92話『風太と宮崎は付き合っている』
「そういや廊下で妹とすれ違ったけど」
「お?」
「なんかずいぶんと元気じゃなかったか?」
「反抗期は過ぎたらしいからなぁ……」
「なんで涙流してんの?」
「それがなぁ『お兄ちゃん嫌い、あっち行って』って、割とガチで拒絶されたんだぞ! この気持ちわかんないだろうな!」
「いいや、わかるぞ。僕は昔猫を飼っていました、けれど大人になるにつれ、かわいがるにつれ次第に牙を剥かれ、噛みつかれ、引っかかれ……ま、ドンマイ。妹離れを祝して彼女が働くファミレスでも奢ってやろうか」
「バカにすんな、俺が奢ってやるよ」
僕はちょうど通りかかった櫻木に声をかけて僕ら二人は風太に奢ってもらうことに。
「今日、シフト入ってる?」
「入ってますよ? なんですかぁ? もしかしてくるんですか?」
「そうだよ? 愛しい愛しい彼を連れてね」
「――センパイ!」
顔を真っ赤にした宮崎にしばらく僕は背中をポカポカと叩かれた。最初は笑ってごまかせたが次第に痛くなってきた辺りで強制中断させた。
放課後を告げるチャイムが響き渡り、勉学から解放された生徒が教室を飛び出す流れに沿って大会で敗れ引退した風太と白濱改め菊池太陽を連れて宮崎がバイトするファミレスへ。
「いらっしゃいませー…………」
口をミミズのようにしてうつむいた宮崎。
「よう、制服似合ってんじゃん」
「お客様……こちらへ……」
うぅ、と羞恥心に今にも泣きそうになる宮崎に少しだけ申し訳なく思う。
ボックス席に座り、僕と風太が出口側。
「初々しいなぁ」
「ご注文お決まりの頃お伺いします……」
何もないところで躓いた姿を見てちょっと心配になる。
「その子が……」
「そ! 弟」
「あ、はい……えっと初めまして、櫻木先輩、ですよね?」
「お、私を知ってると」
「まぁ知ってるだろ、生徒会長だし」
「あ、はい……よく男子の中でうわさに……――っ」
僕は耳を赤くする菊池(弟)の太陽とやらを軽くにらむ。別に敵意はない。本当に。
「でどれ頼むか。今日は風太の奢りらしいしな、いろいろ頼もうなぁー」
けれど飛び切り高いものはこの店にはない。残念だが食べられる分だけしか頼めない。
呼び出され駆け付けた宮崎がハンディを構える。口元がプルプルとしている。
「おい旭、なぁに人の彼女を見てんだよぉおい?」
僕はパシッと風太の手を払った。
僕はすっと横腹をつねられ幸せを感じた。




