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声の正体は【3】

全ての料理を食べ尽くし満足げな3人と1匹。

A男の存在は食事中すっかり忘れられていた。

騒ぐことを諦め、俺も腹減ったな〜と羨ましそうに見ていたことは誰も知らない。


天狐も作った料理全部味見をしていた。

現在隣で仰向けに寝てゲプっとゲップをし、ポッコリお腹に手を置く天狐。

食っちゃ寝する親父かっ!っと思うが、その姿もまた愛らしい。


ーーーこんなに美味いご飯は初めてじゃ


「満足してくれたなら良かった」


リアはソッと手を伸ばし天狐を撫でる。

抵抗されるだろうと思ったが、満腹だからなのか、もしくはよっぽどご飯に満足したのか抵抗してこない。

リアはここぞとばかりに我慢していたモフモフを堪能した。







「そろそろ話してくれないか?」


しばらく撫でていると、リアに撫でられて気持ちいいのか、トロンとした目で尻尾をユラユラと動かす天狐を余所にヴォルクが話しかけてくる。


【そうじゃな。今の余は気分が良い。教えてやるのじゃ】


ムクリと起き上がり座って話す天狐。


「天狐が…」


「マジか?」


「……」


話せるとは思っていなかった3人。

内容はリアが通訳すればと思っていたが直接話せるとはーーー。


先程何を見ても聞いても驚かないと決めたのに、ものの数時間で終わった。


人と会話ができると言うことは、それ程まで強力な力を持っている特殊な幻獣だということだ。

幻獣だから話せるとは限らない。


【む?余の声が聞こえるはずじゃが聞こえぬのか?】


「…いや、聞こえてる」


【聞こえておるなら反応せぬか。これだから人間は…】


「直接会話ができると思わなかった…すまない」


【ふん。それで余に何が聞きたいのじゃ?】


ヴォルクと天狐が会話をしてる中、ルベルとフィリアはまだ呆然としていた。

リアは二人の会話を黙って聞く。


「天狐が襲われたって言う話を聞きたい」


【そうじゃな…簡潔に話すと余の幻影を破り襲ってきた。そこの同じマントを着た数人の1人が瓶を取り出し余に投げたのじゃ。瓶を投げた後麻痺スキルを放ってきての〜余はこれ以上は危ないと思い逃げてきたが奴らは追ってきて今の状況じゃな】


「本当に簡潔ね」


「瓶の中身が気になるな…」


【瓶の中からは魔物の匂いがしておったのじゃ。あれが余の体を蝕んでいたのだと思う】


「奴らは何か言ってなかったか?」


フィリアは少し呆れ顔をし、ルベルは真剣な顔をして、ヴォルクは天狐に訪ねている。


【ふむ、ちょっと待つのじゃ…あの方に天狐を連れて行かないと俺達があの化け物の餌にされるぞって言っておったのじゃ】


「あの方?化け物?」


「気になるなキーワードね」


「お前はあの瓶の中身が何か知らないのか?あの方とは誰のことだ?」


ヴォルクはA男に尋ねる。


「へっ!話すものか!」


A男は話す気はないと顔を背ける。


「ヴォルク、A男が話す気になるようにしてあげましょうか?」


「…いや、いい。どうせギルドに着けば嫌でも口を割るだろう」


ヴォルクは少し考えた後そう言った。

人を簡単に殺せる人間だ。

何をするか分からない、と。


「天狐の前の寝床がどこら辺か教えてくれるか?」


【ふむ。もう戻れぬからいいのじゃ】


ヴォルクは天狐に場所を教えてもらった。


「話は聞いたし、正体が天狐だとも分かった。早くギルドに戻るぞ」


「待て待て待て!天狐をこのままにするつもりか?」


腰を上げようとしたヴォルクに慌ててルベルが引き止める。


「動けるようになったのだから次の寝床を見つけられるだろう。俺達だけじゃ倒せないしな」


天狐の顔を見ながら言うヴォルクに天狐が話し出した。


【待つのじゃ。余は考えた。お前達と行動を共にしよう】


『え?』

『は?』


天狐の言葉に皆素っ頓狂な顔をした。


【余は逃げるのが疲れたのじゃ。次の寝床を見つけるのも大変なのじゃぞ?それにこの小娘と一緒にいればもっと美味いものが食えるじゃろ?】


「…」


「つまり…」


「リアの飯に釣られたってことか?」


「ギルドに着いたら私は奴隷落ちか死ぬかのどちらかだから着いて来てもご飯食べれないわよ?」


【なに!?小娘のご飯が食べれないじゃと!?】


「えぇ」


【…その国潰してやろうかの〜余は小娘のご飯が気に入ったのじゃ。国の一つや二つなくなっても問題ないじゃろ】


『待って待って!国を滅ぼされたら私(俺)たちが困る!』


悪巧みする天狐に慌てて止めるルベルとフィリア。


【そうでもしないと小娘のご飯を食べれないじゃろ?余は小娘がもっと美味しいご飯を作れると踏んだのだ!】


「ちょ、ヴォルク!なんとか言ってよ!」


「このままじゃ俺たちの拠点がなくなる!」


2人はヴォルクの顔を見て必死に訴える。


「…国を滅ぼされるのは困るが、こいつの処分はどうなるかまだ分からん。だが話をしてみるから少し待て」


【小娘のご飯が食べられなくなれば国を滅ぼすからの】


「善処する」


2人の会話にホッと胸を撫で下ろした2人だった。


「それと俺たちと一緒に行動するなら小さいままでいてくれ」


【む?何故じゃ?】


「元の姿だと目立つ。その姿だとバレにくい。一つ欲を言えば3つの尻尾を1つにすれば尚更バレにくい」 


【人間とは面倒くさいのじゃ。余のプリティーな尻尾を1つにする訳ないじゃろ】


「そうです。尻尾は3つでいいです。天狐に何かする奴等がいれば私が殺しますから」


リアは天狐を抱きしめてヴォルクを睨む。


「…好きにしろ。だが殺さず生かす事が条件だ」


そう言ってさっさと歩き出したヴォルク。

それに着いて行くフィリアに、私も着いて行く。

ルベルは「ちょっ!待ってよ!」と騒ぎながらA男の縄を解いていた。

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