1品目 イート湯葉オン・ザ・ソーラーパネル
他の作品を長らく投稿してなくてすみません。一括で大幅な改稿をしようかと検討中です。今回のはなんとなく思いついたので忘れないように書きました。次回投稿についてはだいぶ先になると思うのでそこんとこを踏まえた上でお楽しみください。
飯本高校料理研究部。なぜか本校舎の調理室ではなく校門の近くのプレハブ小屋っぽい建物に部室を持つ。謎なのだが料理研究部の部室であるため備品は自由に使える。去年同好会として設立されたものが今年晴れて部となった。
「あやと〜。ラボ行こうぜ〜。」
「はいよー。」
僕は宇島文人。郷土料理と和菓子が好きな至って普通の高校生。声を掛けてきたのは、磐城大智。中学からの友達で無類の洋菓子好きである。
「んで、今日何作るんだっけか?」
「確か湯葉だったはず。」
「は?俺の聞き間違い?」
「いや、大智の耳は正常だよ。湯葉。」
「それ料理じゃねぇじゃん。俺でも分かるぞ。」
「はる先輩が湯葉と赤味噌の味噌汁を一緒に食したいって言ってた。」
「えぇぇ…」
「もも先生も流石に止めてたよ…」
「もしかしなくても押し切ったな、はる先輩。」
「当たり。それだけじゃ足りないから何か他に作るらしいけどね。」
「それ俺が作っていいかな?」
「もも先生に聞いてみたら?」
「そうだな。」
昇降口から出て1分なぜか若干距離のある校門のすぐ横に料理研究部部室-通称:クックラボ-が見えてくる。プレハブっぽいがプレハブよりは大きいそこそこしっかりした建物。それの横には小規模だが柵に囲まれた田畑がある。料理研究部のモットーは『なるべく1から自分たちで作る』だそうだ。そんなこと言って
ラボを建ててすぐにソーラーパネルを設置したらしい。
「しゃーす。ありゃ、誰もいない。」
「こんちくわー。ほんとだ。」
「んじゃ準備しとくか。」
「賛成。」
ロッカーに荷物を突っ込んで、エプロンを着る。隣の倉庫からホットプレートを3台出す。冷蔵庫に入っている豆乳はなぜか自家製だ。
「あやと〜。味噌汁も作るんだろ〜?」
「赤味噌でね〜。間違っても白味噌で作らないでね〜。」
「…わかってる。」
「こんにちわぁ。あらぁ2人だけぇ?」
「そうだぜー。」
今入ってきたおっとり少女は篠ノ井夕香。京都生まれの京都人。和菓子好きだから僕とは話が合うが、大智とはよく言い合っている。いつも大智が言い負けて僕に助けを求めるが僕は和菓子派。故に大智は僕からもズタボロにされる。
「和菓子を舐めてますの?」
「あぁ?そっちこそ洋菓子なめてんだろ。」
「今度は何の言い合いしてんの?毎度毎度飽きないねー。」
「「文人はどうなんだ(の)!」」
「え?もちろん和菓子。」
「グハァ!う、裏切った…な…」
「いや、裏切りもクソもないから。もとからこっちだから。」
このように。
「…ちわ。うわっ、うるさっ…」
またまた入ってきたのは水沢楓。寡黙な毒舌製造機である。
「ちょっと、大智くん早よ準備してくれへん?もも先生に怒られてまうやん。」
「こっちのセリフだ!さっきから動いてるわ!」
「夕香、大智、うるさい…。虫になってトカゲに喰われろ…」
あ、毒吐いた。
「やいやい、あんたたちー。外まで聞こえてるぞー。」
「あ、はる先輩。つかさ先輩も。」
「やあ、準備終わった?」
「あと少しです。つかさ先輩、あの2人止めてくれません?」
「わかった。止めてくるよ。」
さらにまたまた入ってきたのは佐原春音先輩と吉原つかさ先輩の2年生コンビ。そして、部活の初期メンバーである。はる先輩の気まぐれに巻き込まれるかたちでつかさ先輩も入ったらしい。
「はる先輩、もも先生来ないんですか?」
「明日からの出張の準備だってー。終わったらくるらしいよ。代わりに数学番長が来るらしいよ。」
「げぇぇ、マジか。」
「なん?怖いん?大智くん、いつも番長の授業で寝とるからなぁ。」
「う、うるさい!」
「図星…」
「グハァ!」
「雑談はいいから、準備準備!」
準備完了。んなわけで調理開始。
☆
豆乳を3台のホットプレートに注ぎ込みホットプレートを加熱していく。幕が張ったら取り出す。それを何度か繰り返してはい完成。※
☆
「できた。」
「できたなぁ。」
「すぐだった…」
簡単すぎる。というか料理かどうかすらわからない。ただし、これだけではない。赤味噌で味噌汁を作るのだ。
「大智〜。赤味噌はー?」
「はる先輩、そこにありますでしょ。」
「あ、ほんとだ。てか、なんで赤味噌なんですか。」
「なんとなく。」
「やっぱり。」
自家製の豆腐1丁を切る。鍋に水を入れて出汁(顆粒タイプ)を入れて火にかける。煮たったら、角切りの豆腐を入れて煮て、カットわかめを加えて煮る。最後に味噌を溶かし入れる。はい完成。万能ネギはお椀についだあとにどうぞ。※
「できたなぁ。」
「うん。」
「白ごはんが欲しくなる…」
「だね。」
「そう言うと思って!ほら白ごはん!炊いておいたよ。」
「「「ありがとうございます!つかさ(先輩)!」」」
「うんうん。」
「づがれだぁ〜!」
「ふにゃ!」
ご飯を炊いてくれたつかさ先輩に俺を言ったところで『みんなのももちゃん』こと谷山桃乃先生がラボに入ってきた。もも先生の声につかさ先輩が可愛い声を出して驚いていた。
「あぁ〜。いい匂い。みんな何作ったの?」
「湯葉と味噌汁ですよぉ。」
「ご飯もあるよ、ももちゃんも食べよ!」
「わぁ〜い。たっべるぞぉ〜。」
「じゃあ、行きましょ。ソーラーパネルの上に。」
「了解…」
「わかりましたぁ。」
「あの…毎回思うんですけど、なんで疑問もなくソーラーパネルの上で食べるんですか。」
「なんとなく。考えるな、感じろ!だよ、文人。」
そんな言葉を言ったはる先輩は綺麗だった、と思う。ただ、言った言葉がイマイチだったのでなんか変な感じだった。
ただ、ソーラーパネルの上で食べた湯葉は案外美味しかった。