天使2人
【ヴォルクside】
「どう思う?」
ギルマスと別室に移動して腰を下ろしてから一つ大きなため息をついたギルマスが俺に聞いてきた。
「…可能性は大きいだろうな」
「だよなぁ」
ギルマスはあ゛ぁ゛〜と言いながら頭をガシガシ掻く。
「嬢ちゃんの処罰は騎士団に引き渡さないといけない。だが、もし嬢ちゃんが本物なら騎士団には手が追えず国王に話がいく。そうなるとどんどん話が大きくなるぞ」
「分かっている」
「今他国も謎の事件に加え、討伐も増えてきたせいでピリピリしているしなぁ」
「一度話を聞いてこようかと思う」
「あ?誰にだ?」
「………」
「あぁ〜」
ギルマスは察したのかそれ以上は何も言わない。
「直接話をして決断した方が早いだろう」
「じゃ、それまで嬢ちゃんの事は俺がなんとかする」
「あぁ。天狐も一緒に頼む」
「天狐か…嬢ちゃんの飯さえ食えれば大丈夫だと思うようにする。ルベルとフィリアはどうする?」
「…フィリアを連れて行ってルベルは残ってもらう」
「ま、その方が俺も助かるがな。いつ出発だ?」
「説明をしてからすぐ向かう。早い方がいいだろ」
「あぁ。今回はフィリアも文句言わねぇだろうよ」
ギルマスは楽しそうに笑っている。
小言を言うフィリアは冒険者の中で有名な話だ。
まぁ、俺が休まずずっと動き回ってたからなんだが…
ここを拠点にし始めた当初ギルド内でスキルを使って爆発させたこともある。
まぁ、犠牲になるのはルベルだから俺に被害が来るのは少ないがあの時は流石にヤバいと思ったなと遠い目をするヴォルクだった。
【リアside】
話が終わり2人は戻ってきて、これからの事を説明した。
話の内容に不明な点はあったが、結論からすると私の処分はヴォルク達が今から会いにいく人の判断で決まるらしい。
それまではルベルと天狐と一緒にギルマスの家にお世話になる。
最後に両親が身につけていたものとか何かないかと聞かれ母がずっと身につけていたネックレスを形見として付けていたのを見せる。
ヴォルクは戻ったら返すから借りても良いかと言ってきて悩んだ。
私の証拠という事で持って行きたいと言われ、意味不明だったが真剣な顔で見つめられては頷くしかなかった。
ちょうど話が終わった時
「パパ〜?」
「こら、アンジュ!」
そこには女の子2人がいた。
「パパ〜お話終わった?」
舌足らずの小さい女の子が扉から顔を覗かせトテトテと近づき、ギルマスに抱っこされた。
「なんだアンジュ、寂しかったのか?」
デレデレの顔をしたギルマスがその子に聞く。
「うん」
その子がギルマスをギュッと抱きしめると、ギルマスはもうモザイクがかかりそうなほど顔がやばいことに…
「パパごめんなさい。ちゃんとアンジュを見てなくて」
もう1人の女の子にいいんだと頭を撫でるギルマス。
「……って、パパ?」
【パパじゃと!?】
私はやっと理解できた頭で呟き天狐は叫んだ。
「え、パパ?ギルマスと女の子2人がですか?こんな可愛い子達がギルマスの娘ですか?こんな筋肉ムキムキゴリマッチョ脳みそまで筋肉でできてるんじゃないかと思うこの筋肉バカハゲ坊主の娘ですか?似てなさすぎやしませんか。寧ろ似てるところありませんよ?こんな可愛すぎる天使2人がギルマスの娘ですか?まさか誘拐して…痛っ」
ルベルやフィリアも私の言葉に頷いている。
「お前初めてそんなに長く話したな。それも真顔で…所々毒吐いてるし」
珍しくヴォルクがツッコミ入れる。
そしてゴンっと鈍い音と共に拳骨を食らうリア。
天狐は凄く痛そうな拳骨されたリアを見て、同じことを思っていたが、口に出さなくて良かったと前肢で口を塞いでいた。
「誰が誘拐してきたって?正真正銘俺の子だ!俺の娘達が天使なのは当たり前だボケが!それと俺は筋肉バカじゃねぇ!」
「ハゲ坊主は否定しないんだ」
ルベルが小さく呟くとギロっとギルマスに睨まれ口に手を当てる。
私は頭をさすりながら女の子2人とギルマスを見比べる。
「本気で似てる要素がない…」
またもや拳骨を食らい頭を抑えながらしゃがみ込む。
「お姉たん、だいじょぶ?」
小さい子が降りるとバタバタしてギルマスに降ろしてもらうと、私の元にトテトテと近寄ってきて頭をナデナデしながら聞いてきた。
「かっ…てんっ…」
痛みで少し潤んだ瞳をその子に向けると、あまりの可愛さに言葉にならなかったリア。
可愛い。天使。と言いたかったみたいだ。
ここまで読んだ皆様にはもうお分かりだろう。
常に無表情ではあるが、リアは可愛い&モフモフが大好きである。
この二つを目の前にすると若干キャラが変わるのである。
自然と手が伸びてギュ〜ッとその子を抱きしめる。
「パパ、ヒドイ、いたい、いたい」
と言いながら頭を撫でてくれる天使。
「父がすみません。大丈夫ですか?パパ!女性になんてことするの!」
もう1人の子が私を心配した後ギルマスを叱る。
その姿と娘の言葉に傷ついたギルマスが慌てふためき、泣きそうな顔で謝っている。
正直泣きそうな顔がコワイ…
「お姉たん、だいじょぶ?」
「大丈夫。ありがとう。…可愛すぎる」
もう一度聞いてきたその子に返事をし、またギュッと抱きしめる。
女の子はフワフワのウェーブがかかった肩まである髪にまん丸のバイオレットの瞳。
もう1人の女の子も同じ髪の同じ瞳。髪の長さが違うだけで姉妹はそっくりだ。
この小さな天使が成長した姿がもう1人の女の子だろうと誰もが思う程2人は似ている。
「そろそろ俺の娘返せ」
私がいつまでも抱きしめていることが気に食わないギルマスは拗ねている様子。
「パパ、ごめんなしゃいしてない、めっ!」
と小さい天使に言われて土下座して謝ってきた。
娘には勝てないのは分かったけど、ギルマス…それでいいのだろうか?
「改めて娘のアリアとアンジュ。俺がアンドリューだ」
「私はリアです。よろしくお願いします」
今更ながら自己紹介をする。
アリア達は母親が病死していない為、こうしてよくギルドに来ているみたいだった。
と言うか、ギルマスが2人を心配しすぎて離さないらしい。
勝手に作ったらしい2人専用の遊び部屋があるとか…親バカ、過保護ですね。
しかし2人を見るとそうなっても仕方がないと思う。
だって私にも天使にしか見えない。
「母親似で良かったですね」
またもや拳骨を食らった。
そんな中またノック音がしてギルマスが返事をするとミーナが袋を手に持って入ってきた。
「ギルマス頼まれた物買ってきましたよ」
「悪かったな。リアに渡してくれ」
ミーナは1つ返事をして私に袋を渡す。
「これリアさんのです」
私は袋を貰って首を傾げながら袋の中を見た。
「服??」
「おめぇのその格好は目立つからな。いつまでもヴォルクのマントで隠すのもアレだろ」
「すみません。私が勝手に決めてしまったので好みじゃないかもしれませんが…」
「いえ、わざわざありがとうございます。助かりました」
私はミーナに頭を下げる。
「いいんですよ。これも仕事ですから。じゃギルマス私は本業に戻りますよ」
「おう。ありがとな」
「ギルマスありがとうございます。今お金ないので後でお返しします」
「気にすんな」
その言葉を聞いて、これからお世話になるから美味しいご飯やお菓子を作ってあげようと決心したリアはギルマスではなく、アリアとアンジュを見ていた。
そして、ギルマスの隣の部屋(天使2人の遊び部屋)を借りて着替える。
ミーナが買ってきてくれた服はワンピースでフィリアみたいな露出が多い物じゃなくてホッとする。
フィリアの服は谷間は見えるし、お腹は出てるしスカートも短いし…あそこまで露出することは私には無理。
欲を言えば動きやすいショートパンツがよかったとは決して言うまい。
この世界にショートパンツがあるとは思えないし…通販紹介に売ってるといいな。