ギルド到着
そして本部ギルドまで辿り着いた。
ギルドの中はガヤガヤと騒がしい。
「ギルマスはいるか?」
カウンターに向かい1人の女性に声をかけるヴォルク。
ギルドに入る前に私だけ縄を解かれた。
枷はそのままだがマントで隠れて見えない。
「こんにちは。ギルマスですか?」
「あぁ、例の報告をしにきた。この男は事情を知っているようだから閉じ込めて置いて欲しい」
「分かりました。しばらくお待ちください」
最初の笑顔から少し表情を変えた彼女は奥の部屋へと消えていった。
しばらくしてギルマスらしき部屋に案内される。
A男は多分牢屋に連れて行かれたのだろう。
強面のゴツい男3人に囲まれてたからA男ビビってるだろうなぁ。
そして通された部屋の中には厳つい筋肉ムキムキのおっさんが座っていた。
私たちもソファーに座り、先程のミーナさんが飲み物を入れてくれた。
「こんなに早く報告が来るとは思わなかったぞ。それも犯人らしき人物付きだとは…」
「俺たちもだ。取り敢えず報告するから聞いてくれ」
ヴォルクは経緯を話し始める。
「色々驚きすぎてどこから突っ込めばいいか分からん…まずは見つけたのもを見せてくれ」
ギルマスは頭を抱えてため息をついたが、気を取り直して腕輪を出すように言った。
「これだ」
ヴォルクはギルマスの前に腕輪を置く。
「腕輪か…ここに何か…印か?」
「俺たちもそれがなんなのか分からん。けどそれの持ち主を捕まえてある」
「今そいつは牢屋か。後で話を聞くとして…次は天狐とは本当か?」
視線を天狐に移すギルマス。
「本当だ」
「確かに尻尾は3本あるが…どう見ても犬だろ?」
【余を犬呼ばわりするでない!】
フシャーっと威嚇する天狐。
「なっ!言葉が…」
言葉を発したことに驚く。
【余が真の天狐だと分からせてやろう】
そう言って天狐は元の姿に戻る。
それなりに部屋は広いが、本来の姿に戻った天狐は少し窮屈そうである。
「わ、分かった!確認した!部屋が壊れるから小さくなってくれ」
ギルマスは慌てて言うと、素直に小さくなる天狐。
「心臓に悪い…」
【ふん!貴様が信じぬからじゃ!これで分かったであろう?】
「あぁ。立派な幻獣様だ」
それを聞いて気分が良くなったのか尻尾をゆらゆら動かす。
ギルマスは一度咳払いをし、座り直した後
「次はこの嬢ちゃんだな」
と言いながら、顎に手を当てマジマジと私を見つめてくる。
「スキルはもちろん、別の世界から来たとか信じらんねぇな〜服装は確かに見た事ない服を着ているが…」
そこまで言いギルマスは一度立ち上がって、閉められた扉を開け廊下に顔だけを出し、大きな声を出した。
「ミーナ水晶玉持ってきてくれ!」
ミーナは返事をして水晶玉を持ってきて、ギルマスは彼女に何か囁いていた。
「悪ぃ〜がちっとばかしここに手を当てて俺の質問に答えてくれるか?」
私は水晶玉を見て、これはなんだろう?と思いながら素直に手を置く。
異世界から来たとは本当か、お前が村を襲ったんじゃないのかなど色々質問をされ素直に答えていく。
「ん〜嘘はついてねぇみてぇだから信じるしかねぇな。だが人を殺したってなっちゃあ…しかし嬢ちゃんを罰したら国が天狐に滅ぼされる…頭が痛くなりそうだ」
「もう1つ見てもらいたいものがある」
「あ?見てもらいたいもの?」
ヴォルクは一度頷いた後フィリアの名前を呼ぶ。
フィリアが詠唱を唱えると髪の色が元に戻った。
「なっ!この色…っ!」
ギルマスは私の髪を見て驚き立ち上がる。
「…嬢ちゃん、もう一回水晶に手を当ててくれ」
また素直に水晶に手を当てる。
「嬢ちゃん、その髪は地毛か?」
「はい」
ギルマスはマジマジと水晶を見つめる。
「…その髪の色は嬢ちゃんがいた世界にもいるのか?」
「染めたりしてる人や稀に近い色の人はいますが、私と同じような色はいなかったと思います」
「…嬢ちゃんはあっちの世界の人間で間違いないか?」
「4才以前の記憶が曖昧ですが、記憶ある限りあちらの世界の人間で間違いないと思います」
「記憶が曖昧?親に聞いてみなかったのか?」
「親は私が7才の頃に居なくなりました」
「嬢ちゃんの両親の髪の色は?」
「父が私と同じです。赤は入ってません。母が赤でした。しかしあちらの世界では目立つのでウィッグを被っていましたね」
「うぃっぐ??」
「かつら…と言えば分かるでしょうか?」
「かつら?」
「自髪とは別の髪によって、自毛の少ない状態を補うものです」
「そんな便利なものがあるのか?どうやって手に入る?」
ギルマスが目をキラキラさせる。
「…こちらの世界で手に入るかは分かりません」
通販召喚に売ってるかもしれないが、ギルマスの顔を見つめて答えたリア。
「そ、そうか…」
ギルマスよっぽど欲しかったのだろうか。
手に入ったとしてもギルマスは似合わないと思ったことは黙っておこう。
「嬢ちゃんの両親の名前を聞いてもいいか?」
「父がジル、母がメリーでした」
両親の話を聞いてギルマスは腕を組んで何回も両親の名前をブツブツと呟いている。
「…ヴォルク、少し2人で話そう」
と言って2人は別室へと出ていった。
2人が出ていった後も沈黙が続き、この雰囲気にどうしたものかと思うリア。