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ごきげんよう、10年間とじ込められていたエルフ姫です。  作者: 優木凛々
第3章 森の薬屋ぐらし(束の間の平和編)

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04.魔法士エルド

 

「いやあ、本当にびっくりしましたよ」



 レオハルトが帰って来てから、15分後。

 庭の葡萄棚の下にある白い丸テーブルにて、エルドが上機嫌でリディアお手製のケーキを頬張っていた。



「てっきり、殺風景な家に1人寂しく住んでいるかと思いきや、家はめちゃくちゃ可愛いし、美人さんが出迎えてくれるし、ものすごい殺気飛ばされるし! ――あ、このケーキすごく美味しいです、ありがとうございます」



 にぎやかなエルドに、リディアはくすりと笑った。

 どうやら彼はとても楽しい人らしい。


 エルドは、お茶をぐいっと飲むと、ニコニコ笑った。



「それで、お2人はどんな関係なんですか?」



 ぐっと詰まるレオハルトの隣で、リディアが笑顔で答えた。



「姉と弟のような関係ですわ」

「……ああ~、なるほど、そんな感じですか」



 エルドが納得したようにうなずき、レオハルトが「そうだな……」と遠い目をする。


 その後、エルドは自分について話し始めた。

 今は魔法研究者をやっているが、以前は魔法士団におり、レオハルトとペアを組んでいたらしい。



「前衛に騎士のレオハルトで、後衛に魔法士の僕、という感じですね。レオハルトは本当にすごくて、“漆黒の破壊神”なんて言われていたんですよ」

「まあ、そうなの? ずいぶん大袈裟なあだ名がついていたのね」

「……ええ、まあ、大袈裟というより、そのまんまだった気もしますけど」



 リディアは、くすくす笑いながら立ち上がった。

 話はとても面白いが、彼はレオハルトのお客様だ。

 自分はそろそろお暇した方がいいだろう。



「では、わたしはそろそろ家に戻りますね。どうぞゆっくりしていってください」

「あ、はい。色々ありがとうございます」

「ありがとう、リディア」



 丁寧にお礼を言う2人に、笑顔でお辞儀をすると、空いたお皿を持って家の中へと入って行く。




 *




 そして、リディアが立ち去った後、エルドがおかしそうな顔をした。



「なんか、姉と弟って言われてましたね」

「……そうだな」

「つまり、“漆黒の破壊神”は奥手だったってことですか?」

「そんなつもりはないんだがな……」



 レオハルトが苦笑いする。

 彼女にペースを合わせると、なぜかこんな感じになってしまうのだ。


 エルドが面白そうな顔をした。



「まあ、でも、こうなるのも分からなくはないですけどね。エルフってめちゃくちゃ色恋に疎いですからね」

「……なぜエルフと分かった?」

「あの、のんびりした感じが師匠とよく似てたんで、何となく。うちの師匠も色恋とか全くダメですからね」



 そう言われて、レオハルトは思い出した。

 そういえば、エルドの師匠はエルフだったな、と。


 どう色恋に疎いのか聞いてみたい気もするが、聞かない方が良い気もする。



 エルドがケーキをもぐもぐと食べながら口を開いた。



「それで、ここに来た理由なんですけど、冒険者として僕に雇われてくれませんか?」



 エルドによると、2つほど隣の山奥にキメラが出たらしい。



「ぜひ研究材料に欲しいんで、一緒に行ってもらえませんか」

「護衛兼前衛というところか」

「はい」



 レオハルトは考えた。

 エルドには何だかんだで世話になってるから、依頼を受けたいという気持ちはある。

 しかし、



(リディアが1人になってしまう)



 山2つ隣りの山奥ということは、どんなに急いでも数日はかかる。

 そんなに留守にしたら、彼女に何かしようという不埒な奴が出て来てもおかしくない。


 黙り込むレオハルトを見て、エルドが不思議そうな顔でながめた。



「どうしたんですか?」

「いや、その間リディアが1人になってしまうと思ってな」

「なるほど、確かに女の子1人を残していくのは心配ですね」



 エルドが考えた末、任せてください、という風に胸を叩いた。



「分かりました。じゃあ、僕がすごい魔法をかけていきますよ!」

「すごい魔法?」

「はい!  “城守りの魔法フォルティス・ウオード”をかけていきます!」



 “城守りの魔法”とは、建物にかける強固な守りの魔法のことだ。

 この魔法をかけると、許可されていない者は入ると電撃を浴びて動けなくなるという、いわば戦略級の魔法だ


 どう考えても、リディアに寄ってくる悪い虫対策にはやりすぎだが、レオハルトはうなずいた。



「それならば安心だな」

「でしょう? しかもあれ、1年は持ちますからね!」

「それは助かるな」



 という訳で、2人は、



「じゃあ、前衛をお願いする代わりに、城守りの魔法をかけるってことでいいですね」

「ああ、わかった」



 という割ととんでもない約束を交わすと、笑顔でガシッと握手をした。


 


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