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プロローグ
「次の者!」
世界樹の麓にあるエルフ国の王宮内、謁見の間にて。
1人のベールをかぶったエルフの娘が、国王の前に跪いた。
頭を深々と下げて一礼をする。
そして、彼女は緊張を逃すように軽く息を吐くと、指を鳴らした。
パチンッ
ベールが消え、美しい銀髪に青い瞳が露になる。
観衆たちが思わず息を呑んだ。
「あ、あれは……リディア王女!」
「幽閉されているのでは……?」
会場にざわめきが広がった。
リディアの妹である第2王女ヴェロニカと、元婚約者のギルバード、そして宰相が真っ青になる。
そんな中、リディアがゆっくりと顔を上げると、その優しげな青い瞳で国王を見た。
「お久し振りでございます。父上」
「……ああ」
国王の目が一瞬潤む。
しかし、すぐに彼は威厳を取り戻すと、静かに尋ねた。
「……リディア、正体を隠してまでここに来た理由はなんだ?」
「真実を伝えにまいりました」
リディアが強い目で国王の目を見返す。
そして、彼女は息を吸い込むと、大きな声ではっきりと言い切った。
「10年前、わたしは父上の薬に毒など入れておりません! あれは全てデタラメです!」