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戦士?無理無理!だって俺は農家の息子!


「アタケ、本当に俺たちの一団に加わる気はないのか?」

「いやー俺じゃ、足出まといになっちゃいますってマジで!」


「むっ、そんなことはないぞ、なあお前たち?」




ハーゲンが仲間たちに問いかけるとみんなもうなずいてみせる。




「ほほほ、そうじゃ、アタケよ。お前には体力があり、何より度胸があるからの」


婆さんが杖で俺の背中をバンバンと叩く。

婆さんは思ったより腕力あり上半身がぐらぐら揺れた。




「へへへ、いやー……度胸っつうかこの鎧があったからさ!」


「いや、アタケよ。お前には才能があるぞ。このハーゲンがお前を本物の戦士へと育て上げてみせよう。そして俺が再び領土を得た暁には、我が直領の警備隊長として迎えると約束しても構わん」




「そりゃあ光栄ですが……俺はただのいちご農家の一人息子で……いちごの世話は大変だし、親父だけに畑の管理を任せるのは心配っつうか……」




「そうか……畑のことは俺にはよくわからぬが、父親のことが心配だというなら無理に誘うことはできんな」


「あ、あの、ハーゲンの旦那!」

「どうした?」




俺は立ち去りかけたハーゲンを呼び止めて、もらいものの鎧を取り外そうと留め金に手を伸ばす。


しかし次の瞬間、ハーゲンにがしりと肩を掴まれ、阻止されてしまった。




「アタケ……それはお前のものだ。持っていくがいい」


「え、いや……でも、俺……」

「いらないなら売ってくれ。そこそこの金額にはなるだろう」




小太りも婆さんもおばさんもにこにこしながら俺を見守っている。わけのわからないケチをつけてくるモブたちはもういない。




「いや、だって……あ、まあ、ありがとございます。そいじゃ……」


言葉にならない言葉をなんとか紡ぎだしながら鎧の留め金を俺は改めて引き締める。




「アタケ、お前と出会えたことは俺の生涯でも一、二を争う幸運だった。お前がいてくれなかったら俺は一生後悔して過ごすことになっていたかもしれん」


「えっ、いやあ……??へっへっへ、旦那……」




なんでそうなるんだ?


呆気にとられて苦笑いしていると、ハーゲンは思い直したように俺を抱き寄せる。そして労わるように背中を叩いてくれた。




「アタケ、旦那じゃない。お前はもうこの俺の大切な仲間だ。召使いじゃないんだ」


「……あ、うん」

「元気でな」


「み、みんなも……!色々とありがとうございましたあ!」




俺は訳のわからないままに笑い声をあげると、去り行くハーゲンたちの背中に何度も手を振って歩き出す。




こうして俺の初めての冒険は終わった!


ハーゲンたちのその後はわからないが、あいつらなら山賊どもを追っ払って土地を取り返して、デカい城でも建てて幸せな余生を送れるはずだろう。




「……」


そして俺は結局、鎧は売っぱらうことはしなかった。




おっと!勘違いしないでくれよ?

別にハーゲンたちとの思い出の品を大切にしたいとかそういうわけじゃないからな。


こんなシケた田舎じゃ、二束三文で買い叩かれると決まってるんだ。




「さーてと、とりあえず一度家に顔を見せに戻るか」




親父に使った<追放>の効力もそろそろ切れているかもしれないからな。

もしかしたらまだ持続中かもしれねーけど、そん時はそん時だろ!

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