肩を竦める少年。
馬鹿にされるのも癪だからと、自分なりに頑張ったおかげか、確認テストの結果はそれなりに良いものだった。満点とまでは行かなかったけれど、初めてのテストにしては上出来なのではないだろうか。
バーサ先生は、ウィンストン公爵家の令嬢として恥ずべき点数だと嫌味を言ってきたけれど、私的には満足の行く結果だった。勿論、こんなところで立ち止まったりはしない。…が、まずは頑張った自分を褒めてやろうと思う。この1週間、寝る間も惜しんでよく頑張った、私。
こんなにも気持ちが弾むのは、随分と久しぶりに思える。天国に居るお母様も、きっと今頃は私のことを褒めてくれている筈だ。
「あ。アイヴィ!」
「っわ…。」
誰かに名前を呼ばれた私は、自分の部屋へと動かしていた足を止めようとして、びたん!と前に転んでしまった。
また、ドレスに足を引っ掛けた…。痛い。
「アイヴィ!大丈夫!?」
慌てた様子で転んだ私の元へとやって来たヒューゴ。どうやら私の名前を呼んだ“誰か”とは、ヒューゴだったようだ。
脳内でもう一度私の名前を呼ぶ声を再生して、確かにヒューゴの声だと今更ながらに理解する。
「ごめん。急に声を掛けたから、驚かせちゃったかな…。」
「大丈夫。」
むくりと起き上がって、パンパンとドレスの汚れをはらうも、流石はウィンストン家が雇う使用人達だ。仕事が出来すぎる。派手に転んだというのにドレスには、塵1つと付いていなかった。
「アイヴィ、怪我はない?大丈夫?」
「平気。」
「どこか打ったり、擦りむいたりは?」
「してない。」
「本当に?よく見せて。」
私の両頬に、ヒューゴの手が添えられる。
痩せ我慢をしているとでも思われているのか、ヒューゴは心配そうな表情を浮かべて、念入りに私の手や顔を見る。
本当に怪我などしていないのに。
「大袈裟だよ、ヒューゴ。ただ転んだだけでしょ?その子。」
「大袈裟じゃないよ。アイヴィが怪我でも負ったら、どうするの。」
「どうもしないよ。俺が転ばせたわけじゃないし。」
ヒューゴの発言に、呆れたように肩を竦めた少年。
初めて見る顔だけれど、ウィンストン家の人間だろうか。顔は全く似ていないけれど、金髪と碧眼なのはヒューゴと同じだ。…と言っても、金色の髪も、青色の瞳も、私の国ではそう珍しいものでもないのだけれど。




