64話『イケメンは大方こんなもん』
ボトと音を立てて足元に落ちた茶色いボール。二回、三回とバウンドするたびに力を失っていく。それはバスケットボール。
「――った……イタァ」
「あー、ゴメンゴメン。大丈夫?」
ニタニタしながら男は言う。そんな僕からしたら、敵意ととる表情でも女子からしたら爽やかで、超イケている顔なのだろう。僕は訝りながら足元に転がったバスケットボールを拾い上げ、彼を目掛け投げる。が、緩く弧を描き二回バウンドしてコロコロと。
一年の頃はなかったけれど、こういうことはよくある話。ほかの生徒が僕を的にしようとしているのが何となくわかる。
そう格好よく予知してみるものの、僕の体は思考より早く動くことはない。
バスンと重たい衝撃が額に、しりもちをつく。
「あー、ゴメンゴメン、ゴールの下にいるからつい~まぁ許せって」
ミーティングが終わり、割り振られたチームで対抗戦。僕の身長は同級生と比べて中の下、特別小さい、ということはないが低めではある。卯月と同じ高さで水平に目が合う。
「オラァ!」
容赦のないタックルに僕はしりもちをつく。僕はすぐに立て直し、ボールを持つ先輩の側まで行く、ボールをもった手が顔を弾いた。速度と重さの乗った一撃。よろめいて倒れたら顧問である志田徹に怒られる。負けたチームは敷地十周。大体それで一日が終わり練習の時間などほとんどなくうまくなることなく排斥。
ちなみに志田徹は英語教師でもある。僕はこの教師が嫌いだったりする。
「ぼさっと立ってんじゃねぇよ旭! 邪魔だ――」「何もしねぇなら座ってろ!」
もはやチームメイトからですらこの仕打ち。この辺りについては技量が足りない、僕が悪いとわかっている。
協調性のない人間を運動部に入れたら協調性が付く。などということは絶対にない。僕はもともと群れなど作らず、協調性など不要に生きてきた。そんな人間を運動部に入れたらどうなるか、ストレスのはけ口で襤褸雑巾にされる末路は見えている。
試合が終わり、もちろん僕のいるチームの敗退。
「アイツ、マジやる気ねぇよな」「アイツのせいで負けたのに……」「アイツ、消えたらいいのに」「アイツのせいで練習時間が減るんだ」いつも通りの感情任せに吐いた言葉が隠すことなく聞こえる。僕は否定なく肯定する。人間だれしも最初は下手だ。僕だって初心者だし、下手なのが当たり前だ。それに負けたのは僕だけのせいじゃないだろう。君たちの練習が足りないだけだろう……。練習するにもこの環境だ、僕は悪くない。
僕はそう思いながら学校敷地外周を走る。
「お前が代わりに走れよ」
「なんで僕が」
「お前のせいで負けたんだ」
「僕だけのせいじゃないだろ」
「は? お前がこんなとこにいんのが悪いんだろ。それにサァ、お前みたいに弱いのがいるとやる気無くなんの、さっさと辞めたら? みんなのためにさァ」
僕は肩を突かれた。理不尽に思いながらも走ることにした。




