調査開始
3人の朝食を作り終え皆の前にお皿を置いていく。
ルベルとフィリアはブツブツ話していて、ヴォルクは本を手にしているが進んでる様子はない。
「出来ましたよ。口に合うかわからないですが…」
3人に声をかけ朝食を目にする3人。
「うまそぉ…」
「一旦考え事は置いておきましょう」
「……」
3人はジトォっと料理を見つめた後、ルベルはサンドイッチにフィリアはスプーンを持ちスープに手を伸ばし口に含む。
『〜〜〜〜!!うんまぁ!!』
どうやら口にあったみたいだ。
リアはホッとする。
そんな様子を見ていたヴォルクもスープに手をつける。
「!!」
どうやらヴォルクも口にあったみたいだ。
「何このパン!ずごい柔らかいわ!」
「中のこれもすげぇ〜うまい!!」
「……」
リアが作ったのはタマゴサンドとハムサンド、ごまだれをかけたサラダに、コンソメスープ。
どれも簡単な物でコンソメスープなんて固形のアレを入れて少し味付けしただけだし…
逆に申し訳なく思うリア。
「ねぇねぇ、リア。このパンに挟んである黄色いのは何?」
「卵ですよ」
「卵がこんなに美味しくなるの!?」
この世界に卵はあるみたいだ。
フィリアは頬に手を置き美味しいと顔をフニャ〜とさせている。
「なぁなぁ、こっちは!?」
ルベルがハムサンドを見せながら聞いてくる。
「それはハムサンドと言って、ハムとレタスにからしやマヨネーズ、バターを塗って味付けした物です」
「はむ?からし?まよねーず??よくわかんねぇけど美味いからなんでもいいや」
この世界にはないものらしい。
どういう食材があって何を食べてるのか逆に気になる…。
「じゃ、こっちのタマゴにも何か味付けしているの?」
「はい、タマゴサンドには塩、胡椒、マヨネーズで味付けしてます」
「こっちにも、まよねーず?で味付けしてるのね」
「おかわり!」
え、早すぎませんか?
ルベルに顔を向けると全部のお皿が綺麗になくなっていた。
卵はまたゆでないといけないから…ハムサンドならすぐ作れる。
スープもまだあるし…
「ハムサンドならすぐ出せますよ?」
「うん、それでいいよ!」
なんだろ…尻尾と耳が見えるような…
「スープとサラダはどうします?」
「あるなら食べる!」
…キラキラと光るものが飛んでるような気がします。
「リア私にもちょうだい!ルベルと同じもの!」
あらやだ、可愛いです。
こっちも耳と尻尾が見える。
いつの間にかフィリアも綺麗に全部食べている。
「分かりました。ヴォルクは??」
ヴォルクの方に顔を向け、これまた同じようにお皿の中が綺麗になくなっていたので聞いてみる。
「……」
コクンと首を動かすヴォルク。
「全部おかわりでいいですか?」
「…あぁ」
ヴォルクの返事を聞き全員のお皿を持って台所に向かう。
「リア、俺たちすげぇ食うから量多めがいいな!」
とルベルが声をかけてきた。
「了解」
ハムサンドを作りながら考える。
スープもおかわり分でなくなるし…
在庫にツナ缶があったからツナサンドも作ろうかな。
その他にもある食材でお腹に溜まりそうなものを手際よく作り皆の前に出す。
結構な量を作ったが、それもペロリと耐えらげ、またおかわりをする3人。
ここで気づいたリア。
小さなお鍋やフライパンだけじゃこの3人には足りないと言うことを…。
まだまだ食べれそうだった3人に、ゲッソリするリアは通販召喚でいろいろ収納空間に入れててくれたパンやお菓子を出す。
それも綺麗に食べる3人に今までどんな量を食べていたのか、食費が大変なんじゃと思った。
「はぁ〜こんなに満足するの初めてだよ」
「本当ねぇ〜こんな料理食べちゃうと他の料理が食べられなくなるわ」
2人はお腹をさすりがら言う。
なんだかこの2人似てません??
ヴォルクも満足そうに先ほどコーヒーを淹れたカップに口をつけている。
飲み物何にするか聞いたら
「甘くないやつ」
と言っていたので、食後にはやっぱりブラックコーヒーでしょ!
と勝手な私の考えでコーヒーを淹れてみたらヴォルクは気に入ったようだ。
カフェラテも少し甘かったみたい。
スティックタイプは少し甘いもんね。
コーヒーを気に入ってくれて良かった。
ルベルは変わらずココアオレ、フィリアはアップルティーを飲んでいる。
少し休んでる間にフィリアに顔のアザを治してもらって村の調査を始める4人。
やはり手がかりになるようなものは見つからない。
森の周辺も探ってみたがこれといって何も見つからなかった。
一旦最初にいた家に戻ろうとした時、怪しい二人組を発見しバレないように木に隠れながら様子を伺う。
2人は濃い茶色のロングローブを羽織りフードをかぶっていて顔が見えない。
「お前なんで大事な証を無くしちまったんだよ」
「俺だって無くしたくて無くしたわけじゃない」
「どこで無くしたんだよ?」
「この村で無くしたと思うんだよな…」
「めんどくせぇ〜」
「付き合わせちまって悪いな」
「仕方ねぇなぁ〜早く探して戻ろうぜ」
どうやら探し物をしているようだ。
「あの2人、村の人たちを攫った人物かしら?」
「そうじゃねぇか?ヴォルク捕まえるか?」
「…あぁ、何か知ってそうだしな」
3人はコソコソと話している。
「隙をついて捕まえるぞ」
『オッケー』
「リアはここで待ってろ」
どうやら私は参加できないみたいだ。
「了解」
しばらく2人の様子を見て攻撃できる隙を見つけている。
「どこにもねぇじゃねぇか!どこで無くしたんだよ!」
「この村に来るまではあったのは確かだ。だからこの村にあるはずなんだが…」
どうやら全部の家と周辺を探しても見つからなかったみたいだ。
2人は疲れたのか座っている。
「今だ!」
ヴォルクが合図を出して3人は動き出した。
怪しい2人組に近づいて後ろからヴォルクとルベルが剣を向ける。
その後ろにフィリアがいる。
「動くな。話を聞かせてもらおう」
ヴォルクが2人に問う。
「ちっ」
怪しい1人が舌打ちをした後、何かを呟くと辺りは強風が起こり土埃が舞い目を開けられない。
フィリアが片目を開けながら何かを呟いた後風は止む。
「おい、早く片付けてずらかるぞ!」
「探し物が見つかってない!」
「ちっ、さっさと始末して探すぞ」
「おう」
2人も剣を抜き戦闘体制に入る。
それぞれが詠唱し始めると、剣の色が変わる。
ヴォルクが青、ルベルが黄色、敵の2人が水色と黄緑を纏っている。
フィリアも詠唱しているが何をやっているのか今の私には分からない。
詠唱が終わり剣を振るとそれぞれの色をした渦巻いたものが相手に飛んでいく。
それがぶつかり合い突風が起き、周りが見えなくなると次に剣と剣がぶつかり合う音が聞こえる。
剣の音が響く中やっと周りが見えるようになるとヴォルクとルベルが敵の2人を抑え込んでいる。
どうやらヴォルク達が勝ったようだ。
「フィリア、2人にスキル封じを」
「分かったわ」
フィリアが詠唱し始める。
が、その間にヴォルクの周りに風が吹き攻撃をされ離れてしまう。
ヴォルクは倒れ込みその間に敵は剣を拾うとヴォルクに襲い掛かる。
『ヴォルク!』
ルベルとフィリアが叫ぶが攻撃ができない。
私は咄嗟に銃を取り撃った。
大きな銃声音が鳴り響く。
「ぐはっ!」
「ひっ!」
「きゃあ!」
「うおっ!」
「っ!」
腕にあたりヴォルクを襲おうとした男が剣を落とし腕を抑える。
そして上からもう1人の敵、フィリア、ルベル、ヴォルクの順で銃の音に驚いて悲鳴をあげる。
「痛ぇ…なんだよこれ!」
「今の音なんだよ!?」
『………』
敵2人が叫び、ヴォルク達は黙って固まっている。
「ヴォルクに剣を向けるからですよ?」
私は木の影から銃口を向けたまま出る。
「くっ…もう1人いたのかよ!」
ルベルに抑えられている男が忌々しそうな顔をして私を睨んでくる。
その間にも痛い痛いと撃たれた男が叫んでいる。
「大人しく捕まっておけば痛い思いしなかったんですよ」
私は今、任務中と同じようにより一層無表情で冷めた目をしているだろう。
「こ、のやろぉ!」
撃たれた男が今度は私に向かってくる。
利き腕を撃たれたから剣も持てず、素手だが何か詠唱をしているようだ。
詠唱が終わる前にもう1発私は銃の引き金を引く。
また銃声の音が響くと撃たれた男はうつ伏せに倒れ、他のみんなは体をビクッとさせる。
私は撃った男に近づき足で仰向けにさせる。
男は心臓を撃たれ息絶えていた。
死んだと分かったリアは次にルベルが押さえている男に近づく。
ルベルも男も恐怖で動けない。
「次はあなたの番ですが証人がいなくなるのは困るので大人しく捕まってもらえますか?」
しゃがんでカチャリと銃口を男の頭に突きつける。
「ひっ!わ、分かった!だから殺さないでくれ!」
男はガタガタと体を震わせる。
「捕まってくれるそうですよ」
私はフィリアの方に顔を向けるとフィリアはビクッと体が動く。
「え、えぇ」
フィリアは詠唱を始め、その間私は男に銃口を向けたままにする。
詠唱が終わると男の手首に枷がはめられた。
それを確認すると私は銃をしまい、ルベルは男の上から退き立ち上がらせる。
「逃げられないように足を折らなくてもいいんですか?」
これが当たり前のことかのように聞くリア。
「え?」
『は?』
フィリア、ヴォルク、ルベルが何を言ってるんだという顔をして、捕まってる男は
「ひぃ!」
と目に涙を浮かべる。
「に、逃げない!誓って逃ることはしないから折らないで!」
「本当は片足だけでも折っておいた方がいいのですが…ヴォルクがリーダーなので決めてもらいましょう。どうしますかヴォルク?」
顔をヴォルクに向け問う。
3人の関係を見るとヴォルクがリーダーなのだろう。
「………逃げないと言っているなら折る必要はない」
「だ、そうです。良かったですね?」
眉間に皺を寄せるヴォルク。
そして本当に良かったのかと思うくらい淡々と無表情で話すリア。
ルベルとフィリアは顔を引き攣らせ、敵の男の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりガクガクと震えている。
「お前に聞きたい」
ヴォルクは立ち上がりながらリアに聞く。
「私、ですか?」
誰に聞きたいのかと思ったが、ヴォルクの顔はリアに向いていた。
「あぁ」
「なんですか?」
「………何故この男を殺した?」
どんな質問がくるのかと思ったリアは予想外の質問にキョトンとする。
「襲ってきたからです。殺られる前に殺れ、そう教わりました」
リアは質問の問いを無表情で答える。
人間も弱肉強食。
自分が死ぬかもしれない
襲ってくる=相手は殺すつもりでくると思え
そう訓練された。
「殺さなくても良かったはずだ」
「ヴォルク達も殺す覚悟があって剣を握りスキルを使ってるんじゃないんですか?」
「俺達は人を殺したりしない」
「…殺す覚悟もないのに剣を握っていると?相手は殺す覚悟で襲ってきたとしても殺さないと?」
「そうだ」
「甘い考えですね」
きっと私のような生活とは程遠い幸せな環境で生きてきたのでしょうね。
リアは小さく呟きながら目線を下げる。
「命を簡単に奪ってはいけない。…俺は命を奪いたくない」
「そう思うのならその考えを貫けばいいと思います。けれど私はもう人間を殺してもなんの感情も起きません。今まで通り殺られる前に殺ります」
「……そうか」
ヴォルクは一言呟いて一瞬悲痛な顔をする。
しかしすぐ元の表情に戻る。
「…それとその黒いのはなんだ?」
「拳銃のことですか?」
「…けんじゅう?」
「はい」
「それもあっちの物か?」
「そうですね。この世界にはないみたいですね」
「あぁ。始めて見る。悪いがそれを預からせてもらう。お前がいつ俺達にそれを向けるか分からないからな。そしてお前にもスキル封じを使わせてもらう」
「…まるで罪人ですね。あぁ人を殺してるから罪人ですね。ちなみにこの世界の人殺しはどんな罰を?」
淡々と話すリアにより一層ヴォルクの顔は険しくなる。
「………奴隷落ち、もしくは極刑だ」
「そうですか」
そしてリアは銃をヴォルクに渡す。
「フィリア」
ヴォルクは銃を受け取った後フィリアの名前を呼ぶ。
フィリアは困惑な顔をして戸惑っていたが詠唱を始める。
そしてリアの手首に枷がつけられた。