表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ごきげんよう、10年間とじ込められていたエルフ姫です。  作者: 優木凛々
第2章 ローザリンデの街

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/41

【SIDE】一方、エルフ国では③

 

 リディアが巨木を離れてから、約3か月。

 王宮内の立派な執務室にて。


 ヴェロニカが険しい顔つきで書類をながめていた。

 それは、エルフ国における気温の変化だ。



(ここまで気温が低い日が続くなんて)



 ここ3カ月で、気温がグッと下がった。

 雨もあまり降らず、お陰で作物の育ちが過去見ないくらい悪い。



(このままじゃ、秋の収穫にも影響が出てしまう)



 イライラしていると、ドアが開いてギルバードが入って来た。



「ちょっと! ノックくらいしなさいよ!」



 そう叫ぶと、ギルバードがビクッと肩を震わせて、「すまない」とつぶやく。

 怒りをぶつけて少しスッキリしたヴェロニカが、何か用事かと問うと、彼は持っていた資料を執務机の上に広げた。



「学者たちが各地の気温を調べていて分かったことがあるんだ。彼らの話では、今が異常という訳ではなく、ここ10年が異常に暖かかっただけらしい」



 彼が持って来た紙には、各地の30年ほどの気温の比較が書いてあり、それはここ10年が異常に暖かかったことを示していた。



「それだけじゃなくて、川の氾濫や害虫の発生なんかも同じみたいで、ここ10年が異常に良いだけで、それが元に戻っただけらしい」



  “豊穣の巫女”であるヴェロニカの祈りが切れてしまったという見方をしている者も多くおり、各地から祈りを捧げて欲しいという依頼が相次いでいるらしい。


 ヴェロニカはギリッと奥歯を噛みしめた。

 当然ながら彼女にはそんな力はない。

 この豊穣は、魔力泉に姉リディアを閉じ込めているからこそ得られる恩恵だ。


 と、ここまで考えて、彼女は思い当った。

 もしかして魔力泉にいる姉リディアが何かしたのではないだろうか。


 彼女はギルバードに尋ねた。



「静寂の巨木の鍵はあなたが持っているのよね?」

「え? ああ。間違いなく僕が持っているよ」

「あそこに最近行ったことは?」

「いや、ない。10年前に行ったきりだ」



 そして、彼もハッとしたような顔をした。



「もしかして、リディアに何かあったのか?」



 ヴェロニカが首を横に振った。



「あそこに閉じ込められたエルフたちは病気やケガなどは一切しないそうよ」

「……では、脱出したという可能性は?」



 ヴェロニカはイライラしたようにギルバードを睨みつけた。



「この私が試しにやって抜け出せなかったのよ! あんなボンヤリした女が抜け出せるはずがないじゃない!」

「……そうだな。リディアはボンヤリしている上に優しい娘だったからな」



 ギルバードが聞こえないくらいの小さな声でつぶやく。


 ヴェロニカがため息をついた。



「あの女があそこから抜けることも死ぬこともないとすれば、これは本当の異常気象なのよ。……となると、まあ、仕方がないわね」



 ヴェロニカは呼び鈴を鳴らすと、薬師長を呼んだ。


 どこかビクビクした中年の男性エルフがやってくる。



「あの、何の御用でしょうか」

「10年前にリディアが作っていった肥料はまだ残っているかしら?」

「は、はい」

「どのくらいあるの?」

「……今起こっている不作に対応するのであれば、恐らく半年分ほどかと」

「では、それを“豊穣の巫女の恵み”として配りなさい」



 薬師長が無言になる。

 ヴェロニカは彼を睨みつけた。



「聞こえなかったの? 私が言っているのよ?」

「……かしこまりました。お言いつけ通りにいたします」



 薬師長が、苦しげな表情浮かべながら、深々とお辞儀をして出ていく。


 ヴェロニカは考えを巡らせた。

 過去の異常気象は、季節が変われば収まった。

 半年もあれば問題なくなるだろう。



「気にするまでもないわね」



 そう高を括る。




 そして、この数か月後、彼女はリディアが巨木から逃げ出したことを知ることになる。




第2章終わりです。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました!(*'▽')


もしよければ、本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです!


イマイチだと思われた方も、☆1つでも付けて頂けると、作者としては今後の参考になりますので、ぜひご協力いただければと思います。m(_ _)m



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ