


陽菜の言葉にましろの顔が真っ青になる。


 


すると、前方に突如、白い人影が現れた。


それは人のような姿だが、顔も声も曖昧な、デジタルで生成された“管理者AI”だった。


 


「プレイヤー《ましろ》、並びに《陽菜》。この度は、Rewrite Hearts Onlineの特別監視システムに抵触した行動を確認しました」


 


ましろは思わず後ずさる。


「ま、待って待って! 私、悪気はなくて、陽菜を守ろうとしただけで――!」


「確認されている行動:対象プレイヤー《ましろ》が、ゲームシステムの“物理演算処理”および“戦闘シーケンス”に対し、《Rewrite》権限による書き換えを実行。結果として、敵プレイヤーの攻撃スクリプトを一時停止状態へ変更」


 


「……え、なんか専門用語いっぱい出てきたけど……私、そんなにすごいことしたの……?」


「ていうか、それ、普通にバグ利用とかよりやばいやつじゃない?」


陽菜がぽつりとつぶやく。


 


ましろの目の前に、またあの黒いキューブが浮かび上がる。今は静かに点滅しながら、まるで呼吸しているかのように光を発していた。


 


「……このキューブ、元からゲームにあったものじゃないの?」


「正確には……この世界の“プロトタイプ”の段階で一度だけ試験導入された、管理者用ユニット」


 


管理者AIが言った。


「しかし正式リリース時には、その存在は完全に削除されたはずでした。ですが現在、あなたのアカウントにだけ……《Rewrite Unit 00》が紐づけられている」


「……つまり、私だけが……?」


「そうです。あなたは本来、存在しないはずのユニットを使用しています」


 


沈黙が落ちる。陽菜でさえ、口をつぐんでいた。


「……あの、つまり私は……このゲームのバグみたいな存在ってこと?」


「バグではありません。《Rewrite Unit》は、“想定されなかった成功例”です」


 


その言葉に、ましろの目がわずかに揺れる。


「つまり……この能力、使っていいの? それとも、消されるとか……?」


管理者AIはしばし沈黙した後、静かに告げた。


 


「――選択肢は、あなたに委ねられています」


 


ましろは目を見開いた。


「え……選べるの……?」


 


「この力を保持したまま、通常のプレイヤーとして活動を続けることはできます。ただし……今後、あなたの行動がゲーム構造そのものに影響を与える可能性があると判断された場合、改めて“正式な管理下”に置かれることになるでしょう」


 


「うわああああ……なんか面倒くさい!! 自由だけど自由じゃない感じ……!」


「でもさ、それってつまり、“最強の能力を保持したまま”続けられるってことよね?」


陽菜が真剣な表情でましろを見る。


「ましろ。あんたがそれを持ってるなら……今まで以上に、頼りにするから。怖がってばっかじゃなくて、誇っていい」


「……陽菜ぁ……!」


ぽろっと涙が出そうになるのをこらえて、ましろは小さくうなずいた。


「うん……やってみる。私、Rewriteの力で、陽菜と一緒に、もっと上まで行く……!」


 


その瞬間、画面が光に包まれ、ふたりの身体がふたたび転送され始める。


 


「ご武運を、《Rewrite Unit 00》の所持者……そして“リライト・ハーツ”のふたりへ」


 


響く声とともに、空間は崩れ――ふたりは、現実の戦場へと帰っていく。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。


今回の話は、書き手としても少し挑戦でした。ましろの力――“キューブ”が持つ無限性と、それに惹かれていく世界との関わりを、ほんのわずかに滲ませたつもりです。

そしてそれ以上に、陽菜というキャラクターの「人間らしさ」、彼女がただの剣士ではないことを、描けたのではないかと思っています。


Rewrite Hearts Onlineという物語は、単なるバトルや冒険だけでなく、人と人との繋がりや、信頼のかたちもテーマのひとつです。今後、少しずつですが、その深層にも触れていけたらと思っています。


次回もどうぞ、よろしくお願いいたします。

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