35話『その冷たい手、温めてあげる』
それから冬休みが終わり、クラスの中ではお年玉がいくらだったとか、クリスマスは何かもらったかとか、クリスマスに彼女と×××とか、そういった話を耳に挟むくらいには盛り上がっていた。
朝、僕らはいつものように学校へ向かっていた。いつもの通学路の路肩には圧雪が氷と化していた。駅周辺には融雪剤が撒かれているのでだいぶ歩きやすい。
「寒いねぇ」
「そりゃ冬だからね」
マフラーにコートに厚手の黒タイツ、寒さ対策は尽くした姿の櫻木が渡してくれたカイロを僕は手に握りポケットに突っ込んだ。
「この辺の雪は氷だよねぇ」
「雪国みたいに新しい雪が降るわけじゃないし、仕方ないよ」
「雪国のパウダースノーが恋しいねぇ」
僕と櫻木は同じように足元の雪だったものを蹴り飛ばしながら進む。氷はひゅりゅひゅりゅ小さな悲鳴を上げながら地面を滑る。路上の治安は悪く自転車に乗るのは怖い。
「旭」
そう僕の名前をいたずらな声で呼び、小さく砕いた氷の破片をうなじにこすりつけてきた。
「――ヒェッ。何すんだよ、死ぬかと思ったわ!」
実際僕の鼓動は跳ね上がった。急激な温度差でショック死なんて笑えない。
小学生のように無邪気に笑う櫻木は怒りを忘れさせる。
「手、冷えるぞ」
「確かに。超冷たい。温めないとだ」
櫻木の大きな瞳は僕のことだけをとらえていた。ぱちぱちと瞬き。僕はその小さな手を包むかカイロを握らせるか迷い、カイロを握らせた。僕の手は冷たいから逆効果だろう。
「まぁいいや。ありがと。でも私カイロあるから要らないよ」
「何なんだよ……」
「早くいかないと遅刻しちゃうよ?」
道端の氷で遊んでいたのは誰なのか。僕はそう思いながらもいつもと変わらず学校へ急いだ。




