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第八話 インキャ、ヨウキャ美少女の優しさに触れる

 宿題をやらなかったり、怒られたり、喧嘩した後の学校ってのは行きづらい。


 前日にあったことが頭の中を支配し、コントロールをしようとするんだ。


『CPUに異常発生! あと、1時間後に機能を停止します!』ってね。


 これは誰でもなる現象だ。だが、今日の俺は比較にならないほど行く気が失せていた。


 誰から入手したか分からないが、八坂宇佐(ヤサカ ウサ)は俺にloneを送ってきていた。


 どうやら宇佐は、放課後俺に用があるらしい。そして、それはきっと落とし前の話だ。


「はぁー......」

「どうしたの? 溜息ついちゃって」

「ああ...... ちょっとな」


 つい条件反射で返してしまったが、なんでこいつはここにいる......


「って! なんでお前が俺の家の前にいるんだ!!」


 結愛はマンションの前に立っていた。


「一緒に学校に行きたくて! いこ!」


 教えていないのに家の前に知り合いが立っていたら、どう思うだろうか。


 俺だったら、恐怖でエレベーターまで逆戻りだね。そんな状況だ。


 でも、ちょっぴり嬉しかったりもする。


 考えてみれば、超絶美少女が家の前で待っていることなんてありえない。


 それが今まさに現実に起っているんだ。嬉しいに決まっている。


 だが、ここで結愛と学校に行くという選択肢はない。


 俺はこいつのことをまだ信用しているわけではないんだ。


 いつどこで『あー、つまんない。影山君といるの飽きちゃた。インキャ乙』と言われるか分からないからな。


「いかないね」

「なんでーー!! ねーえー、白兎くん!」

「なんでって! 理由は特にないけどさ......」


 そうさ。俺は結愛のことを全然知らないんだ。


 知っているのは意外に優しいってことと、ストーカーってことくらいだな。


「じゃあ、俺は行くからな」


 俺は結愛を残し、学校までのいつもの通学路を歩いた。


 すると、結愛は一定の間隔で俺についてきている。


 まぁ、最短経路がこの道だから当然といえば当然だが、結愛の表情は暗く俯いている。


 そんな顔をされると流石の俺でも心が痛む。


 はぁー...... 弱くなったね、俺。


「い、一緒に行くか?」

「うんっ!」


 結愛はそう言うと密着するように俺の横を歩いた


 そしてそれは学校に着くまで変わらず、俺は多くの男子生徒から哀れみの視線を向けられていた。


 分かってますよ。分かってるって。


 でも、ちょっとくらい期待してもいいだろ?


 俺はそう思いながら教室に入ると、今度は宇佐が俺のことを見ていた。


 その視線はまるで『放課後、来なかったら殺すからな』と訴えているようだ。


 分かってるさ、宇佐さん。俺はもう変態として生きていくことを覚悟したんだ。


 どうせインキャだし、関係ねえ。策もない俺はついに開き直った。





 ◇




「影山! 遅い!」

「あー、わるいね」


『こっちはいつ死刑宣告されるかドキドキハラハラなんだ、遅くて当然だろ』って言いたいが、そう言えば事態はより深刻になる。


 何も言わずに、ただ謝る。これがベストなインキャ道だ。


「それで...... 話があるんだけど」

「ああ、分かってる。覚悟はできてるさ」

「そう...... なんだ......」


 なんでこいつはちょっぴり嬉しそうにしているんだ? どういうことだ?


「それでね、責任の事なんだけど、私、言いすぎちゃったかなって」

「それは本当か?」

「うん、だって結愛さんにも悪いし。私も影山のこと、何とも思ってないから」


 ん? なんでここで結愛が出てくるんだ?


 まぁ、いいか。


「それじゃあ!」

「なんで嬉しそうなの! まぁ、いいや! その代わり、条件がある」

「条件?」

「うん、これから1週間、私と一緒にいてほしいって思って」


 『私のパシリとして1週間従事したら許してあげるわ』ってことだな。


 あぁー、なんて優しいんだろ。俺は涙がでちゃうね。


 世の中捨てたもんじゃない。宇佐みたいな男らしい女もいるもんなんだ。


「そういう事か! ありがとうな宇佐! 女だけど見直した!」

「え、どういうこと?」

「え?」

「え?」


 俺はずっと宇佐のことを見つめていた。そして、それは宇佐も同じだった。


 何分がたったのだろう。いや、実際には30秒ほどだろうが、それほど長く感じられた。


 その沈黙を破ったのは宇佐だった。


「ま、まぁ!! そう言うこと!」

「お、おう。なんかあったらいつでも呼んでくれ! 駆け付けるから」

「え? それって......」


 なんでこいつは少し頬を赤らめているのだ。


 いや、分かったぞ。俺を沢山使おうと思っているのがばれて、恥ずかしいんだな。


 いいさ。1週間自由に使ってくれ。どうせ俺は敗者だ。


 そう、心の中でぼやいた。



読んでいただきありがとうございます!

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