第00話 かえるの王さま
ある国に美しい王女さまがいました。
ある日、王女さまが森のいずみにおうごんのマリを落としてしまい、泣いていました。
するとそばにいたカエルが、
「わたしを王女さまのおともだちにして、おなじ皿からしょくじをして、おなじベッドでねかせてくれるのなら、あのマリをひろってあげます」
と言いました。
王女さまがうなずくと、カエルはよろこんでマリをひろってきました。
王女さまはカエルからマリをうけとると、一人でおしろにかえってしまいました。
つぎの日、王女さまが王さまとゆうしょくをとっていると、カエルがおしろにやってきて、やくそくを守るように言いました。
わけをきいた王さまは、カエルをテーブルにすわらせ、王女さまとおなじお皿でしょくじをさせました。
お皿をなめるカエルのながい舌をみて、王女さまはきみわるがりましたが、がまんしていっしょに食べました。
しょくじがおわると、カエルは王女さまといっしょのベッドでねると言いました。
王女さまはカエルといっしょにねるのがいやで、泣いてしまいます。
しかし、王さまはいっしょにねるように、王女さまに言いきかせたのでした。
王女さまはカエルをへやのすみっこにのこし、一人でねようとします。
カエルは言いました。
「わたしをベッドに上げてください。さもないと、王さまに言いつけますよ」
とうとう王女さまはおこってしまい、カエルをへやのかべにたたきつけました。
カエルは手足がもげてしまい、じめんにとびちりました。
するとどうでしょう。ばらばらになったカエルの体からけむりがたち、もやのなかから王子さまがあらわれました。
じつはカエルの正体はとなりの国の王子さまで、わるいま女によってまほうをかけられていたのです。
王子さまは王女さまにけっこんをもうしこみ、二人はふうふになって、いつまでも仲良くくらしたのでした。
めでたし、めでたし。
― 童話『かえるの王さま』より ―