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第6話

 夏のある暑い日、緑色の封筒が届いた。省吾が居住する町に隣接する市の市税事務所納税課が発信したものだった。変だな、と省吾は思った。封筒を開けると、「期日呼出書」と冒頭に記された文書が入っていた。文面を読むと、「あなたが滞納している下記市税(料金)は、これまで督促状や催告書で納付(納入)をお願いしてきましたが、いまだに完納されていません。つきましては本書持参のうえ下記期限まで必ず来庁してください。※期限までに来庁のない場合は、納税(納付)について誠意がないものとしてあなたの財産を差し押えることになります。」


 省吾は惑乱を覚えながら文書を凝視した。これは何だ、これは何だ、と頭の中で叫びながら。文書の中ほどには期限の日付が太字で印字され、下半分には賦課年度、科目、納期限などの項目の入った表が載せられている。科目には「固定資産税・都市計画税」とある。省吾の頭に閃いたのは実家の固定資産税だ。旅館の脇に二階建ての家屋がある。省吾の父親が死ぬ前に改築した家だ。父親は改築した家には二年ほどしか住まないで、逝ってしまった。今は省吾の母と姉夫婦とその息子が住んでいる。省吾は結婚後、その家に住んだことはなかった。彼は結婚してからはアパート住まいを続け、その後環の実家に移り住み、現在に至っている。父親が亡くなった後、その家の名義が省吾に変った。省吾は住みもしない家の名義など欲しくはなかった。「旅館を継ぐ者が全てを継ぐ」、それが父親の相続についての方針だった。従って社長となった義兄が旅館の土地、建物、預金など資産の全てを所有したのだ。省吾の母親は家の名義を省吾にしたいようだった。息子に全く何も残さないというのは気が咎めるのかなと省吾は母の気持を忖度した。結局、彼は名義を自分にすることを肯じた。但し、固定資産税は居住する義兄が負担する約束だった。別に文書で確認したわけではないが、お互い当然のことと了解していた。


 その固定資産税を払っていなかったのか。予想もしない事で、省吾は衝撃を受けていた。しかも事態は「呼出」「財産差し押え」にまで至っているではないか。固定資産税も払えないのか、と省吾は思った。信じられないことだった。


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