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第9話

 六〇〇万に膨れた義兄への貸金。それは恰も負債のように省吾を不安にした。彼の念頭にはいつもその問題が浮かぶようになった。今後の義兄への対応を種々に考えるのだった。


 そんなある日、省吾は名義変更を思いついた。あの家の名義を自分にしていても何のメリットもない。納税義務が生じるだけだ。この際、名義を義兄に変更しよう。そうすれば義兄は名実共に納税義務を負うことになる。考えてみれば来年度以降、義兄がきちんと納税する保証はない。滞納が続けば税事務所はまた名義人である自分に納税を求めてくる。その不吉な予測が省吾を駆り立てた。省吾は義兄に電話を入れ、名義を変えたい旨を告げた。「ああ、そうする。それはいいよ」と義兄は応じた。歓迎の語気だった。そうか、この人にとっては自分名義の財産が増えることだからな、と省吾は思った。ふと、早まったかな、と思った。しかし、今度のような目には二度と会いたくなかった。義兄が使っている司法書士に頼んで手続きを進めることになった。


 省吾は固定資産税について調べるうちに、元日現在で名義人になっている者がその年の固定資産税の納税義務を負うことを知った。とすれば名義変更は年内に終えなければならない。年末までは二ヶ月余り。省吾は義兄にそのことを伝えた。義兄は諾したが、年末までに本当に名義変更を終えるだろうかと省吾は不安を覚えた。義兄については念書通り立替金を返済するだろうかという疑念もあった。そして、たとえ名義変更、固定資産税の問題が解決しても、六〇〇万円を超える貸金問題は依然として未解決のままであると思うと、省吾の心は滅入った。


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