第三話 私、恋しちゃいました
私、伏見結愛は犬の散歩途中、チャラそうな男の人に絡まれて困っている。
街行く男の人達は、その様子を申し訳なさそうにちらっと見ながら通り過ぎていく。
私はその様子に思わずため息をついていた。
いつも私に言い寄ってくるのに、こういう時には男の人達は何もしてくれない。
それって、本当に私の事好きなのかなって思っちゃう。
私は、自分で言うのもあれだけど、とても可愛い。綺麗な黒髪に、透き通るような肌。それに、胸だってそれなりにある。
そんな私は色々な男の人から告白されてきた。だから、分かるの。こういう時に助けてくれない人は、私のことが好きじゃないって。
「なぁ? 溜息なんてついてないでさー? 俺たちとちょっとお茶のむだけだろ?」
「そうそう! いいっしょ! 別に、変なことはしないよー!」
そんなわけがない。私の肩に手を乗せ、胸を見ているような人がえっちなことをしないわけがない。
あーあ。困ったなぁ。
どうしよ。愛犬のたろすも涙ぐんでるし。
時間の無駄だと分かってくれるのを待つしかないのかなぁー。
そう思ってた時だ。同じクラスの影山くんが私の目の前に立っていた。
「おい!! 目を潤ませて嫌がってるだろ!!」
「あ? なんだお前?」
「なあ省吾! こいつ見ろって! マジでインキャなんですけど! うけるっ!!」
「ハハッ!! それな! んで、俺たちに何の用ですか??」
「だから、目を潤ませて困ってるだろって!!」
「あー? 彼氏でもねー奴がでしゃばるんじゃねーよ?」
チャラそうな男の人は影山君の胸ぐらをつかんでいた。
でも、影山君は怯みもせず、男の人達を睨んでいた。
私はそんな影山君をかっこいいと思った。
だって、怪我をするかもしれないのに、私のために戦ってくれているんだもん。
「彼氏? なんのことだ? それより!!! 隣の本屋を見ろって!! 八坂宇佐がいるぞっ!!!!」
影山君は私を助けるために嘘をついてくれていた。
「おい! 嘘言ってんじゃねーよ!」
「てめぇ、ちょ、まてよ!!」
男の人達は追いかけてくる。
だからか、影山君はたろすのリードを持ってくれていた。
私が逃げるために。
私、その時に思ったの。影山君のこと好きかもって。
だから、その気持ちを確かめるために影山君のことをストーカーした。
すると、分かったの。影山君のことが好きだって。
アニメショップでえっちな漫画を見ながら、にやけていたところ。
コンビニでは美少女フィギュアの足をみて頷いていたところ。
トイレの後はファスナーが開いていることが多いところ。
女の子とは全く関わらない紳士なところ。
その全てがかわいくて、かっこよくて。
でも惚れた理由の一番は、小学生くらいの男子に虐められてた女の子を助けていたところ。
そんな、なかなかできないことをやってしまう影山君に私は惚れた。
影山君に抱き着いていると、そんな甘い記憶が甦る。
でも、影山君は相変わらず私のことを気にもしないし、悪口も言う。
はぁ...... 素直じゃないなー。
影山君が望めば、私を好きにしていいのに。
「影山君! 今度私とデートしない?」
「いやだね」
抱き着きながらそんなことを言えば普通の男の子なら『はい』と即答しそうなのに。
流石影山君だ。悲しいけど、感心してしまう。
でも、何回も拒絶されていると、私も自信がなくなってしまう......
もしかしたら、影山君は照れじゃなくて、私のことを何とも思ってないのかもしれないって。
それはとてもつらい。
私は影山君がいなければダメになっちゃうほど、好きになっていた。
だから、必ず影山君を振り向かせて見せる!
「えー、いこうよぉー!」
「膨らみをあててくる淫乱女とはいやだね」
「もぉー! 影山君は素直じゃないなぁ!」
私は影山君と言葉と体でスキンシップをとった。
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