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01.身に覚えのない断罪、なぜリディアは閉じ込められたのか


連載スタートです。

最初の数話はやや重めですが、徐々にタイトル通りになっていきます。

いつも通りサクサク投稿して行こうと思います!


 

 プロローグの、()()()()()

 その事件は、世界樹がそびえるエルフ国で起こった。



「リディア、お前がこの私に毒を盛っていたというのは本当か?」



 王宮内の謁見の間に、静かな男性の声が響く。


 玉座の前にひざまずいていた銀髪の少女、第1王女リディアは、ポカンとした顔で父である国王の顔を見上げた。



「……え? 毒?」

「私のここ最近の不調は、お前が作った薬が原因だという報告が上がってきている。遅効性の毒が入っていた、とな」



 苦しげな表情を浮かべる国王の顔を、リディアは戸惑いの目で見上げた。



「申し訳ありませんが、身に覚えがありません」



 すると、国王の横に立っていた宰相が、厳しい顔で口を開いた。



「リディア様、残念ですが、証拠が複数揃っております。父である国王陛下を害そうとするなど、極刑に値しますぞ!」



 リディアは困惑した。

 確かに、薬師でもある彼女は、父親の薬を調合している。

 でも、誓って毒など入れていないし、いつまでも健康でいてくれるように気を配っている。



(絶対に何かの間違いだわ)



 自分はやっていないと主張しようとする。



 ――しかし。



「父上!」

「国王陛下!」



 横から2人の男女、妹のヴェロニカと、宰相の息子で婚約者のギルバードが飛び出してきた。

 彼らは、リディアを庇うように並んでひざまずくと、国王に向かって頭を下げた。



「父上! お姉様は今まで国のために尽くしてきました! どうか寛大なご判断を!」

「恐れながら、私からもお願い致します!」



 2人の必死の訴えに、リディアは戸惑った。



(寛大な判断も何も、わたし何もしていないわ)



 そう思って口を開こうとするが、ヴェロニカに小声で

「お願い! まずは私たちに任せて!」

 と懇願され、口を閉じる。


 ヴェロニカが真摯な表情で国王を見上げる。



「お父様。お姉様の処遇について、我々にお任せください」

「……お前たちにか」

「はい、お姉様の悪いようには決していたしません」

「私もリディアの婚約者として、お任せいただければと思います」



 ギルバードも真剣な顔で頭を下げる。


 国王はしばし沈黙した後、うなずいた。



「……分かった。そなたらに任せよう。頼んだぞ」

「ありがとうございます!」



 ヴェロニカとギルバードが深々と頭を下げる。


 両側の2人につられて頭を下げながら、リディアは首をかしげた。



(ちゃんと調べれば、間違いだとすぐ分かる気がするんだけど)



 本当にこれでいいのかと思うものの、信頼する2人がこう言うということは、きっと何か意味があるのだろうと、流れに身を任せることにする。





 そして、国王が謁見の間から去った後、3人は別室の立派な応接室に移動した。


 ヴェロニカが、痛ましそうな顔でリディアの手を握った。



「お可哀そうなお姉様、お父様ったら酷いですわ」

「そうだよ。陛下は一体どうしてしまったんだ」



 ギルバードも憤慨したような表情を見せる。


 彼らの様子に、リディアはホッとした。

 どうやら2人はリディアが毒を盛ったなど思っていないらしい。


 彼女は首をかしげた。



「それにしても、どうしてこんな話になっているのかしら?」

「分からないけど、そう言い出した人がいると聞いたわ」

「わたし、お父様とちゃんとお話ししたいわ。それと毒の分析もしたい」



 そう言うリディアに、ヴェロニカが静かに首を横に振った。



「今は止めておいた方がいいと思うわ」

「どうして?」

「お父様、冷静に話を聞いてくれる感じがしなかったもの」

「……そうかもしれないわね」



 リディアは視線を落とした。

 確かにあまり見ないような苦しそうな表情をしていたなと考える。


 リディアの手を、ヴェロニカがとった。



「お姉様、しばらく身を隠されませんか?」

「身を隠す?」

「ええ、お姉様がいなくなっても何も変わらなければ、お父様もお姉様が毒を盛っていないということが分かると思うの。そうすれば、きっと冷静になって聞いて下さいますわ」



 リディアは心配そうに言った。



「でも、わたしが調合しているお父様の薬はどうするの? 体調が心配だわ」

「大丈夫よ。そんなに長い間ではないし、それで体調が悪くなればお姉様の冤罪が証明されるもの」

「でも……」



 躊躇するリディアの手をヴェロニカが再びとった。



「このままではお姉様自身が危ないわ。お願いだから、どうか自分のことを大切になさって」



 ヴェロニカの言葉に、ギルバードがうなずいた。



「僕も彼女の案に賛成だよ。最近の陛下は頑固だ。少し時間を空けた方がいい」

「……分かったわ」



 リディアはコクリとした。

 妹と婚約者がここまで言うということは、よほど状況は良くないのだろう。

 父の体調は心配ではあるが、まずは状況が落ち着くまで静かに待とう。



(きっと1カ月もすれば落ち着くわよね)



 リディアは顔を上げた。



「……どこに身を隠せばいいのかしら?」

「王都から離れたところに隠れ家があるから、そこでどうかな?」



 ギルバード曰く、生活できるだけの一切が揃っているらしい。

 一時的に住むだけなら、とリディアはうなずいた。



「分かったわ。毒について調べたいから、お父様の飲んでいた薬を取り寄せてくれる?」

「ええ、もちろんよ」

「協力するよ」



 ヴェロニカとギルバードが笑顔でうなずく。


 そして、その日の夕方。

 リディアは身の回りの品だけ持って、急ぎエルフ国の王都から辺境へと向かった。





本日あと2話ほど投稿します。

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