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紋章と名前

「うげっ」


 俺が寝ている俺に何かが飛び乗ってきた。

 目を開けるとカミラが。


「昨日のお返し」


 と言って笑っていた。


「俺は悪いことしてないだろ?」

「私は好きだって言った。なのにガルムは何も言わない」

 ムスッとした顔。

「えっ、そんなこと言ったか?『好きになっちゃうじゃない!』とは聞いたが『好き』だとは聞いていないぞ?」

「どっちでもいいじゃない」

「結構違うような気もするんだが……」

「で、どうなの?」

「好意を持っているが、『好き』までは行ってないな。俺の場合は『好きになるかもしれない』ってところ」

「可能性はあるのね?」

「可能性についてはカミラの努力次第じゃないか?」

「よし、がんばろ」


 前向きなカミラだった。



「あっ、ちなみに、朝市って立つのか?」


 俺はカミラに聞いた。


「市というのは朝のほうが賑わう! 朝食の屋台や、新鮮な野菜、魚、肉が並ぶから」


 胸を張って……って、無理に見せなくていいのに……。

 まあ、がんばっているのだろう。


「ほほう、今日の朝ご飯は朝市で食べよう。その足で昼食や夕食のごはんの材料とかを買う。皿やフライパンや包丁、竈のようなものは?」

「食器や調理道具の類も市で売っている。竈?コンロでいいか?」

「コンロってこっちにあるんだな」

「あるぞ?竈も使っていたが魔道具としてコンロが発達してきている。コンロはは魔力で火力を上げるもので、いろいろある。これは店で買うものだ。魔力を使う物は魔道具屋にある」

「ふむ、ならそれも調達しよう」


 カミラは少し考えると、


「ガルム、食器を買うなら食器棚も要る。これは家具職人から買うんだ」


 と言った。


「わかった、食器棚も買おう」



 俺とカミラは二階に行く。

 そして、


「おーい、みんな起きて着替えろ!朝市で朝飯食うぞ」


 と言って皆を起こした。


「えっ、朝市?」

「朝市だって」

「初めてだ」


 三人はぱっと起きて洗面所へ行く。


「ガルム様ぁ、眠いですぅ」


 昨日の夜中起きていた子だ。


「早く寝ないからだと思うぞ?」

「でも、下からのお姉ちゃんの声が大きくて、起きちゃったんだもん」


「ボッ」という音が聞こえそうなぐらいにカミラの顔が赤くなった。


「ほら、酔った勢いでやると、後で後悔する」


 俺がニッヒッヒと笑うとカミラに尻を蹴られるのだった。


 まあ、別に痛くは無いんだがね。



「おーい、いいか?お前らの名前を教えてくれないか?」

「名前、ないよ?前のガルムさんには『お前』とか『そこのお前』とか言われてた」


 一人の女の子が言った。


「カミラ、どういうこと?」

「奴隷になるという事はすべてを主人にゆだねるということ。この子達には名前を忘れる制約がついているのだろう。名前があるだけでも希望になる。すべてを捨てさせるために名前を忘れさせたのかもしれないな」


 芋虫のように転がっていた少女たちを思い出した。


「じゃあ、カミラみたいに奴隷から解放したほうがいいか」

「ダメだよ、それをしちゃうと私たちが弱くなる」


 寝坊した女の子が言った。


「なんでだ?」

「だって、何もできなかった私たちが、ほら……」 

 ガラスのような水球、見ただけで王恩とわかる火球、ちいさな台風のような風球、大理石のような石球と女の子一人一人がスイカ大の球を作った。

「なっ……ガルム、この子は強くなっている」


 カミラは驚いていた。


「意味が分からん」

「知らないのは無理もない。奴隷というの所有者に左右される。つまり、強い所有者の元では強くなる。賢い所有者の元では賢くなるんだ。所有者の強さにはなれないがそれに準ずる強さになる。つまりガルムが強い」


 ふむ、強くなっているのは何となく気づいたが、この子たちに影響を及ぼしていたとは思わなかった。


「奴隷から解放されるのは嫌?」


 皆コクリと頷いた。


「よく考えれば制約を解除すればいいのか。ほい、お前ら制限なし」


 少女たちが軽く光る。

 そして自己紹介が始まる。



「あっ、思い出した。私はアンナマリー。三歳の時に目が見えなくなったの。目が見えない私は家族の邪魔になると思って奴隷の仲買人に頼んで買ってもらった。そしてここに来たの」


 夜更かしした子がアンナマリーか。

 透き通るような水色の髪。水球を作っていたのもこの子だったな。

 細い体に白い肌。まあ、まだ栄養が足りないってのもあるのだろう。


「お前はエルフ?」

「いいえ、ハーフエルフです」



「俺はデボラ、戦争に巻き込まれ足を失ったんだ」

 目を細め振り返るデボラ。

「母さんを殺され、難民に付いて放浪していたところを前のガルム様に引き取られた。『ただで商品が手に入った』と言って喜んでいたのを思い出す。私はハーフオーガだとガルム様が言っていた」


 オーガの血が流れているのかがっちりとした体格だ。大きくなればカミラを超えるかもしれない。

 髪の毛が赤い。火球を作っていた子がこの子だったな。



「僕はユーリア。ウインドシーカーという風を読んで戦う種族だってお父様に聞いたことがある。風読みの力はあったんだけど、兄弟が多くて一番足手まといの私が売られた」


 体は一番小さい。ただ、すばしっこそうだな。

 髪は緑。風球を作っていた子だ。



「私はぁマルレーンですぅ。私もぉデボラさんと同じでぇ、領主同士の戦争に巻き込まれた時にぃ兵隊に腕を切り落とされたんですぅ。荒れた畑では作物は育たないのでぇ、食べるものがなくなってぇ売られてしまいましたぁ」


 にこりと笑うマルレーン。

 いや、それって重いから……。

 そばかすが目立つ。

 髪はブラウン。石球を作っていたな。


 皆話し方に癖が出てきた。そこらへんも制限されていたのかもしれない。



「あっ、紋章見せてもらっていいか?」


 我先にと服を脱ぐ。

 下着の隙間から紋章を見せてくれた。


「この紋章カッコ悪いな」


 ただ小さな文字が並ぶ紋章。手をかざすと何か効率が悪いような気もする。


「お前らの紋章を変えていいか?」


 皆コクリと頷いた。



 まずはアンナマリー。

 紋章に手をかざす。

 鍵があった。

 鍵を外してしまうと奴隷ではなくなるらしいから、鍵をそのままで……この辺の魔力の滞っている部分を排除して、これをこうすれば……おお、スムーズに魔力が流れるようになった。

 それで、この紋章の文字をバラに置き換えて……よし、赤いバラになった。

 俺程度の魔法書士が居たら、鍵をこじ開けられそうなので……鍵穴を変更。


「これで、どうだ?奴隷の紋章に見えないだろ?」

「あっ、キレイ。あっなんかまた強くなったような気がする」

「魔力の流れが滞っているところがあったから直したんだ。多分、紋章の効果が上がったんだろう」



「次俺!」

「僕だよぉ」

「私ですぅ」

「待て待て、自己紹介してくれた順番」


 まあこの場合名前を思い出した順だな。


 残りの三人の紋章を治した。


「いいね、みんな一緒」


 と、バラの紋章を見せ合って喜んでいた。



「ガルム、一度契約解除してから、紋章を書き直しても一緒だからな」

「へ?そうなの?」

「普通はそうする。はあ、どんだけ魔力を制御する力が高いのやら」


 呆れた顔のカミラだった。


「あと、私にも紋章付けてくれないか?」


 突然のカミラの発言。


「だって、あの時の紋章と比べたら、こっちのほうが可愛いしカッコいいし。能力が上がるのも知らなかったし……」


 こいつ何駄々こねてるんだ?


「嫌だよ」

「だって、ずっとここに住むんだから、いいでしょ?」


 定住確定になってるんだが……。


「奴隷って対等じゃない気がしてな」

 俺はポリポリと頬を掻く。

「あなたは私に制約をつけるつもり?」

 ずいと身を乗り出すカミラ。

 んー谷間が見えてます。

「そんなつもりは更々ない」

 と言うと、

「だったら、つけてよ」

 とカミラが更に前に出た。


 俺たちが揉めていると、


「お姉ちゃんも一緒になる?」


 アンナマリーがカミラに聞いた。


「一緒になりたいの。でもガルムがダメだって」


 ちょっと泣くふりをするカミラ。


「ガルムさんダメなんですぅ。女性を泣かしちゃダメなんですぅ」


 援護をするマルレーン。


「俺もつけたほうがいいと思う」

「僕もそう思うな」


 デボラもユーリアもカミラ側に回った。



 一対多は苦手だ。


「はいはい、つければいいんでしょ?」


 俺は最初からバラをイメージして紋章を書いた。

 四人よりもリアルなバラの紋章になる。

 俺とカミラのつながりに鍵をかける。俺がイメージしたひときわ難しい奴だ。

 すると、カミラの体が神々しく光り、しばらくすると落ち着いた。


「うわっ、これ凄いわ。力が湧いてくる。あっ、これで私はあなたの物だから……もう離れないからね」

 二ッと笑うカミラが居た。


 はあ……それも狙ってたのかね。


「まあどっちにしろ今までの扱いとはあまり変わらんからな」

「えー」


 何を期待している?


「子供の援護をもらいやがって」

「いいじゃない。仲がいいんだから……ねー」


 カミラが四人をを見た。

 すると、


「「「「ねー」」」」


 と四人がハモって返す。


「はいはい、私の負けでございます」


 俺がそう言うと、カミラと少女たちはニコニコと笑っていた。



作品を読んでいただきありがとうございました。

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