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いろいろ探すには。

「あれってどこにある?」


 俺はカミラに聞いてみた。


「あれ?」


 そりゃそうだ、あれでわかるはずがない。

 歳食って言葉が出なくなり「あれ」「それ」などという言葉をよく言うようになっていたが、わざわざこっちに来てまで言わなくていいのに。


「食器」

「素材によると思う。木だと木工職人のところ。銀や錫だと金属加工職人だな」

「陶器は?」

「陶器は生産ができるところが少ない。だから高い。皿一枚で家が建ったりする」

「ふむ、軽くて割れない木の食器でいいか。どこにある?」

「市で売ってると思うけど。露店でもしっかりしたテントを張っている場所には高額なものを売ってるから」

「飛び込みじゃなくて常駐で店を出しているところを探せって事か」

「そうなるな。そう言うのはこっちの地区」


 俺たちははカミラに連れられて行った。


「この辺か」


 確かに小綺麗なテントを張り、扱っているものも飛び込みの場所よりは高そうだ。

 しばらく歩いていると、木製なのに薄い皿が並んだ店を見つけた。

 俺がその場に立ち止まると、


「気になるなら手に持ってお確かめください」


 と店員が言った。


「木製なのに薄いな」


 俺が言うと、


「堅アカシアを削っています。下手な金属では削れません。その分高くはなりますが、一生モノの食器です」

「コレとコレとコレとコレ、あとナイフとフォーク、スプーン……金属でもこの木で作られているものでもいい。それで一セットいくらだ?」


 俺はマグカップと皿、スープ皿、ちっちゃいサラダボウルのような容器を指差し、ナイフとフォークをセットで金額を聞いた。


「一セット銀貨五枚になります」

「じゃあ、十セット頼む」


 俺は店員に頼んだ。


「多いんじゃないのか?」


 カミラが聞く。


「客が居る時に食器がないのも困るだろ?」

「お前のところに来る客は、ろくなもんじゃない。飯を食べたりすることもないだろう?」

「まあ、ろくでもない客が来ないことを祈って買うって意味もある」

「ガルムがそう言うなら」


 そんな話をしているうちに、店員が食器を準備し、台の上に置いていた。


「各種十ずつになります。お確かめください」


 台の上にある食器を確認した。


「ん、問題ないね。はい、銀貨五十枚」

「確かに」


 大きな袋に入れた食器を抱え、人目のつかないところに行くと異次元収納で袋を仕舞った。


 次は調理器具、これもこの地区で済ます。

 大小のフライパンに大中小の鍋、各サイズのボール。包丁にまな板。お玉っぽいのとフライ返し、んー泡だて器もある。

 欲しいものを適当に買う。




「あとは食器棚とコンロだ」


 カミラに頼りっきりだな。


「棚は家具職人の店、コンロは魔道具屋。ただ、私にはあまり必要な物じゃなかったせいでよくは知らない。ガルム、こういう時は冒険者ギルドに行け紹介してくれる。朝イチの時間は終わっているから、受付も混んでいないだろうし」


 まあ、カミラもわからない事があるだろう。


 さっそく、


「じゃあ、冒険者ギルドへ行ってみるか」


 ということになった。


「ついでにこの子たちのギルド登録をしておこうか」

「ん? 登録?」

「ギルド登録をするとギルド証が出る。名前と名前、登録場所が表示されているから、この子たちの身分証明になるんだ。一人で生きていくようになった時あると便利。

「おーい、馬車に乗れぇ」


 おれが彼女たちに声をかけると、皆さっさと馬車に乗る。

 そして、冒険者ギルドへ向かった。



 道すがら、俺が周りにあまりよく見られていないことがよくわかる。

 冷めた目で見られたり、睨まれたり、石が飛んできたり。


 はあ、嫌われているなぁ。



 ギルドの前に馬車を停め手綱を柵に結ぶ。

 カミラについて、両開きの扉を開けギルドの中に入った。

 残っていた冒険者やギルドの職員が、


「何でガルムがここに?」

「あいつ、何で『大剣の……』と一緒に居る?」


 などと噂を始めた。

 カミラも想定していたのか、あまり気にしていないようだ。

 受付けに座ると、


「ちょっと聞きたい事があるんだけど」


 と言ってカミラは職員を呼んだ。


「何でしょうか、カミラ様」


 一人の女性職員が現れる。


「家具職人と魔道具屋を紹介してほしい?」


 カミラが言うと、


「家具職人と魔道具屋ですか? 冒険者であるカミラ様が必要な物だとは思えないのですが……。どのような理由でしょうか?」


 と返してきた。


「理由を言わなければいけないか?」

「いいえ、ただ心配なだけです。あのような男と一緒に居るというのが信じられません」


 俺は職員に睨まれた。


 ガルムの今までの行いからすれば仕方ないんだろうなぁ。


「まあ、しかし、仕事は仕事ですから紹介は致します」


 職員はファイルを出し、メモを取るとカミラに渡した。


「これが家具職人、これが魔導具屋になります。お渡ししておきますね」

「ありがとう。助かる。あと、そこの女の子たちを冒険者登録してもらえるか?」

「あのような小さな子を冒険者に?」

「冒険はあの子たちがしたいと思えばしたらいいこと。目的としては身分証代わりにするため」

「畏まりました。カードの原板を持って参ります」


 職員は受付奥の部屋へ向かった。


「相変わらず嫌われてるな」


 カミラが俺を見て言った。


「ああ、こういうのは何かイベントがないと改善されないもんだ」

「イベント?」

「昔の俺としてはあり得ないことをしないと無理だろうなぁ。俺の場合はいいことをするって事かな」

「いい事なら私たちにしてるだろうに」

「だから、カミラや彼女達の認識は変わっただろ? でも影響が小さい。多分カミラが『俺がいい奴に変わった』と言っても、だれも信用しないと思う」

「今は仕方ないか」

「そう、仕方ない」


 職員が戻ってくる。


「それでは、カードに手をかざしてもらえますか?」


 一枚のカードを受付けに置いた。


「じゃあ、アンナマリーから」


 カミラが言うとアンナマリーは受付けに座り、カードに手をかざす。

 するとカードが光り始める。

 光が収まると、そこには銀色に輝くカードがあった。


「ぎっ銀?」


 職員が驚いている。


「カミラ、銀だと何なんだ?」


 俺はカミラの耳元で囁いた。


「あのね、冒険者のランクはギルドカードが決めるの。神の恩恵があるとか、そういう金属だとか言われているけど理由はわからない」

「ほう、いきなり銀ランクの能力があるとカードが判断した訳か」

「そういうことになるわね。驚くのはわかる。ちなみに私が今、銀ランクだったはず」


 カミラがカードを取り出すと、金色に輝いていた。

 カードを見たギルド職員が驚く。


「あれ、金色。ああ、能力上がったからか」


 当たり前のようにカミラが言った。


 俺が紋章付けた時の上昇分ね。


 結局残りの三人も軒並み銀ランクだった。


「ガルム様は冒険者登録しないの?」


 アンナマリーが聞いてきた。


「ん? 俺は奴隷売買権の身分証明あるし」

「俺、ガルム様のランクを見たい」

「僕も見たいなぁ」

「私もぉ、気になりますぅ」


 デボラ、ユーリア、マルレーンもキラキラした目で俺を見ている。


「私も気になるな」


 カミラまで……。


「俺でも登録できるのか?」

「私としては登録してほしくはありませんが、登録はできます」


 ハイハイ、嫌われていますね。


「なら頼むよ」


 置かれたカードに手をかざすと、やはり光る。

 ん? 長くねえ? 眩しくねえ? 

 光が収まると、黒いカードが残っていた。


「腹黒いから黒いカードができたのかね?」

「僕らと違ってガルム様のカードは黒い。何の意味があるの?」


 カミラとギルド職員が固まっていた。

 先に復帰したカミラがギルド証をさっと受け取ると、


「ガルム、みんな帰るわよ」


 そそくさと冒険者ギルドを出た。


 なんか良からぬことがあったようだ。


 馬車に乗り、


「黒だと困るのか? 悪魔の心を持っているとか」


 デビル〇ン? 


「ギルドカードの色はランクを表すと言ったわね」

「ああ聞いた。だから、こいつらはギルド職員に驚かれたんだろ?」

「そうね、ちなみにカードのランクは下から木、銅、青銅、鉄、鋼、銀、金、プラチナ、黒プラチナだと言われているわ。大体の強い冒険者は銀で終わる。私はガルムに引き上げられたから金になった。まあ、これでも破格ね」

「そうなんだ」

「黒いカードは、黒プラチナ。昔話の勇者が持っているカード。私より強いから金ぐらいかとは思っていたけど」

「勇者ねぇ……奴隷商人が勇者ってのは無いな」

「まあ、昔話にはできないわね。多分あのままだとギルドマスターあたりが出張ってきただろうから、さっさと逃げてきたってわけ」

「おう、それでいい。今俺が欲しいのは食器棚とコンロだ。オッサンとの会話じゃない」



 職員に渡されたメモを見ながら家具職人の店へ向かった。


「どう見てもここだろ?」


 俺はカミラに聞いた。


「ここだな」


 カミラも同意する。


 様々な家具が通りにまでせり出していた。


「すみませーん」


 声をかけると、中から毛むくじゃらのまさにドワーフって男が現れた。


「何か用か?」


 面倒臭そうに言うドワーフ。


「食器棚が欲しくてな」

「ふむ、どのくらい入ればいい?」

「十人分入れば十分だ」

「そこにあるのを持って行け、銀貨三枚だ。代金はそこに」

 ドワーフが指差す先には小さな籠があった。

「確認しなくていいのか?」


 俺はドワーフに聞いた。


「騙すつもりなのか?」

「いいや」

「だったら確認するだけ無駄だ」


 そう言うとドワーフは中に入って行く。


 丁寧な仕事の見事な家具。

 俺んちには合わないかかも。

 まあ、その時はその時か。


 俺は馬車に食器棚を乗せた。



「次はコンロだな」


 再び馬車で、メモの場所へ向かった。


「すみませーん」


 カミラが声をかける。それに続いて俺と彼女たちが続いた。


「ハイハイ、何の御用でしょうか……あ、ガルム」


 男性店員が出てきた。

 俺がガルムだとわかったとたん、汚いものでも見るような目になる。


「コンロが欲しい。二口の火力があるものがいい」


 そう俺は言った。


「この人がこう言っているんだけど、そんなコンロはある?」


 カミラがフォローする。


「何でカミラ様のような方がこのようなゲスな男と……」


 店員の男は俺とカミラの接点が理解できないようだ。

 カミラって結構有名なのな。


「事情があってね。で、あるの?」

「はい、ございます。こちらへ……」


 そこには見たことのあるガスコンロのようなものがあった。


「コレでいい?」


 俺を見てカミラが聞く」


「ああ十分」

「じゃあ、これにして」


 カミラが店員に言った。


「金貨二枚になりますが」


 カミラは俺が渡した財布から金貨二枚を取り出し店員に渡す。

 俺はコンロを受け取り馬車に乗せるのだった。




読んでいただき、ありがとうございます。

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