表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/14

ダンジョンでお金を稼ぐ

「さて、金がない」

 カミラ、フル、アンナマリー、デボラ、ユーリア、マルレーンの前で言った。

「あるでしょ? 結構持ってるの見たもん」

 フルが否定する。

「暮らすには十分持ってる。でも、俺は奴隷商人だろ? だったら奴隷を買わないと」

「奴隷を買う? 本当ですか?」

 アンナマリーが聞いてきた。

「できればアンナマリーたちのような物としか扱われないような子たちを助けたい。俺は奴隷を買う権利を持っている。だからそれを行使するだけ。ただの自己満足ではあるんだがね」

「どんなふうにするんですかぁ?」

 ユーリアが聞いてきた。

「お前らといっしょ。治して、食って、寝て、勉強して、働いて、お金を得て自立してもらう。お前らはもう少しで自立だろうな。カミラ曰く『この街で上位のパーティー』だそうな」

「「「「やたっ」」」」

 ハイタッチで喜ぶ彼女たち。

「だから、アンナマリーとデボラ、ユーリア、マルレーンは、冒険者ギルドで日帰りの仕事を受けて経験を積め! 最初は簡単な物から始めて、難易度を上げていけ! 決して焦るな。報酬の半分をフルに渡して、残りはお前らの自由に使え。お金に余裕ができたら、ちゃんと防具も買えよ。あっ、風呂はアンナマリーとデボラで協力すれば沸かせるから。風呂に入りたい時はそうしろ」

 彼女たちはコクリと頷く。

「リーダーはアンナマリー。みんなで相談しながらやっていってくれ。これは当座の資金。一人銀貨二十枚。つまり百枚の銀貨が入った袋だ、薬や食料なんかの必要な物を買うのに使ってくれ。アンナマリーに渡しておく。頑張れよ」

 俺が言うと、彼女たちは再び頷いた。


「俺とカミラは金を稼ぐためにダンジョンの攻略に降りる。そして、この辺の土地を買う。んで、家を建てて部屋を増やす。後々お前らの個室も要りそうだからな。その間はフルが留守番してお前らの世話をしてくれる。飯がまずかったら、外食でもいいぞ」

 最後の一言はニヤリと笑いながら俺は言った。

「酷い、私だってやればできるんだから」

 赤くなって怒るフル。

「まあ、そういうことで明日から頼む」

 俺の腰かけ冒険者生活が始まる。



 次の日、既にゲルの街近くのダンジョンの中に入っていた。

「ダンジョンを攻略すると言っても、俺には武器を持っていないのだが」

「問題ない。ガルムの皮膚が鎧であり、その拳が武器。フルの攻撃が刺さらなかったのが証拠」

「そりゃあなた、刺さらなかったけどもよ。気分の問題っていうのがあるでしょう? なにかに守られたいとか思うでしょう」

「守って欲しいのなら私が守るぞ? 抱いてやろうか?」

 口角を上げ笑うカミラだったが、

「抱かれて俺の背中に爪を立てて何かを我慢していたのは誰だった?」

 と言い返すと、真っ赤になったカミラに尻を蹴られるのだった。

 そりゃ痛くはないんだけどね……。


 レーダーに魔物を表示し近くに現れる敵からSTG44を使って倒していく。

 大体一発で魔物の頭が爆ぜた。

 その魔物からカミラはナイフを使って解体し、素材と魔石を取り出す。

 出てきた魔石や素材が溜まると、俺の異次元収納を使って保管する。

 俺たちの流れ作業。

 あまりの効率の良さに、すれ違った別の冒険者たちが唖然としていた。


「私の出番がない。剥ぎ取りしかしていない」

「ありゃ? カミラ、拗ねたのか? だったら前衛と替わってくれればいいだろ?」

「でも、ガルムはサクサク狩ってくれるから」

「でもな、俺が魔石を出して収納したほうが早くないか?」

「ガルムは解体が下手、遅い」

「うっ、料理は比較的得意なんだが、皮を剥いだりするのが難しい」

「練習すれば上手くなる。やっぱり私と交代だ。素材が安いうちに失敗すればいい」


 そう言う事で、前後が変わり、俺は魔物の解体を始める。


 解体って難しいんだよな。


 それでも、料理で培った技術を使い、丁寧に剥いでいくとなんとかなった。

 肉とか食う魔物を丁寧に皮を剥ぎ、内臓を捨てる。

 カミラの攻撃力もすさまじく、「大剣の」にふさわしく真っ二つになって内臓が飛び出した魔物を処理するのは少しつらかったが……。


 ふと気づく。

 牛っぽい魔物。

 子牛を連れ、子牛は母親の乳を飲んでいた。

 遠慮なく首を飛ばすカミラ。


 魔物は魔物でしかないか……。

 変にかわいそうとか思っちゃいかんのだろうな。


 俺は子牛に近寄り機械的に腹を裂く。すると牛らしくちゃんと胃が四つあった。腹を裂き第四の胃の消化液を容器に入れる。

 最近になってわかったことだが、異次元収納の中に入ると時間が経たないようだ。熱いものは熱く、冷たいものは冷たい。おかげで、この消化液も取ってすぐの状態を維持できるって訳だ。


「何でそんなものを集める?」

「ん? 試したいことがあってね」

「食べ物か?」

「ああ、これが俺の思っているものと一緒なら、美味いものができる」


 あー、チーズ食ってみてぇ……

 えっ、でも牛乳の確保も必要だなぁ。

 どっちにしろ、土地を広げないと無理か……。


 子牛はレアらしく、あまり見つかりはしなかったが、持ち込んだ一升瓶ほどある容器には一杯になった。

 着々と先に進む俺とカミラ。敵は強くなるのだが俺の一撃かカミラの一撃で撃破できる。



 現在ネコ科の魔物を解体中。

「カミラ、この大きさになると、解体って面倒くさくないか?」

「ガルフ、このブラックパンサーの毛皮は高く買ってもらえる。ギルドで解体すると買値の一割を解体費として取られてしまうんだ。だから、自分で解体できるなら、解体して渡したほうがいい」

「でもな、俺はこのブラックパンサーをそのまま異次元収納に入れることができる。異次元収納の中にある間は痛まないんだ」

「つまり?」

「急いでここで解体しなくても、家に解体場を作ってそこで解体してもいいだろ? 襲われることに怯えながら解体するよりは何倍も丁寧にできる」

「おう!」

 カミラはトンと手を叩く。

「ガルム、お前頭いいな。もっと好きになったぞ?」


 キスという不意打ちをくらわしてきた。


俺は口を拭うと、

「はいはい、それじゃ、そういうことで倒した魔物は俺が回収するから。二人で効率よく狩っていきましょう」

 軽く流した。

 すると、カミラがの頬が膨らむのだった。



 下に行くほど冒険者の遺品が転がる。

 倒された冒険者のものだろう。

 深層のために回収さえままならないのか。

 中には綺麗な鎧や魔力が漂うローブ、青白く光る剣など、一目見て高級なものがあった。


「こういうのは?」

「貰えばいい。下に行くほど良品が増える。仕舞っておいて売ればいい金になる」

「ダンジョンを食らいつくすって感じだな」

「そう、今の私たちはダンジョンを食らいつくせる」


 見つけた装備の中から女性用の金属鎧を見つけたカミラは皮鎧を外しその鎧を装備した。

 ちゃんと皮鎧も仕舞っておく。


「これはミスリルの鎧。軽く、物理・魔法防御ともに高く、歩いても音がしない。逸品だ」


 装備によってはサイズ調整の魔法が付与されているらしく、今回カミラが手に入れた者はその部類の物だったようだ。


「俺も装備が欲しいなぁ」

「私の剣は父からもらったもの。隕鉄で作られた逸品。ガルムの場合魔法だけでここに来るのがすごい。返り血なんて、解体を失敗したときに付いたものだけ。防具なんて要らないだろう?」

「まあ、そりゃそうなんだが、せめて盾があればなぁ。ブレス系の邪魔はできるだろ?」


 そんな話をしながら下を目指していると目の前に転がる分厚いタワーシールド。

 鈍色に輝いていた。

 カミラがタワーシールドに近寄り、持ち上げようとする。


「こっこれは重いぞ。人には扱えん」


 タワーシールドのそばに大きな鎧を着た遺体があった。


「剣が無いところを見ると、両手でこのタワーシールドを扱っていたようだ。重すぎて力尽きたんじゃないのか? 人が持ち上げる限界を超えている」

「そうか?」


 俺はそのタワーシールドに近づき持ち上げ左手に装備する。

「ミシリ」と言ってタワーシールドが持ち上がる。

 俺的には軽い。


「うんうん、軽い。これなら、カミラが守れそうだ。殴っても結構な打撃になりそうだし、タワーシールドの陰から敵を撃つこともできる。ん、便利」


 カミラはあんぐりと口を開けると、


「これが黒プラチナの力か」


 妙に納得するのだった。




 各階の魔物をすべて狩りながら下に降りていくと、急に広い場所にたどり着く。


「何だこりゃ?」

「ボス部屋だろう」

「ボス部屋?」


 そう言えば、この階層の中央に一個だけ光点がある。


「カミラ、確かに敵は一匹だけみたいだな。ボスっぽい」

「大きな魔石が手に入るかもしれない」

「なんで?」

「ワンフロアに出てくる魔石の量ってのは決まってるらしい。そしてその魔石の量をフロアに居る魔物の設定数で分配する。だから、敵が多いフロアは魔石が小さい」

「つまり、この階層分の魔石を持ったボスが現れるって事か?」

「そうだ」

「まあ、どっちにしろ戦わねばならないならやりますか。俺が前に行く。カミラはあとからな」


 魔物の姿が視認できたところで一度止まる。

 頭が三つ、いや四つあるドラゴン。

 五百メートルほど離れているつもりだが、結構な大きさに見える。

 キング〇ドラ改? 


 うーん、青、赤、緑、茶は水、火、風、土を表すんだろうなぁ。


「カミラ、やっぱり、火は風に強い?」

「そうだな。水は火に、火は風に、風は土に、土は水に強い」

「ちょっと試してくる」


 某未来から来たロボットであるごっつい男が大暴れする映画の第二作で出たM134(ミニガン)をイメージする。そして、タワーシールドを持って駆ける。


 タワーシールドが透明だと助かるんだがねぇ……。


 そんなことを呟くと、タワーシールドが茶色に輝き透明になった。

 まさにライオットシールド。

 アンナマリーが言っていた、精霊さんのお陰かな? 


 魔力を火に特化させ、緑に輝くドラゴンの頭を攻撃した。

 近寄るとビルほどに見える巨体。


 あー無理だ、対象物に対して物が小さすぎる。

 カッコよさでガトリングにはしたけども、これでは無理そうだ。

 アンチマテリアルライフルでもいいんだろうがそれでも厳しいな。

 バズーカでも持たないと相手にならないか。


「キン」と音がすると、俺の手からM134のイメージが消えた。そして茶色く光ると手に二メートルはあろうかという透明な剣が生まれる。

 これで戦えと言う事らしい。


 四本の首が自由に動きながらブレスを吐く。

 それをタワーシールドでかわしながら、一番外にある水の属性の首を狙った。


 直径で四メートルもありそうな首なのにいけるのかね。


 そんな事を考えながら首の根元を攻撃してみると、刀身が伸びスッパリと切れる。

 手ごたえがないぐらいだ。

「ズシン」という音と共に首が落ちる。


 おう、巻き込まれそう。


 残ったドラゴンの頭が焦った顔で俺を見る。


 ってことは、次は水の剣? 


 そう思うと、青く光り、剣が真っ青に変わるのだった。


 火の属性を持つ首を切ると、バランスを崩しキングギ〇ラ改は残った二本の首の方に倒れた。

 足掻くが首の重さで立ち上がれない。

 炎に変わった剣で風の属性の首を、風に変わった剣で土属性の首を落とすとキングギ○ラ改は動かなくなった。

 俺の手から剣が消える。

 終わったってことなのだろう。



「ガルム! あれを一人で倒したのか?  すごいな。私の出る幕がなかった」


 興奮気味のカミラ。


「四本首のドラゴンなんて聞いたことがない。凄いなこの鱗。細かいが硬い。」


「精霊のお陰のようだ。各々の首の弱点の属性に変わってくれた。精霊の剣の切れ味も凄かったしな。とりあえずこの魔物は仕舞っておくぞ」


 異次元収納を出し入口を近づけると、首も体も中に吸い込まれていった。



「ガルム、ダンジョンの素材が深層の物になるほど高くなる理由はわかるか?」


 カミラが聞いてきた。


「気にしたことが無いなぁ」

「まずは、深層の魔物を倒せる冒険者が少ない。次に、持ち帰る量が少ない。ガルムのようにすべてを異次元収納に収納できるなら、食料を倒した魔物をすべて持って帰ることも可能だろう。しかし、他の冒険者はそうはいかない。持ち得るリュックやカバン、ポシェットなどに持てるだけの食糧を準備し、目的の階層まで行って目的の魔物を倒し、帰りの食糧を計算しながら入口まで戻るんだ。荷物の重さで動く速度は落ちる。疲労も出る。それを乗り越えて素材を回収するんだ」

「つまり、俺はでたらめだと」

「そう、今日のやり方だと、冒険者たちに恨まれるだろうな」

「調子に乗り過ぎたな」

「まあ、この階層には人が歩いた跡のような物はなかった。この辺なら文句は言われないだろう」

「まあ、俺もいつもダンジョンに入っている訳には行かない。極力入るつもりもない。あんまり入って恨まれるのも嫌だしな」

「奴隷商人だから?」

「そういうこと。今回の分であの小汚い区画の土地を買っても当分の生活費にはなるんじゃないか?」

「当分というよりも、一生じゃないか?」

「そう? まあそれでもいい。だから、このダンジョンに入る必要はない」


「クウ」という可愛い音がした。

 カミラが真っ赤だ。


「一日何も食わずに動いたんだ。腹も減る」


 俺は異次元収納から朝作っておいたサンドウィッチを取り出すと、


「まだ温かい。ほら、食え」


 カミラに渡した。


「本当にガルムと居るとピクニックのように感じるな」

「もう少し緊張感が要るとは思うがね」


 俺はそう言いながら、増築の時に使った魔法で小屋を作る。


「ボスを倒したら、もう敵は出ないんだろ?」

「そういうふうに聞いている」


 実際、敵の反応もない。


「じゃあ、風呂に入って寝るか」

「えっ? 風呂」

「ああ、小さいながらも風呂を作ってあるから。汗もかいたし、返り血も浴びてるだろ。タオルも石鹸もある。風呂に入って疲れを取って寝て深層へ向けて頑張ろう」

「あっ、ああ。いっしょ……」

「あっ、風呂はそんなにデカくないから、一人でな」


 俺は食い気味に否定した。

 渋々風呂に向かうカミラ。

 鎧を外す音や服を脱ぐ音が聞こえてきた、

 俺は土のベッドに毛布を敷き寝られるように準備する。


 あっ、小屋を買って改造して、異次元収納で持ち運べばいいんじゃないか? 

 次ダンジョンに来るときはそうするか……。


 カミラはタンクトップと短パンのような下着を着て風呂から出てきた。


「いいだろ?」


 そう言って潤んだ目をしたカミラが抱き着いてくる。


「何が?」

「わかってるくせに」

「わからんな」

「抱いてよぉ」

「敵が出ないとはいえこんなところで?」

「お願い」


 カミラは甘える時、女言葉になる。


「土の上だから毛布があるとはいえ痛いぞ?」

「土の上で犯したくせに」

「魂が変わる前の事を言われてもなぁ。まさかそういう強引なほうがいいとか?」


 赤くなって俯くカミラ。


「そっ、それは……」

「ふむ、もう一方の俺が反応してるから、仕方ないか」

「そう、仕方ない」

 嬉しそうにカミラが言った。


 意志弱いなぁ……。


 結局やることをやり、擦り傷を治療してから風呂を拡張し二人で風呂に入って寝るのだった。





小説を読んでいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ