たかだか70点。
「ウィンストン公爵家の人間なんだから、満点を取れて当たり前だと思わない?」
「アリソン!アイヴィは慣れない環境下で、頑張ってるんだ。そんな言い方はないだろ。」
「頑張ったところで結果がこんなじゃ意味ないじゃん。君、ウィンストン公爵家が王家からも一目置かれた存在だってこと、今一度理解した方がいいよ。そうすれば、自分がどれだけ公爵家の令嬢として半端者なのか分かる筈だから」
「アリソン!」
普段は穏やかなヒューゴが、アリソン殿下を睨みつける。
しかし、睨みつけられた本人は、どこ吹く風だ。怯む様子など一切ないどころか『本当のことだろ?』と平然な態度を一貫してみせる。
「君より令嬢らしい令嬢は山程居る。そういう人達を是非、手本にしてみたらいいと思うけど?」
アリソン殿下は、第二のバーサ先生だ。人を馬鹿にすることに加え、他の令嬢と私を比べるところまでそっくりだ。
バーサ先生だけならまだしも、彼女以外の人間にまで馬鹿にされると、流石に腹が立ってくる。
私は、不敬罪に当たることを覚悟で、アリソン殿下からテスト用紙を奪い取る。
他にも教科書やノートが床に落ちていたけれど、私はそれらを拾うことなく、早足で自分の部屋へと向かった。
後ろから『アイヴィ!』と、私を呼び止める声が聞こえたけれど、今度は絶対に足を止めることはしなかった。
部屋に戻るなり、掃除という業務に勤しんでいたスザンヌに、『これも捨てておいて』とテスト用紙を渡す。
私が寝る間も惜しんで勉強していたことを知っているスザンヌは、70点と書かれたテスト用紙を見るなり、『凄いです!お嬢様!』と感動した様子だったけれど、性悪王太子のおかげですっかりとやさぐれてしまっていた私は、たかだか70点だと、自棄になった言い方をした。
ウィンストン家の養女になった私には、満点以外の点数に喜ぶ権利はないらしい。
その日の夜。落としてそのままだった教科書とノートを持ったヒューゴが、私の部屋へと訪れた。
彼は私に向かって、何度も謝った。その度に私は、気にしていないと答えた。
気にしていない、だなんて真っ赤な嘘だけれど、本当のことを言うのも、なんだか憚れた。言い方はどうであれ、あの性悪王子が言うことにも一理あると思ったから。




