異世界人に出会う【1】
召喚された国から追放されて行く当てもなく、取り敢えず道らしき道を歩いている。
最初はちゃんと整備された道だったが、離れるに連れただの土としか言えない。
そろそろお腹が空いた。
外はあと数時間で暗くなるだろう。
暗くなる前に森の中で、食べれそうな木のみでも見つけようかと思います。
幸い?なのか周りは森、森、森。
最初は草原だったのに歩くにつれ今は両脇が森です。
木の実を探して森の中に入ったのは良いが見つからない。
異世界なら森の中に入れば魔物がいるはずだと周囲を確認しながら食べられそうなものを探しているが、魔物も出てこず、食べるものも見つからず、森の中を彷徨い続けてどのくらいたっただろうか。
「はぁ…」
汗をダラダラ流し木を支えに手を置いてゼーハーしてるリア。
体力には自信があったが、暑さと喉の渇きに流石に限界がきた。
持ち物と言ったら銃とスマホとタバコとライターと携帯灰皿。
上着を脱いで腰に巻く。
外は真っ暗になり、辺りは何も見えなくなっていた。
今木の上に登っても何も見えないだろうしな。
その前に前すら見えなくなってきた。
これは困った。
暗い中歩くのは危ないし、スマホの充電は減らしたくない上にライターもガスがなくなるのは困る。
一旦休憩して何か策がないか考えよう。
木に寄りかかり座り、タバコを取り出し火をつける。
吸い込んだ煙をフゥーッと吐き出しながら上を向く。
元の世界の生活から召喚されて今の現状までを振り返る。
「あっちの世界に未練はない」
しかし、この状況は別だ。
衣食住に困らない生活がしたい。
そして、ふと思い出す。
鑑定された時にスキルが秘匿されてて見れなかったこと。
城から出たら確認しろと書いてたっけ。
片眼鏡野郎は鑑定って呟いて見ていたから…
「鑑定」
呟いたのはいいものもステータス画面は出てこない。
代わりに▼木や▼雑草など沢山の記号と文字が出てきた。
「目が…!どうやったら消えるんだろう?」
その瞬間フッと消え、さっきまで見ていた景色に変わる。
「こう言う使い方もできるのね。鑑定じゃないなら、定番の…ステータスオープン?」
ブンっと画面が現れた。
「うん、本当に定番ね」
ステータス画面を見ていく。
【名前】 リア
【年齢】 21歳
【レベル】 1
【スキル】 ライト
サーチ
※現在役に立つスキルは上記の通りです。
知り得たスキルはいつでも使えます。
困った時はステータスを確認してください。
あの時も思ったけど、私のステータス画面おかしいですよね?
スキルって全部表示されるはずじゃ?
疲れのせいか深く考えるのをやめ、ライトってあのライトですかね?
周りを明るく照らすやつと適当に思い浮かべるとぼんやりとした明かりの球体が現れた。
「まだ言ってないのに出てきた…?」
焦りながら球体を見る。
「使えたのはいいけど、ちょっと暗い」
LEDみたいな明るさがいいんだけど、と頭の中で明るさを思い浮かべるとパァッと明るくなった。
「思い浮かべれば調整できるってこと?」
光っている球体をツンっと突っついてみる。
当たり前だが特に何も反応がない。
ただ光ってるだけ。
何も起こらないのでもう一つのスキルでも試してみようか。
サーチって事は周辺を調べられる?
と、また頭の中で思い浮かべると
視界が変わり空を飛んでるような感覚になる。
ドローンみたいな感じだろうか。
今度も唱えてもいないのにスキルが使える事に驚いたが、頭の中でこんなスキルかなって想像すればいいのだろうと解釈した。
切り替えて改めて見る。
近くの周辺には森しか見えないが、所々に▼マークとスライムやゴブリン、ホーンラビットと書かれている。
うん、魔物がいるってことかな。
この赤い丸は自分がいる位置ってことだろうか?
周辺は何もないし、村や川とか休める場所はないのかと考えると、少し範囲が広がり▼村と出てきた。
きっとここに村があるんだろう。
次に森の中からこの村に行くにはどう行けばいいだろうかと悩むとポンっとクネクネした線が出てきた。
「まるでナビ。神ですか?」
ボソッと呟いてしまったリア。
試しに少し歩いてみると赤い丸が動く。
やっぱりこれは自分がいる位置を示しているんだ。
サーチの使い方が少しわかった。
ついでに食べれるものが見つからないかと思っていると▼ジョミズミと追加された文字が出てくる。
その場所まで行くと赤い小さな実があった。
うん、サーチで見つけちゃいましたね。
イメージ的にはブドウではないけど二回りくらい小さい一つの房に小粒が何個もある感じ。
食べれるのか不安になる。
どんな食べ物なのだろう…
サーチじゃ名前と場所だけでどんなものかは説明してくれない。
鑑定でわかるかな?
でもさっきのようになったら…むむむっと悩み鑑定を使ってみる。
画面が出てきて覗き込む。
【名前】 ジョミズミ
【特徴】 生食可
酸味がありリンゴのような食感
【味】 甘酸っぱい
と書かれている。
一口食べてみると書いてある通り甘酸っぱくて、リンゴのようなと言うよりリンゴだなって思った。
歩きながら食べようと一房採る。
これで口の中が潤って、少しはお腹も満たされるだろう。
ジョミズミを食べながら案内通り歩いていると、離れたところに▼ゴブリンと出てくる。
こちらに向かって動いてるみたいだった。
走っているのか動くスピードが早い。
このままでは遭遇しそうになると思い足を止めた瞬間、それを回避するかのように線が変わる。
この子マジ優秀!
と思いながらルートを確認して走る。
銃弾を減らすわけにはいかない今、それ以外に武器を持っていないので戦いは避けたい。
「何か武器を見つけなければ…」
呟きながらゴブリンと距離を離す。