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世界大戦  作者: 閉閉
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アミロの苦難

アミロはこの国の元騎士団長であり、今ではその仕事は引退済みである。

彼女は生まれながらにして剣の才能があり、それが認められ騎士団長となった。

引退した後に王国からは離れ、今はほとんど隠居のような形になっている。

そんな彼女の仕事の一つが転生者の指南であった。


異なる世界から人間を召喚する。そんな必要は普通では生じない。それは、仮に異世界からきた転生者がとんでもなく強者であってもである。冷静に考えれば、それが仮に強者であったとしても、また弱者であったとしても、いきなり知らない場所の人間のために働くなどということは、現実的に期待できない。では、どうして転生者は後を絶たないのか。それは、この世界に生きる人間の謎の一つであった。


異世界から来たものがこぞって考えるのが、自分にはどんな特殊な能力があるのか、ということだった。当たり前であるが、そんなものはない。だが、異なる世界を超えられるという力こそはとても有用であり、それだけで素質があるというのは事実だった。異世界人のほとんどがそのポテンシャルを持ち、またそれを期待しているという事実からも、向こうの世界ではこちらの世界に来ることが栄光のように考えられているのではないかという想像は容易に建てられた。それに加えて異世界人のほとんどは彼らの世界には小説に我らが生きる世界のことが書かれていると口々にしてた。


そんなアミロも、いつものように転生者を連れ、馬車の中にいたのだが、今回は少しばかり事情が異なる気配を感じ取っていた。それは、今回の転生が史上もっとも大規模なものであり、また大人数の転生が行われた可能性があること、それに加えて前の世界での最後に関する記憶に修正が加えられている可能性があったからだ。通常、異世界転生したものは自分は前の世界では死んだ。と言う。つまり死に至る直前の記憶を保持しているのだ。これも転生者の強みの一つで、彼らはその人間の一番の恐怖の記憶を持ちつつ存在しているという特性がある。しかし今回の二人はそういう訳ではなさそうだった。


そうなると可能性としては転生ではなく転移のようなものだろう。転移魔法はこの世界にも存在している。しかしそれはかなり難解な魔法であり、また発動にも時間がかかる。理由は転移するためのポイント、その座標と位置情報を正確に読み解く必要があるからだ。空間把握の能力がよほど優れてることが必要最低条件であった。アミロは魔法が得意ではないのでそれほど詳しくわないが、世界間を移動するような大規模な魔法が存在しているとは思えなかった。

そうこう思案しているうちに目的地が近づいてきてしまった。今後の事を話すついでに彼ら二人にも聞いてみようとアミロが考えたのであった。




「異世界、ですかぁ」

そんな腑抜けた声をあげたのは新田だ。異世界に来るなんてことを実際に経験することなど、人生でもちろん想定されていない。つまりそれは、人間が異世界に適用できるようにできていないのではないかという疑問も湧くわけだが、今のところは新田も悠も大丈夫なようだった。


「全然そんな感じしないけど、さっきちらっと外の景色を見た感じ、信じられなくもないね」

内心では驚きつつも、そんな感情はあまり表に出さない性格の悠である。


「相変わらずだよなぁ、悠は。それで、アミロさん?でいいのかわからないけど、俺たちはこれから国に行ってどうするんだ?」

恐る恐るという感じで新田がアミロと自己紹介をした騎士の女に訊いた。まだ緊張は全然抜けていない。


「そうね、とりあえずは異世界人はその存在からも普通の住人のように暮らすという事例は少ないわ。まずはこの国のトップに会いに行く必要があるわね。慣例通りならね」

今回の転生、もとい転移が今までのものとは少しばかり異質であることはまだ伝えるべきではないだろう。だが少なくとも、この世界で生きていくには必要な力と知識は最低限教えなければならない。そう感じつつ、二人を見つめた。


少しばかり居心地の悪い空気が流れる中、馬車は城下町へと到着した。ここ、アルフォード王国は、魔法というよりも武芸に心得があるものが大半であり、国の抱えている兵士たちも皆剣の腕の立つものばかりであった。


新田たちは初めて見る町の光景にあっけにとられ、それを見て自分たちが本当に別の世界へと足を踏み入れていたという事実を噛みしめていた。


「うわー、ほんとにこんな街並みあるんだなぁ。やっぱり建築基準とか建築方法とか、全然違うんだろうなぁ」


「確かに、新田の言う通り全然違うね。基本的に地震とかもこなそうだけど、外壁は日本で見たような建物よりも頑丈そうだね、多分魔法とかの攻撃に備えるためなんだろうね。」

二人が町を眺めながら感想を述べていると、アミロが軽くうなずきながら説明しだした。


「ここにきてそんな冷静なコメントを聞いたのは久しぶりだな。確かに異世界とは建築様式は異なるし、特にこの国は魔法とあまり縁がない国だからか、魔法に対する恐怖心みたいなものをもっている人が多い。そのせいか追加で魔法に対する防御をいくらか有しているような作りに変えている家がほとんどなんだ。実際は町中で魔法を行使する人などあまりいないがな。」


そんな平和な時間も流れ、二人は王の住まう城へと足を踏み入れることとなった。





玉座の間につくと、そこには自分たち以外のクラスメイトが揃っていた。どうやらみんなここの周辺で転生したらしく、仲の良いグループどうしで再開して抱き合っているものまでいた。


「皆、よくぞ集まってくれた。今は混乱しているだろうが、それも無理ない。細かい説明は後程行うとして、今回は現在どういう状況なのかという話の部分にだけ軽く触れておこう。」

王、と聞いて真っ先にひげを生やしたおじいさんを何故か想像していたが、実際は華聯なお嬢様という感じだ。だがその中に力強い瞳と力を兼ね備えているような、そんな雰囲気を感じさせた。学校の校長先生なんかよりはよっぽど威厳がありそうで、もし天皇陛下と出会ったらこんな気持ちになるのではないか、などと悠は独りでに考えた。


話しを聞く限り、要点は3つに絞られた。まず、ここが異世界であることは確かだということ。異世界召喚とは本来前の世界で死を経験していることが必要であること。そうではないため僕たちは異世界転移をした可能性があるということだった。


「ざっと説明するとこんな感じだ。そして、君たちがこの世界にやってきた理由についてだが、正直なところこれも現状では説明できない。ここまで大規模な転移は史上初めてのことだ。色々と考えたいこともそれぞれあると思うから、ひとまずこの城で匿うことにした。4人一組の部屋を用意したから、各自分かれてくれ。私からは以上だ。アミロ、後は頼んだ」


そういって王女様はどこかへ行ってしまった。残ったアミロがこの場にいる生徒達に部屋やこの城に関する簡易的な説明をし、部屋へ移動することになった。」


いつものような平穏な日常はもう帰ってこないだろうが、これはこれで面白くなりそう。悠はそう考えていた。



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