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風呂に入って眠りたい

 俺とカミラ、少女たちは腹いっぱいまで飲んで食って馬車に乗って店に帰った。


 ああ、飲酒運転……。


 店の前に着くと既に周囲は真っ暗だ。

 店に入ると、カミラが照明を点ける。


 あそこを触れば照明が点くんだな。


「うーっし、皆の寝具を二階に移動するからな。ちょっと待ってろ」


 酔ってるせいで、あまり気にすることなく異次元な収納をイメージして馬車にあるベッドと寝具を黒い渦に入れた。


「じゃあ、二階に行くぞ」


 俺は他を気にせず、二階へ上がった。やばい道具が置いてあった部屋に照明を点けベッドを並べ寝具を敷く。


「ほい、今日からここはお前らの部屋だ。今日からここで寝てくれ」

「うわぁ、ベッドだ。私、自分のベッドって初めて」

「私も」

「土間で寝なくていいんだ」

「凄い、お布団フカフカ」

 少女たちは嬉しそうにベッドでジャンプしている。

「早く寝ろよ」

「「「「はーい」」」」


 こりゃ、なかなか寝ないかな……。



「カミラは隣の部屋で寝てくれるか?」


 俺がそう言うと、勝手に進める俺にカミラが食いついてきた。


「ガルム、何やったの? さっきの黒い渦は何?」

「あれは、異次元収納。別の次元に物を仕舞っている。大きい物でも吸いこめてな、便利だぞ?」

「あなた本当に何者? どこから来たの?」

「んー、言ってもわからないと思うけど、別の世界の日本て国から来た。事故を起こして死んだみたいだが俺の魂はこの体の元の魂と置き換わったみたい。あっ、魔法はここにきて使ったのが初めてだぞ。たまたま思ったように魔法が使えただけ。でないと、矢が三本刺さったままでは死んでいただろうね」

「性格が違いすぎるのよ! 憎いだけの男だったのに、今じゃ……」


 そのあとが聞こえなかった。


「今じゃ?」


 聞きなおすと、


「きっ、気にしないで」


 とはぐらかされた。



「ああ、カミラの部屋はそこだ。前の俺の部屋だったみたいだが掃除してきれいにしてある。そこで寝てくれ」

「あなたはどうするのよ?」

「ん? 俺? 俺は事務所の長椅子で寝る」

「えっ、なんで? ここはあなたの店なのに……」

「女子供を長椅子なんかじゃ寝させられないだろ? それに、あの部屋にはあの子たちのベッドでいっぱい。この部屋も、このベッドでいっぱい。だから俺は長椅子で寝る。心配するな。夜勤の時はよく長椅子で仮眠をとっていたから慣れている」


 まあ、仮眠というサボリではあったが……。


「夜勤? そんなのは知らないけど、何でそんなに優しいの?」

「そうだなぁ、爺さんに言われたんだ。『女子供は守るもんだ』ってな。結局前の世界じゃ守る物はできなかった。つまり妻も子もいなかった。でも、ここじゃたまたまカミラやあいつらができたから『ちゃんと守らないと』って思ったというわけだ。まあ、ゆっくり寝てくれ」


 俺は部屋を出て、一階に降りるのだった。



 馬車に戻ると少女たちの服と風呂用のタオルを回収。

 馬車から馬を外し、馬小屋に繋いで飼い葉と水を与えておく。

 店の扉を閉め内鍵をした。


「そういえば、風呂に入っていない」


 風呂に行くと、すでにぬるい。

 垢も浮いている。

 風呂の中の水を球体にまとめ下水に放り込んだ。

 風呂を軽く水洗し、再び湯を張る。


「こんなもんか」


 俺は服を脱ぎ、かけ湯をして湯船に浸かった。


 おう、俺のアンダーヘアーが金色だ。

 胸毛はないな、腕毛もない、手毛もない。

 すね毛はちょっと濃い。

 モノも大きくなってるし……。

 若くもなっているようだ。


 今更気づく事実。

 (ガルム)を分析しながら天井を見ていた。



「ガルム?」


 カミラの声が聞こえた。


「えっ?」


 俺はビクリとして振り返る。

 そこには一糸まとわぬカミラが居た。

 褐色の肌に大きな乳房が見える。


「悶々するの。あなたに受けた辱めのせい」


 俺がしたわけじゃないんだけどな……。


「だから?」

「いくら異界から来たとはいえ、どうしたいのかはわかるでしょ!」

「まあ、何となく……。でも『酔った勢い』ってのはやめておいたほうがいいぞ?」


 起きたらスナックのママさんが俺の隣に寝ていたってのがあったなぁ……。


「何でそんなこと言うのよ、何で憎たらしい奴のままじゃないの?」

「それは知らない。死んだらこうなった」

「私は諦めていた。『ヒヒジジイに抱かれたらいい』ってガルム言われたの。『売られた場所で魔法書士に奴隷の所有者変更されて、ジジイの言う通りに動く人形になる』そう思ってたの」

「良かったじゃない、元の生活……ではないか。悪い、迷惑かけてる」

「何で謝るのよぉ。嫌いになれないじゃない。あの子たちを世話する姿見たら、好きになっちゃうじゃない」


 カミラの顔が赤い……酔ってるな。


「一度寝て考え直したほうがいい。助けられたからそういう気になってるのかもしれないぞ」

「だめ、抱いてほしいの」


 俺は頭を掻きながら風呂を出る。

 カミラに近づくと眠りの魔法を使った。

 眠りにつき床に倒れかかるカミラを抱え上げ横抱きにした。


「ゆっくり風呂ぐらい入らせてくれ」


 と言って二階に上がりカミラをベッドに寝かせ、俺に触れて濡れた部分は乾かしておいた。



「うー、体が冷える。風呂風呂」


 階段に向かって歩いていると、


「なんで、カミラさん抱かなかったの?」


 一人の女の子が立っていた。


 おう、いきなりストレート。


「そうだなぁ、やっぱり幸せになってほしいだろ? 俺がカミラを幸せにできるか自信がないんだ。まあ、まだ好きなのかどうかもわからん」

「お母さんがね、好きな人と一緒に居るのが幸せだって言ってた」

「そうか、でもな、俺と居たら苦労すると思ったら踏み出せないもんだ。そう簡単じゃないんだよ」

「私は今幸せ。目の見えなかった私を助けてくれた今のガルムさんが好き」

「今の?」

「ガルムさんが中身が違うのはわかったんだ。私は目が見えなくなってから精霊が見える。ガルムさんに居なかった精霊が今のガルムさんにはいっぱい。だから別人だとわかる」


 女の子の耳が少し尖っていることに今頃気づいた。


 エルフ? ハーフエルフ? 



「ばれたか」


 わざとらしく俺は頭を掻いた。


「うん、私、みんなに言っちゃった」

「まあ、別人なのはいつかは言わなきゃいけない事だから助かる」

「やったあ、褒められた」


 褒めたわけじゃないが、まあいいか。


「さあ、そろそろ寝るんだ。明日辛いぞ?」

「うん、おやすみなさい」


 女の子は部屋に戻った。

 あの子は目が見えない代わりに何かを得ていたんだろうな……。


「さて、風呂風呂」


 少し小さくなった石鹸で体を洗う。


 うわ、ガルム、お前もか。

 泡が立たないじゃないか。


 凄い量の垢が出てきた。

 昔は風呂に入れなかったから香水が発達したとは聞いたが、これはひどい。

 何度もゴシゴシと洗い、さっぱりした後、湯を抜き掃除をして風呂を出た。


「ふう、今日は疲れた」


 長椅子に横になり、毛布をかぶるとすぐ俺は眠りにつくのだった。





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