プロローグ
ドゴンッ!
大きな音が、リディアが閉じ込められている巨木内に響き渡った。
木が大きく揺れ、棚から本がばらばらと落ちる。
「キャッ!」
リディアは思わず机につかまった。音の方を見ると、煙が立ち込めている。
「なに!?一体なに起きたの!?」
魔法の杖を手に、慌てて煙の方へ向かうと、そこには信じられない光景が広がっていた。
「え? 壁に……穴? それと、人……?」
リディアが、何度魔法を打ち込んでも破れなかった壁に、大きな穴が開いていた。
その向こうには、煙の中に誰かが立っているのが見える。
彼女が呆然としていると、その人物が穴から中に入ってきた。
美しい黒髪と涼しげな赤い瞳をした端整な顔立ちの青年で、背が高く大きな剣を携えている。
彼はリディアを見つけると、嬉しそうに目を細めた。
「リディア、会いたかった!」
そして、驚きで言葉も出ない彼女の前にひざまずくと、嬉しそうにその顔を見上げた。
「遅くなってごめん。約束通り迎えにきたよ」
「ええっと、あの、あなたは……?」
リディアが戸惑っていると、青年は目を細めて微笑んだ。
「レオハルトです」
「え!」
リディアは驚きのあまり目を見開いた。
あの小さくて弱弱しかった少年が、こんなに大きくなったのかと驚きを覚える。
レオハルトは照れくさそうに笑いながら立ち上がると、リディアの手を優しく取った。
「さあ、ここから出よう」