オスカーという男。
誤字のご報告、ありがとうございました…!
訂正致しました。
その他のページでもあるようなら教えて頂けると、とても助かります。┏○)) ペコリ
「はじめまして。アイヴィちゃん。」
私に対して、にこりと微笑む男。
何故私の名前を…と思ったが、一応戸籍上は父親にあたるエルズバーグが逮捕されたのだ。身内の調べはとっくについているのだろう。
金髪に碧眼のこの男。エルズバーグを連行する際に、奴の犯した罪を堂々と読み上げた男だ。
「俺の名前は、オスカー。よろしくね。」
オスカーと言う名の男は、膝を曲げ、ベッドの上に座る私と目線を合わせた。
「アイヴィちゃん。父親であるエルズバーグが逮捕されて君は一応、身寄りがなくなったことになる。ただ君は元はローナン家の子だね?君がローナン家へ戻りたいと願うのであれば、ローナン家へ送り届けよう。」
ローナン家へ戻るだなんて、冗談じゃなかった。
どうせまた同じことの繰り返しだ。
お父様は、…いいや、ローナン家は私を邪魔者として見ている。だから、高いお金さえくれるのであれば、私を誰にだって売り出そうとする。
私が大好きだったのは、お母様が居た頃のローナン家。腐りきったあんな家に戻るなんて、絶対に御免だ。
無意識に、ぎゅう、と着ていたシンプルなワンピースを握り締めていた私。険しい顔をした私を見て、オスカーは察っするものがあったようだった。
「アイヴィちゃん、1つ提案があるんだけど、どうかな?」
提案…?
「俺の兄さんが、今娘を欲していてね。義姉さんとも夜、いそしんではいる…んんっ、ごめんね。今のは忘れて。とにかく、娘が欲しいみたいなんだ。本来、なりたいからなる!なんて簡単な話ではないんだけど、君さえ良かったらウィンストン家の子にならないかい?」
ウィンストン家といえば、10歳の私でも知っている高名な公爵家の名前だ。ここで初めて、この穏やかな笑みを浮かべるオスカーという男が、ウィンストン家の人間だということを知る。
男爵家に生まれ、伯爵家に売られ、また違う爵位の家に養女として迎え入れられる。いったい私の人生はどうなっているのか。10歳にして、振り回されすぎな人生に、いい加減疲れてきた頃だ。
どうせこの誘いを断ったらまた違う貴族へと打診が行く。ローナン家へ帰りたくないというのであれば、他の貴族の養子になる他ないのだ。
養女として向かい入れられた家で、どんな扱いを受けるかは分からない。もはやこれは、運試しだ。だったら、最初に声を掛けられたウィンストン家が縁なのだと思って割り切るしかない。
「…分かった。」
こうして私は、ウィンストン公爵家の娘として再スタートを切ることなった。