ヴォルクside 【1】
ーー数日前ーー
ここはラスティア王国。
仲間のルベルとフィリアと一緒に依頼達成の報告をするのに冒険者ギルドに来ていた。
このギルドはラスティア王国のギルド本部。
俺たちは本部を拠点として動いている。
「お待たせしました。次の方どうぞ」
「やっほ〜ミーナちゃん」
「今日も混んでるわね?」
ルベルは受付嬢に手を振り、フィリアが賑わっているギルド内を見渡す。
「静かな日がないくらいですからね。今日はどうしましたか?」
「依頼達成の報告だ」
ヴォルクは受付嬢に依頼書と素材を渡す。
「今回も早かったですね!では素材を確認しますので少々お待ちください」
受付嬢は後ろに素材を持って行き確認をお願いした後、俺たちのところに戻ってくる。
「皆さん、確認が終わるまでお願いしたい調査のお話を聞いて頂きたいのですが…」
ミーナは深妙な面持ちで聞いてきた。
「何かあったの?」
「えぇ、ここでは話せないので別室に移動してもらってもいいですか?」
他の人間に聞かれるのはまずい内容なのか別室に移動する。
ソファに座りミーナが飲み物を用意してくれる。
ミーナも向かいのソファに座って、カップに手を伸ばし一口飲んだ後、真剣な面持ちで話し出した。
「ここ数日、各国に何件か似たような話が届きまして…」
「どんな依頼内容なの?」
「村人全員が急に消えたという内容なんです」
「皆で引っ越したとかじゃなくて?」
ルベルの言葉にミーナは首を横に振った。
「引っ越しするにはおかしな部分があるんです」
ミーナは語り出す。
ーーーーーーーーーーーーー
事の発端は、ラスティア国に戻った商人が慌てた様子で近くの騎士団に声をかけてきたそう。
慌てていた商人の話は何を言っているのか分からず彼を落ち着かせました。
暫くして落ち着いた商人は話し始めました。
商人は定期的にその村に食材などを運んでいて、その日も届けに向かっていたそうです。
村についた商人はすぐ違和感を感じたらしいです。
いつもは外で洗濯や作業をしている大人たちの姿、馬車の音が聞こえて家から飛び出してくる子供たちを見るのに、その日は誰一人外にいる大人も外に飛び出してくる子供の姿もなかったそうです。
そんな日もあるのかもなと特に気にもせず、いつものように村長の家に向かったそうです。
村長の家に着きノックをしても出てこない、大きな声で呼びかけても出てこなかったので留守の時間帯だったか?と思った商人は少し待ってみるかと思い周りを見渡して不思議なことに気がついた。
大声を出していたから両隣にも聞こえているはずが、その住人も出てくる気配がない。
村長が留守でも近所の人が出てきてくれるはずなのに…
何回か村長が留守の時、荷物を受け取ってくれていた人と村長を呼びに行ってくれていた人の顔を思い出す。
その2人も出てこない今、流石におかしいと思った。
皆風邪をひいて寝込んでいるのか?
それとも何かの流行病で床に就いているのか?
だが風邪だったら咳が聞こえるはずだ、そんな咳ひとつ聞こえてこない。
あまりにも静かな村に商人は恐怖する。
商人は恐る恐る村長の家の玄関の取手に手を置いて、開くか確認する。
キィと玄関が開く。
そぉっと家の中を確認しながら入っていく。
人がいる気配がない。
リビングまで歩みを進める商人。
生活感のある部屋が視界に入り、荒らされた様子はない。
寝室を確認しても村長の姿はなく、他の家で一緒に動けず床に就いているのだろうかと思い、隣の家を確認したんだそうです。
中に入りキョロキョロ見渡す商人はダイニングテーブルに目を止める。
ダイニングテーブルの上には食事をしていたらしき食器類。
中身がまだ残っている。
食事中具合が悪くなって寝室で寝ているだけかもしれないと自分に言い聞かせるようにして、寝室を覗く商人。
しかし寝室の中にも誰もいなかった。
他にもトイレなど覗いてみたがいない。
他の家はどうなのだろうと同じように確認したようですが、どの家も同じだったようです。
それで慌てて戻って来た。
「ーーと言うわけです。同じ様な報告を各国のギルドからも上がってます。第6騎士団も調べてくれるそうですがギルドにも依頼が来ました」
ミーナの話が終わり、俺たちは顔を険しくする。
そしてルベルが話し出す。
「騎士団の仕事は殆どが警護や討伐メインで動いてるしね。戦争になった時命をかけて国を守ってくれるのはいいけど、余計な仕事は出来損ないのクズと上の人間に言われてる第6騎士団だけに任せるのはどうかと思うけど」
「…今の第6騎士団の団長はリュシアンだと聞いた。これから変わっていくだろう」
「あぁ〜あの公爵家の長男坊様ね。しかし、なんで公爵の坊ちゃんが第2騎士副団長から第6騎士団長になるのかわからねぇな」
「今は騎士団の話なんてどうでもいいのよ!村人全員が消えるなんておかしいでしょ!」
フィリアがルベルの頭を叩く。
「いてぇ〜叩くことないだろ」
ルベルは頭をさすりながらフィリアに文句を言い出す。
それを無視してヴォルクが話し出した。
「何か痕跡があれば魔物か山賊にでも襲われたと推測できるが、そんな痕跡もないのだろう?」
「はい、先ほども申しましたが荒らされた形跡はなく金品もそのまま残っていたそうです」
「他のとこも同じ内容なのかしら?」
「はい、現在この国で分かっているのは計3件の報告が上がっています。
あと分かっていることは襲われた村の人たちには魔力がなかったって事だけです」
「同一人物の仕業ってこと?」
「第6騎士団長もギルマス達も最初はそう考えたそうです。ですが、移動手段を考えたら集団での仕業ではないかと。馬車だと入国する際確認しますし人数が多いと印象に残りますから。あとは転移魔法が使える者なら可能かと思いますが…」
「そんな高位スキル使える人間なんていないわよ。使えてた人間は今から50年前の勇者だけよ?」
「そうなんですよね。なのでギルマスたちは集団での可能性と鳥人族や竜族などを調べるみたいです。それでも他に手がかりが見つかる可能性も高めて、高ランクの信頼できる冒険者に依頼を頼んでるんです。他のギルドにも高ランクの信頼できる冒険者が来た時には協力するように通達済みです」
空を飛べる獣人族なら時間もかからず、人を運ぶことも可能だろな。
しかし魔力のない人間を攫ってまで何があるんだ?
奴隷にする為に攫ったのだろうか?
俺が考えているとルベルが話し出す。
「てことは、俺たちは信頼できる冒険者ってことかな?」
手に顎を乗せ微笑むルベル。
「はい。皆さんは仕事も早いですし依頼は完璧なのでギルマスが話しとけと言っていました」
ルベルと同じようにミーナも笑顔で応える。
ここのギルマスは俺たちの本性を知りながらも冒険者として1人の人間として見てくれる。
数少ない俺が信用できる人間だ。
「どうするヴォルク?」
「…依頼は手がかりを見つけるだけでいいのか?期限は?」
「依頼は犯人もしくは犯人の手がかりを見つけることと村人を見つけることです。今回の件は謎が多いですので期限はありません。手がかりがなくても週1、2くらいに報告はして欲しいそうです。もちろん手がかりが見つからなくても少なからず報酬は渡すとギルマスが言っていました。今は少しでも情報を集め村の人たちを見つけたいですからね」
「分かった。依頼を受けよう。俺たちはまずどこに向かえばいい?」
「ありがとうございます。皆さんにはまだ詳しく調査をしてない東の村に行ってほしいのです」
ミーナは地図を広げ村の場所を指す。
「ここだとネレス王国の領域だろ。それなのにこちらが調べろと?」
俺は怪訝な顔をする。
「この国での被害報告は正確に言えば2件なのですが、ネレス王国から応援要請が届いたんです。あちらの方が被害が大きく人が足りないと…ギルマスは昨日報告に上がった北の村に他の冒険者と早朝から出て行ってしまって。信頼できる冒険者は数が少ないのでヴォルクさん達にお願いするしかないんです」
ミーナがすまなそうな顔をする。
「しょうがないんじゃない?あのネレス国の騎士団だよ?それに高ランクの信用できる冒険者なんてまず行かないでしょ」
ルベルは頭に手を回して言う。
「ええ、なのでネレス国のギルドには冒険者に協力するよう通達は出してないんです。あちらの騎士団は調査してるみたいですが…」
ネレス王国はいい噂はない。
地位と金が全てだと思ってる国だ。
悪巧みするクズな人間達の集まりの国って言ったほうがいいだろうな。
ネレス王国は他の国から煙たがれている国だ。
「あの国の騎士団も信用できないわね。被害が多いってどのくらいなのかしら?」
「こちらの情報では6件ですね」
「この国より多いわね。他の国は?」
「北が3件、西が1件ですね。帝国はまだそのような情報は入って来ていません」
ふ〜んと難しい顔をするフィリア。
この世界の地図を簡潔に言うと東西南北にそれぞれ国があり、その中央に帝国がある。
「取り敢えず行ってみるぞ」
「いいんですか?」
ミーナはネレス王国付近だったから承諾してくれないと思っていたのか驚いている。
「他に人はいないんだろ?俺たちも冒険者だ。必要ならどこにでもいくさ」
「ありがとうございます!」
「ギルマスにもそう伝えといてくれ」
「はい!よろしくお願いします!」
ミーナから村の正確な位置を教えてもらい準備を始める。
必要な食材を買い出ししてる間、ギルドの方で馬車を調達してもらう。
そして準備が終わり、すぐ出発する俺達。
おかしな部分、誤字脱字があれば教えて頂けたら幸いです!
読み返して編集する事が多々あるかもしれませんがご了承ください(泣)
思いついたら一気に書いてしまうので…汗
あくまでも作者の妄想で書いているものなので誹謗中傷はお辞め下さい。。。