第六話 インキャ、トラウマを克服しようと頑張る
俺はいつにもない真剣な表情の結愛に見惚れた。
学校帰りの学生や、仕事帰りのサラリーマン。そんな人たちが俺たちの横を足早に去っていく。
俺はそれを周辺視野で見ていた。
その光景はまるでスローモーションのようにゆっくりと動いていた。
それはきっと中心視野で結愛をずっと見つめていたからだろう。
「俺のどこがそんなに好きなんだ?」
俺は思わず言っていた。
言ってから、自分の過ちに気づくことは多々ある。まさにこれがその例だ。
あー、やってしまった。もう取り返しがつかない。
きっと『うふ。やっと勘違いしてくれたね! いんきゃくん、うける』そんな言葉が返ってくるのだろうな。
そう思っていた。
だが
「私、影山君、ううん。白兎くんの実は優しいところが好きなの。小さな子供を助けたり、私を助けてくれたり......」
結愛は真剣な表情で俺に告白していた。ごく一部の言葉を除き、俺の心に深く入り込む。
だが、おかしい。
ちょっとまて。小さな子供を助けたのは事実だ。でもあれは学校の帰りのことだ。
まさか、結愛のストーカーしてたよ発言は本当だったっていうことか!?
「それに、好きなところなんて全部だよ! エッチな漫画見てにやけてるところも、フィギュアの足を見てる白兎くんも全部が好きなの」
うわあああああ
う、嘘だろ......
結愛は俺の事をストーカーしていた。
恥ずかしくて今にも消えてしまいたい。
「そ、それってストーカーしていたってことだよな......」
「ストーカっていうか...... 気になって追いかけていただけかな!」
「じょ、冗談だよな......」
「ううん。ほんとだよ」
『気になって追いかけるのも、ストーカーも変わらねえよ!!』って突っ込みたかったが、今はそれどころじゃない。
とりあえず落ち着け俺。
整理しよう......
伏見結愛は超絶美少女だ。そんな彼女は俺の事をからかっていると思っていたが、違うらしい。なぜなら、ストーカーをしてたから。
そして、俺は結愛をどう思っているんだ?
正直に言えば、結愛のアプローチはとても魅力的だった。
その甘い誘惑に何度も挫けそうになった。
ということは、気になってはいたということだろうな。
だが、だがだ。結愛は俺の事をストーカーしてた奴だ。明らかに常軌を逸している。
そんな結愛と仲良くするのはリスキーだ......
そんな言い訳を必死に頭の中で並べていることに気づいてしまった。
俺は気づいてしまった。
いや、最初から気づいていたのかもしれない。
俺だって女性と絡みたいということに。認めてもらいたいということに。
その欲求には勝てなかった。
「そ、そうか...... ありがとな、俺の事を好きになってくれて」
「じゃ、じゃあ!」
「俺は付き合う気はない!」
「えぇー! なんでぇー! 可愛い子と付き合えるチャンスだよ?」
「少なくとも今はな......」
あまりにも意味不明なことを言うから突っ込むことを忘れてしまった。
『自分で可愛いって言うな』ってね
「ほんと!? やったー! 私の事すきになってもらえるようにがんばろーっと!」
「お、おう......」
なんだか照れくさくていいなこの感じ。小学以来の感覚だ。
女の子に好かれるのも悪くないな。
「じゃあ! 今からデートいこうよ!」
「そ、それくらいならないいぞ! でもな、俺はまだ好きじゃないからな!!」
「わかってるってー!」
小学以来感じたことのない甘い感覚がした。
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